映画評「バルジ大作戦」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1965年アメリカ映画 監督ケン・アナキン
ネタバレあり

僕は戦争は大嫌いだが、必ずしも戦争映画は嫌いではない。少なくとも戦意高揚の国策映画でもない限り寧ろ好きと言っても良いくらいだ。映画はその場に限って夢若しくは悪夢を見せるものであるから、現実と混同するような野暮は映画ファンとして絶対にしない。
 因みに、題名に使われたバルジは地名ではなく、【ふくらみ】を意味する一般名詞で、第2次大戦の西部戦線で実際に独軍が展開した一連の作戦を指す。

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1944年12月ベルギーのアルデンヌ、連合軍に制空権を握られたドイツ軍は大佐ロバート・ショーを指揮官とするタイガー戦車隊による奇襲攻撃で膠着状態を突破しようと、低気圧の関係で荒れて飛行機の飛べない悪天候の日に作戦を決行することにし、米軍に化けさせた落下傘部隊に地名の変更、橋爆破の偽装を行わせ連合軍を大いに攪乱する。
 方や、クリスマス気分で情報部の中佐ヘンリー・フォンダの「戦車隊奇襲の可能性あり」という提言を無視したロバート・ライアン将軍以下の米軍はかなり泡を食うことになるが、濃霧をものともしない中佐の体を張った戦車隊偵察が形勢を逆転させる。

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子供時代兄と違って戦車のプラモデルなど買ったことのなかった僕でも雪の積もった森林に連なる戦車の大群にはかなり興奮した記憶があって【戦車が活躍する映画】としては「パットン大戦車軍団」よりこちらをお勧めしたいと思っている程だが、何十年かぶりという今回もやはり戦車がぞろぞろ出てくるとワクワクしてしまった。
 序盤の布石部分が些かまだるっこい以外の展開は順調で、特に落下傘部隊の後方攪乱作戦は大変面白く描かれている。

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「誰の視点でストーリーを追えば良いか解らない」というご意見を目にしたが、作戦が主役なのだからそんなことはどうでも宜しく、それよりドイツ兵が英語を話すのは甚だ紛らわしくて困る。まして本作には英語を話すドイツ兵が出てくるわけで、英語を意識的に話す直前だけドイツ語が出てくるのも妙なもの。字幕を読むのが面倒くさいというものぐさ観客のせいでこういう弊害が出てくるアメリカ映画は多い。二ヶ国語以上が交錯するお話ではきちんとその言語で話してもらわないと混乱の元である。
 ドイツ側の描写に関してはもう少し金を掛けて貰ってクルト・ユルゲンスやゲルト・フレーべ辺りのドイツ人役者のドイツ語で観たいところではござりましたな。

この記事へのコメント

オンリー・ザ・ロンリー
2008年07月23日 08:57
お早うございます。
ドイツ将校はロバート・ショー、ロバート・ヴォーンがかっこいい。ピア・アンジェリがちょこっといて嬉しかった。彼女の唯一のDVDではないだろうか。公開当時は名劇場、テアトル東京。今でも戦車のカチャカチャカチャが耳に残る。
オンリー・ザ・ロンリー
2008年07月23日 20:07
説明が不適切でした。無論R・ヴォーンは出ていません。
オカピー
2008年07月24日 02:05
オンリー・ザ・ロンリーさん、こんばんは。

>ロバート・ヴォーン
「レマゲン鉄橋」ですね。
結構好きな作品です。
ヨーロッパ戦線ではやはり橋が重要なんですねぇ。

>ピア・アンジェリ
テリー・サヴァラスの現地の恋人役でしたね。

>テアトル東京
丁度東京に住んでいましたので、最後の日に付き合いました。
「ディア・ハンター」と「天国の門」の二本立て。
込み合って大変でしたが、良い思い出ですね。
終わったら朝の5時頃で、そのまま帰宅の電車を待ったものです。

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