映画評「イーオン・フラックス」

☆☆★（５点／１０点満点中）
２００５年アメリカ映画　監督カリン・クサマ
ネタバレあり

１９９５年にアメリカで放映された同名ＴＶアニメを元にしたＳＦ映画。それよりも役柄の幅を益々広めているシャーリーズ・セロンが主演ということが話題でござろう。ともかく最近はスーパー・ヒロインの大ブームで、暫くは続きそうな気配ですな。

２０１１年ウィルスで人類の９９％が死に、科学者トレヴァー・グッドチャイルドが開発したワクチンにより生き残った５００万人が、外界と遮断された都市ブレーニャで平穏に過ごし、４００年ほどの時が経つ。グッドチャイルドの子孫を頂点に形成された政府は圧政を敷き、それに対抗する“モニカン”なる組織が反抗を強め、妹を政府に殺されたイーオン（シャーリーズ）が政府のトップであるトレヴァー８世の暗殺に派遣される。

政府の拠点に侵入する辺りまで、侵入方法こそ違え、「ウルトラヴァイオレット」の二番煎じで大して面白くないが、ヒロインの顔にまでコンピューター処理を施した前述作と違って実技を大いに生かしていることを評価したい。正確には解らないが、女性監督カリン・クサマに実写映画を撮っているという意識が強かったのであろう。

後半に待っている驚くべき秘密については通常なら伏せておくところだが、これに触れないと書く事がなくなってしまうので、ネタばれします。
　イーオンとトレヴァー８世（マートン・チョーカス）は出会ってすぐに恋に落ちる。何となれば、ワクチンの副作用で生殖機能を失った人類は全てクローンであり、二人は４００年前に夫婦であったからである。元夫婦のクローン人間同士が互いに認識しすぐに愛し合うというのは、科学的な根拠はともかく、文学的には大変面白い着想であるし、科学倫理上の理由でなく人間としての幸福の為にクローン人間は望ましくない、と打ち立てた結論が存外クラシックで有難い。

クローンと言えば、クローン人間のアイデンティティという一見高尚なテーマを掲げながら対決のスリルのみを見せ、【感動的な幕切れ】のありえざるおためごかしに全く腹が立った「アイランド」より心理的に遙かに安心して観ることができる。☆★の数は同じですけどね。

イーオン・フラックスの髪形を俗に“モニカン刈り”と言います　-　２５世紀の風俗図鑑より。

Comments

[十瑠]

約２年前に、（年に一度の＾＾）劇場鑑賞の映画でした。

シャーリーズファンとしても、ＳＦファンとしても楽しみました。アニメの実写版としては、アニメ以上にカッコイイヒロインでしょう？って、原作アニメは見たこと無いんですが・・・

[オカピー]

十瑠さん、こんばんは。

＞ＳＦファン
あっ、そうか、ジュール・ヴェルヌの十瑠さんですものね。
しかし、何だかそういうイメージが薄いんですよねえ。

躊躇せずにネタをばらしています（^^;）が、クローン人間ものとしては、大掛かりで見た目は良いが実は支離滅裂で、観客を馬鹿にした（なのにそれに気づいた人は意外と少なかった）「アイランド」より、ずっとまともで気分は意外と古風、☆★の数以上に安心して楽しめましたね。

僕もシャリーズは好きだなあ。＾＾