映画評「ゲゲゲの鬼太郎」

☆☆(4点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・本木克英
ネタバレあり

水木しげるの余りにも有名なコミック及びTVアニメの実写映画版。

僕は発表されて半世紀ほど経ち同時に人口に膾炙したもの、若しくはしばしば映像化されてイメージの固定されたもの以外、原作との乖離は気にしないが、これほどまで古典的なコミック・アニメの実写版はやはりどう映像化しても違和感の方が先に立つ。小説と違って既に具体的に造形されているものを生身の人間が扮装するのだから当然である。本作の場合、鬼太郎や猫娘は子役を起用すべきであった。

テーマパーク建設の為に稲荷神社の解体が始まってから団地内に妖怪が出没するので団地に住む少年・健太(内田流果)が鬼太郎(ウェンツ瑛士)のご登場を願う。建設反対の住民たちを脅す妖怪たちを派遣し小遣い稼ぎをしていたねずみ男(大泉洋)は稲荷神社から妖怪石を盗んで売り飛ばすが、その石を偶然目にして憑かれた健太の父親(利重剛)が石を奪い息子に渡した後逮捕されてしまう。
 石を奪い返そうと狐たちが少年とその姉(井上真央)に襲い掛かり、鬼太郎が懸命に阻止するが、少年が父親との約束を守って在り処を教えない為、鬼太郎が妖怪警察に逮捕され妖怪裁判所に釜ゆでの刑を言い渡される。

その後は観てのお楽しみといったところだが、少年が石を持ちながら父親との約束の為に口を割らないという設定が本作をつまらなくした最大の原因で、数多の妖怪が登場するのだから冒険場面はいくらでも作れそうなものを、少年を死んだ父親と黄泉の国で逢わせて心を解いたところで教えて貰おうという、子供だましの、およそ非冒険的な発想でお茶を濁してしまっている。
 少年が近くに持っていることは狐も鬼太郎も知っているわけで、少々乱暴でも後生大事に持っているバックを奪えばすぐに解決するのに、わざと気付かないふりをしているとしか思えない不自然さが残る。人情にほだすには余りにも工夫が足りず、子供向けだから良いという問題でもあるまい。

全体の映画作りにも先年の「妖怪大戦争」と似たようなところが少なからず有名人の変身ぶりをお楽しみにさせるなど二番煎じも良いところ。もっと妖怪ものらしいおどろおどろしいムードの醸成に努める方が賢明であっただろう。

アニメ第一シリーズをリアルタイムで観ていた僕だから、TVと同じ主題歌が使われ、<目玉おやじ>の声をお馴染・田の中勇氏が当てているのは嬉しい。

この記事へのコメント

2008年05月06日 19:06
わたしは第2作目世代なのかな?でもたまに夕方白黒の鬼太郎を再放送してるとこれが怖くてね~~。夜も眠れないほどでした。
それを考えると今のは全く別物になってます。うるさいほど構ってもらったり、愛情たっぷりに近所の人に叱られた世代とは書くテーマもやっぱり違ってくるのでしょうか?今はとにかく家族の絆とか友情とかばかりですね。わたしは公開当時はとにかく実写ならではの「ねずみ男」と「目玉おやじ」に焦点をあわせて仮装大会を楽しんだくちです。
オカピーさんの記事でこのようなストーリーだったのかと改めて理解できましたです。ありがとうござます。(笑)
夏にはパート2が控えておりますの、鬼太郎・・・・(苦笑)
今度はキャラだけのインパクトももうないでしょうから、じっくりストーリー練らないと絶対コケますね。
オカピー
2008年05月07日 04:04
しゅべる&こぼるさん、こんばんは!

>仮装大会
自体は構わないですが、ちょっとおふざけ過ぎですね。コメディーならそれに徹すれば良いですけど、お子様向けでそれも出来ない。

>第2作目世代
そうかもですね。
目玉おやじの田の中勇氏ついでに鬼太郎の声も「戸田恵子」で・・・とコメントされる方もいらっしゃいましたが、僕らにとっては鬼太郎は野沢雅子さんですよね。

>家族の絆
もうそればっか。「ナイトミュージアム」と続いてだもんなあ。
恐らく現実の親子関係が希薄になっていることの反映なんでしょうが、他人との関係も描いて下さい。そちらのほうが大事でしょうに。

>パート2
こちらはストーリーが弱体ですから、脚本の頑張り次第でしょうね。^^

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