映画評「ダイ・ハード4.0」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督レン・ワイズマン
ネタバレあり
「ロッキー」シリーズ程ではないが、「ダイ・ハード」シリーズ12年ぶりの新作の情報には驚いた。監督に起用されたのは、ゲーム感覚にあらでゲームとしか思えず映画として評価するに拒否反応が起きた「アンダーワールド:エボリューション」のレン・ワイズマン。
まず一人のハッカーがパソコンの操作と共に爆死するのがプロローグ。続いて、FBIサイバー犯罪部のコンピューターに異変が起こり、信号機が全て青になって交通は大混乱、そして通信、ライフライン、原子力、金融といったインフラへのハッキングが東部に始まり、やがてアメリカ全体がパニックに陥る。
そして、FBIが目を付けたハッカー青年マット(ジャスティン・ロング)をFBI本部へ連行する為に駆り出されるのが、ご存知<ついていない男>ジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)。
サイバー犯罪部と関係があったガブリエル(ティモシー・オリファント)率いるサイバー・テロ組織がマットを狙ったものの、パソコンを操作する寸前に刑事が訪れて埒が明かない為に直接襲撃を掛ける。しかし、ついていないのはこのテロ組織もご同様で、マクレーンに蹴散らされてしまう。
それ以降は、この即席のアナログ&デジタル・コンビがサイバー犯罪部長や悪党ガブリエルと交信しながら敵の拠点に近づいていき、その間にヘリコプターのパトカーへの襲撃、電力会社での格闘、偽の指令を受けたジェット戦闘機の攻撃を交わす巨大トラックの爆走といった、なかなか類を見ない派手なアクションがこれでもかこれでもかと繰り出され、手に汗を握る一大スペクタクルになっている。
これだけ見せてくれればとりあえず文句なしといったところだが、物語としての面白さは幾つかの要素により構成されている。
まず、武闘派を擁したサイバー・テロ組織という趣向である。コンピューターにより生活のほぼ全てが制御されている現在、そのシステムの一部を狙うだけでも相当な恐怖であるわけであるが、暴力と頭脳の両方で攻められては国の破滅と言うに等しく、荒唐無稽である一方大変現実的な恐怖と言わねばなるまい。愚かにもそれに挑戦したのが我が国のあのカルト集団である。
もう一点は、引退もそれほど遠くないアナログ人間の刑事と新世代のハッカーという珍コンビの面白さ。全てが対照的なのでそこはかとなくユーモアが醸し出され良いアクセントとなっている。
全てをサイバーで制御できると思った悪玉にとっての計算違いは、デジタル的な考えが通用しない古い人間のアナログ的ど根性。結局アナログがデジタルに勝つ面白さ、即ち、コンピューターを使って映像処理している本作では半ば矛盾するが、やはり古いスピリットが本シリーズを支える面白さなのである。
そしてそれを見事締めてくれるのがアメリカン・ロックの最高峰CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の名曲「フォーチュネイト・サン」。CG嫌いのアナログ人間だからこそ楽しめる映画と言うべし。
さて、問題のレン・ワイズマンだが、「アンダーワールド」でも発揮していた映像処理の感覚の良さが見事に生かされたと言える出来栄えで、これならまともに相手をする気になる。意外とCGが少ないのは勿論歓迎できるし、ジェット戦闘機の襲撃部分などで時に見せるCGも実写と上手く組合せ違和感が少ない。
ゲーム感覚のある映画とゲームそのものの映画とでは、天と地くらい差があるのだよ、ワトソン君。
2007年アメリカ映画 監督レン・ワイズマン
ネタバレあり
「ロッキー」シリーズ程ではないが、「ダイ・ハード」シリーズ12年ぶりの新作の情報には驚いた。監督に起用されたのは、ゲーム感覚にあらでゲームとしか思えず映画として評価するに拒否反応が起きた「アンダーワールド:エボリューション」のレン・ワイズマン。
まず一人のハッカーがパソコンの操作と共に爆死するのがプロローグ。続いて、FBIサイバー犯罪部のコンピューターに異変が起こり、信号機が全て青になって交通は大混乱、そして通信、ライフライン、原子力、金融といったインフラへのハッキングが東部に始まり、やがてアメリカ全体がパニックに陥る。
