映画評「トリスタンとイゾルデ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ケヴィン・レーノルズ
ネタバレあり

中世欧州で流布、「ロミオとジュリエット」のベースと言われ、19世紀にワーグナーのオペラになっている同名の有名ロマンスの映画化で、世間の評判とは裏腹に大いに楽しんだ「モンテ・クリスト伯」を監督したケヴィン・レーノルズが監督。かつて「ロビン・フッド」も映画化しているので、時代劇が得意と見なされているようだ。

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ローマ帝国が弱体化してブリテン島から退いた後というから5~6世紀のお話で、群雄割拠するブリテンを統合させまいと図るアイルランドのドナカー王(デーヴィッド・パトリック・オハラ)軍勢の襲撃により領主たる両親を失ったトリスタン(トーマス・サングスター、成長後ジェームズ・フランコ)はコーンウォールのマーク王(ルーファス・シーウェル)に養育され、9年後にドナカーが派遣した武将を退けるものの毒にやられる。
 誤解により船葬に附され流されているところをドナカーの娘イゾルデ(ソフィア・マイルズ)に発見され、極秘の治療により回復するが、彼女の正体を知らぬまま愛し合うようになった為後に難儀することになる。

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「ロミオとジュリエット」では二人の仲を裂くものは両家の不和だが、こちらではイギリス(ブリテン)とアイルランドの対立という要素もあるものの、二人の間にそびえる一番高い壁はトリスタンの忠義心である。イゾルデがドナカーの娘であると知らず、彼女と結婚できる権利を賞品とする闘技トーナメントに王の代理として参加して勝った為に命の恩人で君主として崇拝するマークにイゾルデを譲る形になるのだ。正体を隠すのは良くないという教訓ですかな。

それはともかく、「ロミオとジュリエット」に比べると、権力争いの権謀術数がかなり絡むのでロマンスとして純度が高くなく、手紙や毒といった手の込んだ細工やすれ違いの要素の代わりに主人公のジレンマだけでは面白味が薄いと言わざるを得ないが、男性ファンが喜びそうなアクションは豊富に用意されている。

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結局トリスタンが愛の尊さを理解し忠臣の名誉も失わずに死んでいく一方で、ワーグナーのオペラのようにイゾルデが後を追わないのはやはりリアリズム時代の作品で、些か散文的な印象は免れない。

撮影は重厚で、古代らしい荒涼たるムードの醸成が秀逸。

この記事へのコメント

シュエット
2008年04月09日 15:18
ありゃ!6点ですか? 前にも同じ言葉使ったみたい。(笑)
まぁ、作品的にはそれほどの盛り上がりとか感動とかといったものも薄かったから6点は妥当かな。
>男性ファンが喜びそうなアクションは豊富に用意されている。
男性はそうですか。私なんかはジェームズ・フランコ素敵!で観てましたからね(笑)イギリス勢の中のアメリカ人だけど、雰囲気的にも違和感なく、頑張ってたと思いません?
>撮影は重厚で、古代らしい荒涼たるムードの醸成が秀逸。
冒頭のシーンなども素晴らしかったし、時代劇にはこんな重厚さって大事ですよね。友人に誘われて2回見たんですけど、やはり映像に重厚さがあると、それだけでも見ごたえは感じますね。これが二人にあわせた美しい映像だったら、もっと軽さが目立ったでしょうね。(やはり6点か…笑)
オカピー
2008年04月10日 02:58
シュエットさん、こんばんは!

>6点は妥当かな。
はい!(笑)
いや、6点というのは必ずしも悪い点ではないですぞよ。

「ロミオとジュリエット」云々というイメージで観たせいもあるでしょうが、結局トリスタンのジレンマが最大の見せ場になっているのは現代的な扱い過ぎるので、不自然なまでの悲劇性が欲しいと思ったりするわけです。
ジャンルを無視してリアリティを有難がる傾向は問題だと思うのですよ。映画の基本は夢なんですから。

>アクション
いや、個人的にこの映画においてはどうでも良いのですが、まあ見どころと言えば見どころと言えると思ったわけです。^^;

>J・フランコ
男には余り興味ないですが(笑)、どちらかと言うとピンと来なかったですね。^^;
すんません。

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