映画評「サンキュー・スモーキング」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ジェースン・ライトマン
ネタバレあり
ジェースン・ライトマンという新人の脚本(脚色)・監督作品だが、予想外と言えるほど上出来。
タバコ業界のロビイストを務めるアーロン・エッカートは、自ら発案した「映画でスター俳優に煙草を吸わせて売り上げ回復」というアイデアに業界のトップであるキャプテン(ロバート・デュヴォールのお墨付きを得て、ハリウッドに乗り込んで新作の確約を得る。
が、その後は不運の連続で、タバコ業界を憎むグループに拉致された挙句のニコチン・パッチ攻撃で瀕死の重傷を負ったり、抱き込んでしまえば大した記事にはすまいと高を括ってベッドインした女性記者ケイト・ホームズに業界の裏話を全て書かれてしまい、遂に首になりさすがに落ち込む。
結局、議論の上手い父親を尊敬する息子キャメロン・ブライトに励まされ、上院議員ウィリアム・H・メイシーが主導するタバコ小委員会で証言するも業界には戻らず、同種の悩みを抱える各業界相手のコンサルタントになる。
裁判に敗れて膨大な賠償金を払うことになったりタバコ業界に逆風が吹きっ放しのアメリカの世相を面白く風刺したブラック・コメディーだが、優れた作品となった所以は、喫煙問題ではなく、ディベートで相手を打ち負かすアメリカ流儀を徹底して前面に押し出していることにある。他の国の文化を知るのも映画を観る楽しみの一つ。
息子を絡めてきたのが大変上手く、物語の重要な転換点全てに父親の才能を受け継いだこの少年が絡んでいることに注目しておきたい。アクセントとしても効果的に使われている。
ディベートにおける具体的戦術の面白さは実際に観て貰うことにして、タバコのパッケージを利用したタイトル・デザインから誠に快調、アルコール業界や銃器業界のロビイストとテーブルを囲んで同病相憐れむ様子を交えて笑わせながら、モタモタすることなく展開してくれるのが大変有難い。
本作の最後で指摘される古い映画の喫煙場面の“処理”は、実際に行われているらしいが、映画ファンとして断じて許しがたい。古い映画におけるある種の言葉がTV放映で消されるのも同様。
禁煙が成功したと喫煙で祝う人々もいましたっけ。
2005年アメリカ映画 監督ジェースン・ライトマン
ネタバレあり
ジェースン・ライトマンという新人の脚本(脚色)・監督作品だが、予想外と言えるほど上出来。
タバコ業界のロビイストを務めるアーロン・エッカートは、自ら発案した「映画でスター俳優に煙草を吸わせて売り上げ回復」というアイデアに業界のトップであるキャプテン(ロバート・デュヴォールのお墨付きを得て、ハリウッドに乗り込んで新作の確約を得る。
が、その後は不運の連続で、タバコ業界を憎むグループに拉致された挙句のニコチン・パッチ攻撃で瀕死の重傷を負ったり、抱き込んでしまえば大した記事にはすまいと高を括ってベッドインした女性記者ケイト・ホームズに業界の裏話を全て書かれてしまい、遂に首になりさすがに落ち込む。
結局、議論の上手い父親を尊敬する息子キャメロン・ブライトに励まされ、上院議員ウィリアム・H・メイシーが主導するタバコ小委員会で証言するも業界には戻らず、同種の悩みを抱える各業界相手のコンサルタントになる。
裁判に敗れて膨大な賠償金を払うことになったりタバコ業界に逆風が吹きっ放しのアメリカの世相を面白く風刺したブラック・コメディーだが、優れた作品となった所以は、喫煙問題ではなく、ディベートで相手を打ち負かすアメリカ流儀を徹底して前面に押し出していることにある。他の国の文化を知るのも映画を観る楽しみの一つ。
息子を絡めてきたのが大変上手く、物語の重要な転換点全てに父親の才能を受け継いだこの少年が絡んでいることに注目しておきたい。アクセントとしても効果的に使われている。
ディベートにおける具体的戦術の面白さは実際に観て貰うことにして、タバコのパッケージを利用したタイトル・デザインから誠に快調、アルコール業界や銃器業界のロビイストとテーブルを囲んで同病相憐れむ様子を交えて笑わせながら、モタモタすることなく展開してくれるのが大変有難い。