そして、FBIが目を付けたハッカー青年マット(ジャスティン・ロング)をFBI本部へ連行する為に駆り出されるのが、ご存知<ついていない男>ジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)。
サイバー犯罪部と関係があったガブリエル(ティモシー・オリファント)率いるサイバー・テロ組織がマットを狙ったものの、パソコンを操作する寸前に刑事が訪れて埒が明かない為に直接襲撃を掛ける。しかし、ついていないのはこのテロ組織もご同様で、マクレーンに蹴散らされてしまう。
それ以降は、この即席のアナログ&デジタル・コンビがサイバー犯罪部長や悪党ガブリエルと交信しながら敵の拠点に近づいていき、その間にヘリコプターのパトカーへの襲撃、電力会社での格闘、偽の指令を受けたジェット戦闘機の攻撃を交わす巨大トラックの爆走といった、なかなか類を見ない派手なアクションがこれでもかこれでもかと繰り出され、手に汗を握る一大スペクタクルになっている。
これだけ見せてくれればとりあえず文句なしといったところだが、物語としての面白さは幾つかの要素により構成されている。
まず、武闘派を擁したサイバー・テロ組織という趣向である。コンピューターにより生活のほぼ全てが制御されている現在、そのシステムの一部を狙うだけでも相当な恐怖であるわけであるが、暴力と頭脳の両方で攻められては国の破滅と言うに等しく、荒唐無稽である一方大変現実的な恐怖と言わねばなるまい。愚かにもそれに挑戦したのが我が国のあのカルト集団である。
もう一点は、引退もそれほど遠くないアナログ人間の刑事と新世代のハッカーという珍コンビの面白さ。全てが対照的なのでそこはかとなくユーモアが醸し出され良いアクセントとなっている。
全てをサイバーで制御できると思った悪玉にとっての計算違いは、デジタル的な考えが通用しない古い人間のアナログ的ど根性。結局アナログがデジタルに勝つ面白さ、即ち、コンピューターを使って映像処理している本作では半ば矛盾するが、やはり古いスピリットが本シリーズを支える面白さなのである。
そしてそれを見事締めてくれるのがアメリカン・ロックの最高峰CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の名曲「フォーチュネイト・サン」。CG嫌いのアナログ人間だからこそ楽しめる映画と言うべし。
さて、問題のレン・ワイズマンだが、「アンダーワールド」でも発揮していた映像処理の感覚の良さが見事に生かされたと言える出来栄えで、これならまともに相手をする気になる。意外とCGが少ないのは勿論歓迎できるし、ジェット戦闘機の襲撃部分などで時に見せるCGも実写と上手く組合せ違和感が少ない。
ゲーム感覚のある映画とゲームそのものの映画とでは、天と地くらい差があるのだよ、ワトソン君。
この記事へのコメント
全く、関係の無い前ふりで失礼します~。^^
いや、とにかく元気のいい映画は
いいですわね~~~!
あんだけドッチャン・ガッチャン
やってくれる物量作戦映画だと
目で脳でスポーツしたみたいな
カタルシスさえ感じられますわ~。
おおっと、クリーデンスとなっ!!
持ってますよ~~レコード盤の
「コスモス・ファクトリー」!
コスモスには“フォーチュネイト~”は
入ってませんが、「TRAVELIN' BAND」や
M・ゲイの「悲しいうわさ」のカバーとか
入っております。
J・フォガティ、あの渋シャウト!
カッコいい!!^^
>オリンピック
楽しんでおりますが、疲れました。^^;
今日は卓球女子団体と男子団体、野球だけで9時間余り見ました。
球技は長いから疲れます。
>目で脳でスポーツ
そうですねえ。
しかし、同じドッチャンガッチャンでも、「アンダーワールド」がつまらんのは映画の中に生活感情がないからです。
勿論生活感情がない映画の中にも楽しめる映画はありますが、その代わり厳しい人間観察があったりするわけですわいな。
>CCR
わてもアナログで第2作から第5作まで4枚持っとるど(笑)。
で、アンプが壊れてアナログを聴けなくなったので、二枚組ベストCDでお茶濁しているわけ。
やっぱり本物のアメリカン・ロックはCCRだべ。
ジョン・フォガティ、ええねえ!
