映画評「デジャヴ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督トニー・スコット
ネタバレあり

最近のトニー・スコットは目に悪そうな映像のオンパレードで苦手にしている監督だが、今回は良い。余りいじり過ぎなければ若々しい映像が魅力となることを見事に証明した形である。しかし、映像で良い気分になっていたら、お話が出鱈目なのでまたまたズッコケてしまった。

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ニューオーリンズのフェリー船が爆破され500余名の海兵隊関係者が犠牲になる。
 テロ事件とすぐに見破ったATF(アルコール、たばこ、火器)捜査局のデンゼル・ワシントンが別に引き上げられた死体の女性ポーラ・パットンが事件の犠牲者ではないと察し、死体の様子から彼女が事件に利用されたと推理する。

と、ここまでは捜査ものとしてなかなか面白く作られているが、その後(あと)からいけません。

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FBIは頭脳明晰で判断力に優れた彼を捜査に加えるべく招聘して、数多(あまた)のモニターのある施設に連れて行く。それは4日と6時間前の映像が自由自在に見られる<タイム・ウィンドウ>なるシステムだが、主人公は再現映像ではなくて4日と6時間前の現実を見ていること、つまりタイムワープが発生していることに気付いてしまう。やがて、犯人を突き止めた後彼は、ポーラを救い、かつ、事件を未然に防ぐ為に事件の2時間前に自ら飛ぶのである。

タイム・トリップものはたまに作られると有難いが、こう次々と作られると有り難味も薄れる。しかも、本作は映画史上稀に見る大胆なタイム・パラドックスにも<知ったことではない>という態度だから、もうがっかり。

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最近大きなパラドックスが発生しないように努力している時間SFが多く、同一人物は同じ時空に存在しないといったことが半ば約束になっている中で、一応近年の他の時間SF同様に全てが織り込み済みという扱いをしているように見えるが、現に画面上彼が別の彼自身に会うことはないものの、どうにも割り切れないところが出てくる。
 歴史(過去)を変えてはいけないというのが時間SFの約束事。それができない場合観客はパラレル・ワールドの概念を持ってくればパラドックスを感じない。が、本作の展開は余りに原則無視につき、一つの世界にパラレル・ワールドがある感じで、最終的に馬鹿らしさが先に立つ。

最後にハリケーン<カトリーナ>の被災者に対するメッセージが出てくるが、製作の背景は、言うまでもなく、「9・11全米テロもしなかりせば」という思いである。

終わり悪(あし)ければ全て悪(あ)し。

この記事へのコメント

2008年05月02日 22:28
こんばんは。
>こう次々と作られると有り難味も薄れる
D・ワシントンがマシンの中に入るシーンは、結局そうなるのかと少々がっかりしました。
しかし、この映画に限らず、元々タイムパラドックスを気にしない性質なので、それ以外は楽しめました。
オカピー
2008年05月03日 02:28
hashさん、こんばんは!

>少々がっかり
本当にね!
あのまま捜査ものとして犯人を追いつめる話も十分作れたでしょうにね。
まあ、時代の要請ですか。

>タイムパラドックス
ええとですね、パラレル・ワールドという考えを導入すると大概の作品がパラドックスをクリアできるのですが、本作の場合並列でなければならないパラレル・ワールドが直列になっている感じなので、僕はNGでした(笑)。
つまら~ん、てなもんです。幕切れ以外は結構上手く作っているのに勿体ない。
2009年01月02日 21:53
プロフェッサー、こんばんは。

トニー・スコット、昔よりはかないよくありませんか。
本作も私の好みの画でした。
ただ、仰る通りストーリーがいただけない。

>映画史上稀に見る大胆なタイム・パラドックスにも<知ったことではない>という態度

正に。
感じる部分は違うのかもしれませんが、パラレルワールドがどうも納得できない私は特にです。
あのラストは・・・。

あと、あの装置ですか。やり過ぎかなとも思いも。まあ、気にとめずに楽しんでみていたのですが、あまりにタイムパラドックスがね~。

何とも残念です。

では、また。
オカピー
2009年01月03日 02:47
イエローストーンさん、こんばんは。

>トニー・スコット
これは良いです。
前の何作かは刻みネギショットに目がちかちかして40を超えるときついと言わざるを得ませんで。

>パラレルワールド
僕も文系ですからよく解らない概念ですけどね。^^;
本作の幕切れはパラレルワールドでも説明できましぇん。

>タイムパラドックス
を回避しようとして生じてしまったケースはともかく、余りに頓着しなくて、呆れましたね。

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