映画評「シン・シティ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
ネタバレあり
小説よりコミックの映画化が目立つ昨今であるが、本作はフランク・ミラーの劇画をロバート・ロドリゲスが映画化したオムニバス風アクション映画。原作者自身が共同監督している。
舞台は一応アメリカのシン・シティー。
心臓の悪いおいぼれ刑事ブルース・ウィリスが町を牛耳る大物議員の息子で少女殺しの変態野郎から誘拐された少女ナンシーを奪還するが、相棒に撃ち込まれてしまう。
顔面傷だらけの犯罪者ミッキー・ロークがただ一人愛してくれた娼婦を殺され、復讐の為に犯人である人体を食しては食い残した顔面を壁に飾る猟奇男イライジャ・ウッドを仕留め、彼を操る枢機卿ルトガー・ハウアーを倒すが、弟である議員は彼を死刑にする。
クライヴ・オーウェンがろくでなしベニチオ・デル・トロを追いかけるうち男は女忍者デヴォン青木に殺されるが、男が警官だった為に街を仕切る娼婦たちは色めく。警察との契約が反故になるからで、オーウェンは死体隠しに四苦八苦する。
8年後やってもいない罪を認めて釈放されたウィリスが19歳になったナンシー(ジェシカ・アルバ)と再会するが旧交を温める間もなく、別人のように変身していた変態野郎と再び対決する羽目になる。
そしてプロローグと呼応するエピローグがあって全巻の終わり。
首や手足が飛ぶなど見た目の残酷な暴力が全編を覆っている上に、部分的にクェンティン・タランティーノもどきのタッチもあると思っていたら、彼も実際にこっそり演出しているようである。いずれにしても些か過剰な印象は免れない。
独立しているようで相互に関連性のあるお話は劇画そのもので特に指摘するほどのものではないが、ナレーションになっているモノローグにハードボイルド映画を思わせるところがあるのは嬉しい。
物語以上に若い人に強い印象を与えると思われるのは超ハイ・コントラストのモノクロ映像だ。しかし、古い映画マニアは特別に驚かない。90年前に始まるドイツ表現主義映画に似ているからである。部分的カラーについてもその時代モノクロに着色するのが流行していた事実があり、寧ろクラシック。
また表現主義映画は強烈な犯罪者や異常者をテーマにすることが多いので、ロドリゲスらが意図的に拝借したかは知らないが、いやが上にも想起してしまう。
といった次第で、嬉しくもあると同時に何ということもない、というのが正直な印象でござる。
2005年アメリカ映画 監督ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
ネタバレあり
小説よりコミックの映画化が目立つ昨今であるが、本作はフランク・ミラーの劇画をロバート・ロドリゲスが映画化したオムニバス風アクション映画。原作者自身が共同監督している。
舞台は一応アメリカのシン・シティー。
心臓の悪いおいぼれ刑事ブルース・ウィリスが町を牛耳る大物議員の息子で少女殺しの変態野郎から誘拐された少女ナンシーを奪還するが、相棒に撃ち込まれてしまう。
顔面傷だらけの犯罪者ミッキー・ロークがただ一人愛してくれた娼婦を殺され、復讐の為に犯人である人体を食しては食い残した顔面を壁に飾る猟奇男イライジャ・ウッドを仕留め、彼を操る枢機卿ルトガー・ハウアーを倒すが、弟である議員は彼を死刑にする。
クライヴ・オーウェンがろくでなしベニチオ・デル・トロを追いかけるうち男は女忍者デヴォン青木に殺されるが、男が警官だった為に街を仕切る娼婦たちは色めく。警察との契約が反故になるからで、オーウェンは死体隠しに四苦八苦する。
8年後やってもいない罪を認めて釈放されたウィリスが19歳になったナンシー(ジェシカ・アルバ)と再会するが旧交を温める間もなく、別人のように変身していた変態野郎と再び対決する羽目になる。
そしてプロローグと呼応するエピローグがあって全巻の終わり。
首や手足が飛ぶなど見た目の残酷な暴力が全編を覆っている上に、部分的にクェンティン・タランティーノもどきのタッチもあると思っていたら、彼も実際にこっそり演出しているようである。いずれにしても些か過剰な印象は免れない。
独立しているようで相互に関連性のあるお話は劇画そのもので特に指摘するほどのものではないが、ナレーションになっているモノローグにハードボイルド映画を思わせるところがあるのは嬉しい。
物語以上に若い人に強い印象を与えると思われるのは超ハイ・コントラストのモノクロ映像だ。しかし、古い映画マニアは特別に驚かない。90年前に始まるドイツ表現主義映画に似ているからである。部分的カラーについてもその時代モノクロに着色するのが流行していた事実があり、寧ろクラシック。
また表現主義映画は強烈な犯罪者や異常者をテーマにすることが多いので、ロドリゲスらが意図的に拝借したかは知らないが、いやが上にも想起してしまう。
といった次第で、嬉しくもあると同時に何ということもない、というのが正直な印象でござる。
この記事へのコメント
私ね、これ劇場で見ている間2回ほど、あまりのリアルさに退席しようかって考えたんです。現に女性が2名ほど中座されて、そのまんま戻ってこなかった。でもね、観終わった後、これって凄いラブストーリーじゃんって思えてきました(悩ませてます?)男も女も惚れた相手に命張ってる。すごい純愛!って思って観終わった後はなんかとっても気分良かったです。
桜も満開ですが、お花見は済まされましたかぁ~?