本作の最後で指摘される古い映画の喫煙場面の“処理”は、実際に行われているらしいが、映画ファンとして断じて許しがたい。古い映画におけるある種の言葉がTV放映で消されるのも同様。
禁煙が成功したと喫煙で祝う人々もいましたっけ。
この記事へのコメント
この映画、ストレートの楽しめました。放映されているので記事にしたいなって思って再見のため録画してあるけどまだ見てませんね。
「ハード・キャンディ」のあの子が今度は妊娠してしまうお話「JUNO」の監督で、アカデミー受賞した脚本を書いたのが元ストリッパーとか、口コミで広がった面白い沿うらしいです。大阪は公開中で私はまだ観にいっていませんけど、「サンキュー・スモーキング」のセンスから察する期待できそううかなって思う。
アーロン・エッカート今までもうひとつ作品的にめぐまれなかったけど、「ブラック・ダリア」とか本作とかボナム=カーターと共演した「カンバセーションズ」とか、ようやく彼の居場所が拡がってきたなって嬉しく思ったりしてます。いい役者だと思うんですよ。いい人過ぎるのかな?
>本作の最後で指摘される古い映画の喫煙場面の“処理”は、
? 記憶にない。録画みて確認しよう。
これもバカだとしか思えません。
実際に1000円にしたらどうなるのかシミュレーションを取り入れたような風刺映画ができないかしらん・・・
と、真剣にタバコをやめなければならないと考えてるkossyです・・・
面白いし、多分良い映画です。^^
ドタバタばっかり作っている親父より良い監督になるんではないかな。
>JUNO
ほーっ、あの、カナダの大竹しのぶことエレン・ペイジ嬢が出ておりますか(最近の作品に全然ついていけない私め)。
>エッカート
映画見始めの頃は役者も一生懸命憶えた僕ですが、昨今はてんで駄目。エッカートも「カンバセーションズ」でやっと憶えた。
困ったもんでしょ?(笑)
好演でしたので記事に入れようか迷った末に省略しました。演技評は難しいですよ。
全くコメントも寄せていないのに、わざわざどうもです。
>タバコを一箱1000円
僕はたばこを吸ったことのない人間ですので基本的に幾らになっても困らないわけですが(笑)、腐った役人たちの無駄使いやら出鱈目の予算編成の中では、絶対嫌ですね。
北朝鮮なんか怖くないから、軍備費から1兆円くらい福祉に回してよ。道路も新規工事は殆ど要らんよ。
と僕は思っておりますが、kossyさんは如何?
お母さまのご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。
余計なことかも知れませんが、あまりご自分を責めては亡くなられたお母様も哀しむと思います。
ところで、
>古い映画の喫煙場面の“処理”は、実際に行われているらしいが、映画ファンとして断じて許しがたい。
本当に許しがたいですね。大事な部分?を映倫でぼかしを入れるのと同じぐらいの愚行です。。。
母は自分のことは基本的に考えない人でしたから、絶対悲しむでしょう。
解っているのですけど、僕が病院へ行こうと言わなかった背景に、打算があったような気がするんです。母の死によるマイナスの方が大きい筈なのに、ごく小さい打算が僕の判断を狂わせたような気がして、苦しいのです。
しかし、大変有難うございました。
無理に涙を抑えようとせず、自然体で行けば比較的早めに良くなるかもしれません。
>ぼかし
あるものを見せているだけなんですけどね。何故かアマゾンの森林部族などは平気で見せている。考え方によれば、動物と同じ扱いで、差別のような気がします。
NHKが積極的にやっているTV放映での音消しもいけませんね。
現在、NHKプレミアム(旧NHK-BSハイビジョン)で山田洋次が選んだ家族映画特集をやっているのですが、今のところ使用自粛用語の音消しはやっていないようです。恐らく山田監督がNHKに要請したような気がしています。「音を消すなら仕事は引き受けられない」とか言って。