映画評「大日本人」
☆☆(4点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・松本人志
ネタバレあり
お笑い畑の松本人志の初メガフォン作。
TVのお笑いは全く見ないので、彼がどんな才能なのか全く知らないが、映画は出来栄えで判断すれば良いので、作者はとりあえず関係ない。ただ、一般的に異業種の方が映画を作ると、ひとり合点になる傾向がある。
全体はアメリカ映画「ドッグ・ショウ」のような疑似ドキュメンタリー形式で、即ち大佐藤なる大日本人(松本)がTVクルーに密着取材されるうちに、彼の個人生活とその仕事が浮き彫りになっていく。
というだけでは何のことか全く解らないはずなので説明つかまつります。
そもそも大日本人とは何ぞや。変身して、次々と現れる人面の怪獣と戦うことを仕事としている、文字通りでかい日本人である。彼に言わせると、怪しんでいる暇などないので相手は【怪獣】ではなくてただの【獣(じゅう)】ということになるらしい。
要するに、怪獣映画と変身ヒーロー映画のパロディー、ドキュメンタリーのパロディーなり。
そこで松本人志の生年を調べてみたら、ほぼ予想通りの1963年生まれ。第2期ウルトラ・シリーズや初期の仮面ライダーをTVにかじりついて観た世代ということになりましょうか。恐らく彼は少年時代にこうしたヒーロー達は怪獣が現れない日は何をやっているのだろうという素朴な疑問を覚えたに違いなく、お笑いの大物になってそれを映像化するチャンスが出来たということなのだろう。
その狙いはあながちつまらぬと言い切れず、過小評価もすべきではないが、僕は寧ろ逆で、アイドルや映画俳優、まして変身ヒーローの日常など知りたいとはつゆにも思わない。<トイレにも行かない>のがアイドルやヒーローなのであって、それで良いのである。現実社会では90年代以降トーク番組が増え、かつて<トイレにも行かない>と思われたアイドルたちが下ネタを連発する露悪趣味がTV界を席巻している。
本作の狙いも個人的には興味深いと言いかね、お話が進行するにつれじり貧になっていく印象は否めない。
また、終盤に北朝鮮に怯え米国に頼るわが国の防衛体制を揶揄したように見える部分も出てくるが、桑田佳祐の「Rock and Roll Hero」の皮肉っぽい歌詞の方が遙かに痛烈。
撮影監督・山本英夫のおかげか映像感覚は悪くないが、全体の評価としてはやはり<ひとり合点>のレベルである。
変身する場所を、変電所ならで電変場、と言いましたかな。この言葉が一番可笑しい。
2007年日本映画 監督・松本人志
ネタバレあり
お笑い畑の松本人志の初メガフォン作。
TVのお笑いは全く見ないので、彼がどんな才能なのか全く知らないが、映画は出来栄えで判断すれば良いので、作者はとりあえず関係ない。ただ、一般的に異業種の方が映画を作ると、ひとり合点になる傾向がある。
全体はアメリカ映画「ドッグ・ショウ」のような疑似ドキュメンタリー形式で、即ち大佐藤なる大日本人(松本)がTVクルーに密着取材されるうちに、彼の個人生活とその仕事が浮き彫りになっていく。
というだけでは何のことか全く解らないはずなので説明つかまつります。
そもそも大日本人とは何ぞや。変身して、次々と現れる人面の怪獣と戦うことを仕事としている、文字通りでかい日本人である。彼に言わせると、怪しんでいる暇などないので相手は【怪獣】ではなくてただの【獣(じゅう)】ということになるらしい。
要するに、怪獣映画と変身ヒーロー映画のパロディー、ドキュメンタリーのパロディーなり。
そこで松本人志の生年を調べてみたら、ほぼ予想通りの1963年生まれ。第2期ウルトラ・シリーズや初期の仮面ライダーをTVにかじりついて観た世代ということになりましょうか。恐らく彼は少年時代にこうしたヒーロー達は怪獣が現れない日は何をやっているのだろうという素朴な疑問を覚えたに違いなく、お笑いの大物になってそれを映像化するチャンスが出来たということなのだろう。
その狙いはあながちつまらぬと言い切れず、過小評価もすべきではないが、僕は寧ろ逆で、アイドルや映画俳優、まして変身ヒーローの日常など知りたいとはつゆにも思わない。<トイレにも行かない>のがアイドルやヒーローなのであって、それで良いのである。現実社会では90年代以降トーク番組が増え、かつて<トイレにも行かない>と思われたアイドルたちが下ネタを連発する露悪趣味がTV界を席巻している。
本作の狙いも個人的には興味深いと言いかね、お話が進行するにつれじり貧になっていく印象は否めない。
また、終盤に北朝鮮に怯え米国に頼るわが国の防衛体制を揶揄したように見える部分も出てくるが、桑田佳祐の「Rock and Roll Hero」の皮肉っぽい歌詞の方が遙かに痛烈。
撮影監督・山本英夫のおかげか映像感覚は悪くないが、全体の評価としてはやはり<ひとり合点>のレベルである。
変身する場所を、変電所ならで電変場、と言いましたかな。この言葉が一番可笑しい。
この記事へのコメント
何本か劇場で観ましたし、輸入版で手に入れた物もあるのですが、時間的にかなり難しくなっています。
この映画は特撮好きとしましては前半は皮肉っぽさもあり、パロディとして楽しめましたが、後半はどうしようもなく、眠気に襲われました。
ではまた!
お忙しいようですね。
若いうちは忙しいのも悪くないでしょう。^^
しかし、お体を壊さないようにお願いしますよ。
昨年話題になった時にタイトルからはどんな作品なのか見当もつきませんでしたが、こんな内容だったんですねえ。大日本人ねえ。
最後の一幕でCGからミニチュア特撮になりますが、一応オマージュのつもりでしょうかね。
オマージュ…。特撮への愛情がある人が自己批判をかねてこういう演出をやったのなら、オマージュとも言えるのでしょうが、彼の取り組み方には特撮への愛情を感じることはありませんでした。
よって、「特撮」としての評価は出来ません。ではまた!
怒られてしまいましたね。^^;
僕にしても、「つもりでしょうかね」と皮肉を込めた反語を使っているわけでして、まあなんですよ(笑)。
彼が特撮や変身ヒーローものに関してどんな考えを持っているか全く解りませんし、調べる気もないですが、一度パロディーとしてやってみたかっただけではないですか?