映画評「ディスタービア」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督D・J・カルーソー
ネタバレあり
脚本家の中にもヒッチッコキアンが少なからずいるようで、一昨年観た「フライト・プラン」は「バルカン超特急」飛行機版だったし、毎年数本は影響を受けたと思われる作品が見られる。本作もそうした一本である。
父親を交通事故で失ったショックで自棄(やけ)気味の高校生シャイア・ラブーフがスペイン語教師に暴力を奮った為に3カ月の自宅軟禁処分になる。
ここで驚かされるのが彼の足に監視システムの装置が付けられることである。出所した性犯罪者に付けられることがあるのは知っているが、アメリカでは起訴すらされていない高校生の暴力にかような対応をするのだろうか?
それはともかく、違反が3度繰り返されると少年院行きの可能性が出てくるので警察に察知される限界地点にロープを張り、そこから外に出ることはできない。母親にオンラインゲームの契約を切られ、することがなく始めたのが体良く言えば近所の様子伺い、つまり覗き。そう、ヒッチコックの傑作「裏窓」の高校生版なり。
さて、隣に越してきた美少女サラ・ローマーの動静が気になるうちは良いが、別の隣に住む男デーヴィッド・モースが連続女性失踪事件の犯人ではないかと疑惑を抱いたことから、やがて探偵ゲームに引き込んだサラや友人アーロン・ヨー共々恐怖に震えあがることになる。
大リーグと高校野球を比較するようなものだが、恋愛という縦糸と探偵ごっこの横糸が見事な綾を成した「裏窓」と違って、思春期らしいロマンスはサスペンスと並行して展開するだけなので、無駄とは言わないまでも青春ものらしい味付けの域を出ない。
或いは、携帯電話など進歩した技術を活用して行動範囲を広げたのも良し悪しで、モースの車に仕掛けをする場面など主人公たちが無用に大騒ぎしている印象を強めてしまっている。モースに脅迫された後サラ嬢の活躍がすっかりなくなってしまうのも芸がない。
といった具合に、脚本は詰めが甘くて物足りないものの、監督D・J・カルーソーが妙に凝らずに正攻法のサスペンス醸成に努めているのが奏功して、結構ヒヤヒヤさせられる。平均的な職業監督と判断して来た彼の演出の中では上出来の部類である。
田舎も怖いよという教訓スリラー。
2007年アメリカ映画 監督D・J・カルーソー
ネタバレあり
脚本家の中にもヒッチッコキアンが少なからずいるようで、一昨年観た「フライト・プラン」は「バルカン超特急」飛行機版だったし、毎年数本は影響を受けたと思われる作品が見られる。本作もそうした一本である。
父親を交通事故で失ったショックで自棄(やけ)気味の高校生シャイア・ラブーフがスペイン語教師に暴力を奮った為に3カ月の自宅軟禁処分になる。
ここで驚かされるのが彼の足に監視システムの装置が付けられることである。出所した性犯罪者に付けられることがあるのは知っているが、アメリカでは起訴すらされていない高校生の暴力にかような対応をするのだろうか?
それはともかく、違反が3度繰り返されると少年院行きの可能性が出てくるので警察に察知される限界地点にロープを張り、そこから外に出ることはできない。母親にオンラインゲームの契約を切られ、することがなく始めたのが体良く言えば近所の様子伺い、つまり覗き。そう、ヒッチコックの傑作「裏窓」の高校生版なり。
さて、隣に越してきた美少女サラ・ローマーの動静が気になるうちは良いが、別の隣に住む男デーヴィッド・モースが連続女性失踪事件の犯人ではないかと疑惑を抱いたことから、やがて探偵ゲームに引き込んだサラや友人アーロン・ヨー共々恐怖に震えあがることになる。
大リーグと高校野球を比較するようなものだが、恋愛という縦糸と探偵ごっこの横糸が見事な綾を成した「裏窓」と違って、思春期らしいロマンスはサスペンスと並行して展開するだけなので、無駄とは言わないまでも青春ものらしい味付けの域を出ない。
或いは、携帯電話など進歩した技術を活用して行動範囲を広げたのも良し悪しで、モースの車に仕掛けをする場面など主人公たちが無用に大騒ぎしている印象を強めてしまっている。モースに脅迫された後サラ嬢の活躍がすっかりなくなってしまうのも芸がない。
といった具合に、脚本は詰めが甘くて物足りないものの、監督D・J・カルーソーが妙に凝らずに正攻法のサスペンス醸成に努めているのが奏功して、結構ヒヤヒヤさせられる。平均的な職業監督と判断して来た彼の演出の中では上出来の部類である。
田舎も怖いよという教訓スリラー。
この記事へのコメント
「裏窓」の盗作だと訴訟も起こされたようですが、盗作というよりはパロディに近い感じですね。
無粋な管財人が訴訟したようですね。
余りに大きな借用は盗作と言われても仕方がないわけですが、総合芸術ということもあって、文学や音楽と違って監督が訴訟するということは殆どないですね。
しかし、この作品が作られたことにより50年以上も前の「裏窓」からの収益は減るどころか、増えるのではないかと思われるので、法的問題以前に、原告には経済観念が浅いような気さえします。尤も、勝とうが負けようが「裏窓」側には宣伝効果はありますね。