映画評「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」
☆☆(4点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ゴア・ヴァービンスキー
ネタバレあり
ご存知ジョニー・デップ主演の大人気シリーズ最終作だが、彼のファンでもシリーズのファンでもない僕のような一般的な映画ファンには相当つらい作品である。
東インド会社を経営するベケット卿(トム・ホランダー)はタコ人間になったディヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)のえぐられた心臓を手にいれ弱点を握り、前作で海底に消えたジャック・スパロウ(デップ)を含めた9人の海賊長(船長)が集まる海賊評議会で一網打尽にしようと画策する。
これが一方の話で、方やお馴染みのエリザベス(キーラ・ナイトリー)やウィル(オーランド・ブルーム)らがスパロウの居場所を探り当てる為にシンガポールの巣窟へ入りアジア一の海賊船長(チョー・ユンファ)の持つ海図を奪ってまんまと探し当て、合流した彼らはやがて評議会を開催、ベケット卿船団に対抗する策略を練る。
こう書くと解り易く感じられるが、実際には入り組んでいて甚だ見通しが悪く、様々な登場人物がそれぞれの野心なり目標なりをちらつかせる様子をご丁寧に並行描写するので、何を軸に定めて鑑賞すれば良いのか五里霧中のまま観るしかない。
それも説明的な台詞が台詞劇かと思うほど延々と続くのに閉口、話半ばで殆どお手上げ状態に陥ったが、一度見始めたものは最後まで観るのが僕の信条だから、「かなり反面教師的な作品ではある」と思って観ているうちに何とか話は進み時間は過ぎる。
繰り返しになるが、程度の差こそあれ多くの人が解りにくさを感じるのは狙いが曖昧でお話の重心が定まっていないからで、映画サイトなどで「これはウィルの物語である」などといった<解釈>が出てくるのも本作の曖昧である証左と言うべし。本来冒険アクションは大きな目標を一つ設けそれを目指して進んで行けば十分、そうすれば100分程度でもっと楽しい娯楽作品が出来上がる。本作の場合は複雑だから169分になったというよりは150分を超える作品を作る為に話を複雑にしたような印象を禁じ得ず、カリプソなる海の女神を巡る騒動など【大山鳴動ねずみ一匹】の最たるもの。そんな水増し場面が枚挙にいとまない。
金を湯水のように使って感心させられることの多い映像面でも、相変わらず小汚い連中と気持ち悪い連中がうじゃうじゃ出てくるのが有難くなく、薄暗い場面が必要以上に多いのも困る。
ファンが登場するのを待ちかねるであろうデップは30分を過ぎてから漸く登場するが、出遅れを挽回しようというわけか、いきなり「キートンの即席百人芸」みたいに何人ものデップ君がところ狭しと入り乱れる。キートンが苦労して作った80年以上も前と違ってコンピューター時代だからこんな合成はお茶の子でも、残念ながらこの辺りのお遊び的場面やところどころに出てくるお笑いは作者が一人ご機嫌になっている感じが強い。
こうして比べてみると、当時冗長と思った第一作もまとまりという点ではなかなかのものであったと感じ入り、第二作の散漫さも程度が良いような気さえしてくる。
2007年アメリカ映画 監督ゴア・ヴァービンスキー
ネタバレあり
ご存知ジョニー・デップ主演の大人気シリーズ最終作だが、彼のファンでもシリーズのファンでもない僕のような一般的な映画ファンには相当つらい作品である。
東インド会社を経営するベケット卿(トム・ホランダー)はタコ人間になったディヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)のえぐられた心臓を手にいれ弱点を握り、前作で海底に消えたジャック・スパロウ(デップ)を含めた9人の海賊長(船長)が集まる海賊評議会で一網打尽にしようと画策する。
これが一方の話で、方やお馴染みのエリザベス(キーラ・ナイトリー)やウィル(オーランド・ブルーム)らがスパロウの居場所を探り当てる為にシンガポールの巣窟へ入りアジア一の海賊船長(チョー・ユンファ)の持つ海図を奪ってまんまと探し当て、合流した彼らはやがて評議会を開催、ベケット卿船団に対抗する策略を練る。
こう書くと解り易く感じられるが、実際には入り組んでいて甚だ見通しが悪く、様々な登場人物がそれぞれの野心なり目標なりをちらつかせる様子をご丁寧に並行描写するので、何を軸に定めて鑑賞すれば良いのか五里霧中のまま観るしかない。
それも説明的な台詞が台詞劇かと思うほど延々と続くのに閉口、話半ばで殆どお手上げ状態に陥ったが、一度見始めたものは最後まで観るのが僕の信条だから、「かなり反面教師的な作品ではある」と思って観ているうちに何とか話は進み時間は過ぎる。
繰り返しになるが、程度の差こそあれ多くの人が解りにくさを感じるのは狙いが曖昧でお話の重心が定まっていないからで、映画サイトなどで「これはウィルの物語である」などといった<解釈>が出てくるのも本作の曖昧である証左と言うべし。本来冒険アクションは大きな目標を一つ設けそれを目指して進んで行けば十分、そうすれば100分程度でもっと楽しい娯楽作品が出来上がる。本作の場合は複雑だから169分になったというよりは150分を超える作品を作る為に話を複雑にしたような印象を禁じ得ず、カリプソなる海の女神を巡る騒動など【大山鳴動ねずみ一匹】の最たるもの。そんな水増し場面が枚挙にいとまない。
金を湯水のように使って感心させられることの多い映像面でも、相変わらず小汚い連中と気持ち悪い連中がうじゃうじゃ出てくるのが有難くなく、薄暗い場面が必要以上に多いのも困る。
ファンが登場するのを待ちかねるであろうデップは30分を過ぎてから漸く登場するが、出遅れを挽回しようというわけか、いきなり「キートンの即席百人芸」みたいに何人ものデップ君がところ狭しと入り乱れる。キートンが苦労して作った80年以上も前と違ってコンピューター時代だからこんな合成はお茶の子でも、残念ながらこの辺りのお遊び的場面やところどころに出てくるお笑いは作者が一人ご機嫌になっている感じが強い。
こうして比べてみると、当時冗長と思った第一作もまとまりという点ではなかなかのものであったと感じ入り、第二作の散漫さも程度が良いような気さえしてくる。
この記事へのコメント
本作は明らかに失敗作だと思います。
パート2と3を続けて撮ったようですが、元々1作で充分な程度の内容を、余分なエピソードを加えて2作に分けたものの、最後は収拾がつかなくなったという感じで、監督の力量の低さを感じます。
それでも、世界的にヒットしたということは、観客にとっては、映画を観るというより、遊園地の映像アトラクションを見るという感覚に近いのではないかと思います。
>パート2と3を続けて撮ったようです
そうでしょうね。
最初が2003年で、2作目が2006、そしてこの3作目は2007ですから。
わざわざ1年待たせたのでしょう。
ファンにはある程度待たせたほうが効果的かもしれないですが、それ以外の人々は旧作のディテイルを忘れていますから、映画としてよく出来ていても不満が出やすいですし、まして本作のように脚本が整理されないと、お手上げになってしまいます。
>遊園地の映像アトラクションを見るという感覚
その通りでしょう。
僕はたまにしか映画を見ない一般客は仕方がないと諦念を抱いておりますが、映画ファンがそれでは困りますね。
僕の場合は体調が良すぎて眠るにも眠れなかった(笑)のですが、とにかく設計が悪すぎます。
主演三人のいずれかのファンかつこのシリーズのファンでもない限り退屈するのは必定と思いましたね。