映画評「女帝<エンペラー>」

☆☆★(5点/10点満点中)
2006年中国=香港映画 監督フォン・シャオガン
ネタバレあり

厳密に言えばアン・リーの「グリーン・デスティニー」が先鞭をつけたのであろうが、チャン・イーモウが「HERO」を作ってから中国(香港)製時代劇は絢爛豪華な絵巻仕立てが相場になった。シェークスピアの「ハムレット」を中国中世に翻案した本作もその流れを踏襲している。

10世紀、栄華を誇った唐が滅びて世の中は混乱を極める五代十国時代の某国、グォ・ヨウは兄王を殺して新王になり、兄の后だったチャン・ツィイーと強引と結婚する。彼女はかつての恋人である皇太子ダニエル・ウーを新王の暗殺の手から守る為に犠牲になったのだ。

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本作は「ハムレット」の設定を生かしながらかなり変更を加えていて、新王と結ばれるのが実母ではなく父の后になった昔の恋人であるという基本設定から最近の作品らしくロマンスにかなりの重点を置こうとしたことが伺える。
 或いは、毒杯を飲んで死ぬのは王妃ではなくてオフィーリアに相当するジョウ・シュンというのも趣向だが、最後にバタバタと関係者が死んでいく幕切れにもご本家ほどの壮絶さを感じない。恨みが連続的な悲劇を生む虚しさの代りにツィイーの権力欲が前面に出るからで、彼女が本来持っていたはずの愛情や復讐心が後半は全く曖昧になってしまっている。

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中国製の同種の旧作同様に見せ場の軸は派手なアクションとなっているが、ワイヤーアクションとスローモーションの連続を見ると、監督フォン・シャオガイ、アクション監督ユエン・ウーピンはこの二つの技術を魔法か何かのように思っているらしい。
 僕に言わせればこれらは効果を生む技術であって魔法ではない。効果を生むには肝心なところで2、3回使うに限るべきで、こう終始使っていては効果どころか間延びした印象を生むだけである。ワイヤーは道具に頼らぬアクションに比べてどうしてもテンポが遅くなるので、それを誤魔化す為にスローの多用になったのかもしれぬし、或いは「300」と同じくアクションを舞踊的に見せる狙いもあったのかもしれないが、とにかく展開の鈍重化には十分貢献して観客をうんざりさせてくれる。

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狙いも甚だ曖昧で、ロマンスというには権謀術数が目立つし、人間劇というにはアクションに時間を割き過ぎ、何とも中途半端で紹介に困る作品に終った。

文字通りワイヤーに頼って自縄自縛になったわけ。

この記事へのコメント

hash
2008年06月20日 21:46
こんばんは。
最後にチャン・ツィーを殺したのは誰なのでしょう。
先代の亡霊でしょうか?
オカピー
2008年06月21日 01:06
hashさん、こんばんは!

>チャン・ツィーを殺したのは誰
僕は先代の亡霊と思っております。そのほうが話として落ち着きます。
元ネタが「ハムレット」ですしね。

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