この映画のテイストは、私的には初めてな感じでしたので、ものすごく斬新に感じられましたが、なるほどぉ温故知新な作風であったわけですね~
この作品が発表されてから、モノクロに鮮血の赤的な映像が流行りだして来て、今ではもう珍しくはないのですが、この作品を見た時は驚きあんした(笑)
まぁ、コミックということもあってやりたい放題でリアリティに欠けると言う点でかえって物珍しくて楽しめました(笑)
>6点
あれっ、低かったですか?(笑)
確かに最初★一つ余分にあったんですが、僕の好きなドイツ時代のフリッツ・ラングやその他の表現主義映画のほうが80年も前に似たような発想でやっていると思ったら「なんつーことはないな」ということになりましてね。しかも40年代のハードボイルド映画はもっとクールですし。
あるいはバラバラに見える各挿話が実は繋がっているという作り方もタランティーノ的発想で新味がなく、7点にした「キル・ビル」よりお話がつまらないと思えたので、総合的に☆3つということに。
デヴォン青木を全く同じタイプの女忍者として使った「DOA」(3点)と比べると、描写のパンチ力が全然上とは思いましたね。
IMDbで調べたら10代に圧倒的に支持されているようです。
こちら山ですので、桜はまだこれからです♪
>温故知新
80年も90年も遡らないまでも、ロドリゲスはやはりタランティーノから抜け出せないようですよね。^^
>モノクロに鮮血の赤的
こういう完全にポイント的な発想の最初は黒澤明の「天国と地獄」ではないかと思います。それにオマージュを捧げた「シンドラーのリスト」の赤も印象に残っていますね。
>やりたい放題
まあ、そういうことですね。
今は作り手も観客もリアリティを気にしすぎて、観客に夢を与えるという映画の本質を忘れているように思います。どんな映画も大事なのは「現実らしさ」であって「現実そのもの」にあらず。
まして、僕はジャンル映画にリアリティなどお荷物だと思っています。その意味では大評判の最新「007」も失敗作ですよ。^^;
なかなか厳しい評価ですね。私は、これを鑑賞した当時、最近は生ぬるい内容のものが多いと感じていただけに非常に嬉しくなり、シビレてしまいました。それが新しい手法のものでなくても。
抵抗は全くなかったですね、もともとハードなものが好みですし、アメコミが原作と割り切って鑑賞しましたのでね。
そして、私もシュエットさん同様に「哀」と「愛」を感じたんですよね。貫く信念、それが単純で哀れささえ感じるですが、それが深い愛となり、激しい行為へ導くのだと。
とにかく、私はもう、モノローグでやられてしまったんですよね。こういうのが最近は無いよな~って。
では、また。
なかなかそちらにコメントを残せずにおりますが、そのうちお伺い致します。
>厳しい評価
そうですかねえ。^^;
6点というのは結構良い線ではないかと思いますが。
何だかんだ言っても結構クラシックさに喜んでいるのですよ。若い人が喜ぶのは全く逆の観点からですけどね。^^
しかし、ハードさよりパンチなんですなあ、僕がアクション映画に望んでいるのは。
シュエットさんへのレスでも書きましたが、デヴォン青木の描写を見るとやはり、タランティーノやロドリゲスのパンチ力は凡百ではない。しかし、パンチ力は必ずしもハードでなくても良いわけで、切れ・力強さ・カメラワーク・ドライな処理が揃えば出てくることを考え合わすと、観た目の派手さに頼った感がありましたなあ。
>モノローグ
モノローグがナレーションになっているのはハードボイルド映画の定番ですが、形式だけでなくムードも引き継いでいましたね。これは大いに気に入りました。^^)v
冷たい表面に向こう側にある愛がハードボイルドの要件なのです。^^
ミーハーがミーハー的作品を見るのは結構なんですが、ミーハーはミーハー的作品しか観ないのが問題なんです。
なんのこっちゃ(笑)。