本作はセルフパロディという見方もできるのではないかと思います。
「ロッキー6」のように原点に帰るのではなく、離れていくところにシリーズ物の面白さを感じます。
>映像処理の感覚の良さ
L・ワイズマンは、見せ方を心得ている監督だと思います。
>セルフパロディ
確かにシリーズが進むに連れ、不死身になっていく傾向はありましたね。
ただ、主人公のアナログ人間ぶりは相変わらずですが。
>ワイズマン
「アンダーワールド」は、お話は問題にならないものの、映像だけを見るには優秀でした。
私は夏季休暇の間は昼間は市川崑作品鑑賞、夜はオリンピックとPCの前に座る暇もなくすっかり返事が遅くなりました。併せて残暑見舞いの記事も持ってきました。といっても大半は市川作品の「野火」と「東京オリンピック」の記事ですが…。
さて、本作はまたまたP様の評価は辛いのでは?とドキドキしながら開けたら、ヤッター!高評価で嬉しく思います。私はどうもこの手の作品は楽しめたら最高で楽しめなかったらダメのどちらかしかなくって、他のブログではあれこれ分析したり過去作品と比較されたりしているけど、基本は楽しめたら良かったなもんで。
生活感…そうですよね。私は「情」って言葉で表現しているけれど生活感に裏づけされたところからくる「情」であるわけで、全く納得のお言葉!
このあたりが直感で語る私の論理的根拠の無さであるわけで、また一つ私の直感視点に言葉が増えました。感謝!
CCRのサウンド…こんなサウンドで迫られると弱い世代なんですよね、私もP様も(大きく括れば同世代でしょう?!)
車のCMでサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」なんて聴くだけでたまらんもんね。娘がお腹にいるときはしんどくってね、胎教でクラッシック聴いてたけど疲れてきてサンタナとかドアーズとか聴いてた。それでかしら娘のロック好きは(笑)今夏も帰ってきた翌朝からロックの屋外ライブ「サマーソニック」に2日間大騒ぎして行かはりました。
今度ビートルズ・サウンドだけで製作された「アクロス・ザ・ユニバース」という映画もビートルズだけで反応して見にいってきます。
>基本は楽しめたら良かったなもんで
それができない人が多いからシンプルな映画が評価されない土壌が出来上がってしまったのでしょう。
尤も何故面白いのかを分析しないと、そもそも<他との比較>にすぎない映画評は成立しないのですけど。
>生活感情
単なる<生活感>と<生活感情>ではちょっと違うと思いつつ使っておりますよ。^^
>私もP様も(大きく括れば同世代でしょう?!)
生まれた頃に家にTVがなかった世代ですからそう言って良いでしょう。^^
67~68年頃ドアーズの「ハートに火をつけて」やジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」、ビートルズの「ヘイ・ジュード」がラジオから流れていたのが耳に残っています。
懐かしいなあ。
>「アクロス・ザ・ユニバース」
"Hey Jude"は勿論、"Sexy Sadie"も出てくるんですね。^^
「ファイナル・カット」でジュード・ローとサディ(セイディ)・フロスト(当時夫婦)が共演しているのを見た時、ビートルズの歌みたいだなあと思ったものです。
この作品もまさか4作目が見られるとは思いませんでしたが、けっこう単純にたのしめました。
王道がいいですよね。デジタルに勝つタフガイのアナログ人間。
個人的には孤軍奮闘するマクレーンが好きなんですが、3作目より即席コンビものになってますね。まあ、歳の違うオタクのハッカー青年とコンビはけっこう楽しめました。スピード感もありましたしね。
ただ、サイバー軍団としてはおもしろかったのですが、ボスがね、頭のいいだけの人間で、ラストがちょっとものたりなっかた感が私はあります。
ただ、さすがジョンとホリーの娘という感じに成長した娘や、一応、エレバーターとパイプもでてきたし、ブツブツとつぶやきながら戦うマクレーンはとてもよかったです。
ただ、こまかな点ですが、マクレーンの銃がベレッタでなくシグP226レイルになっていたのがとても残念でした。頑固な彼らしく使いつづけてほしかった。
では。
>頭のいいだけの人間
これがデジタル的、現代的なんでしょうね。
頭脳だけでは危いので、武闘派をはべらせて、用意周到に事を進めていく。彼はアナログ世界の奥深さに気付かなかったのです(笑)。
>マクレーン
孤軍奮闘ではなくなりましたが、ぶつぶつは全く変わらなかったですね。
銃器の類は殆ど解らない僕です。^^;