映画評「フォーガットン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年アメリカ映画 監督ジョゼフ・ルーベン
ネタバレあり

インチキ臭い「パーフェクト・ストレンジャー」より<とんでもない映画>と聞いていたのでどんなものかと思って観始めたが、構成的に前出作品よりずっとまともである。

14か月前に他の子供たちと一緒に飛行機事故で一人息子を失った主婦ジュリアン・ムーアがある日息子の映った写真が消え、他日思い出の詰まったビデオから映像は消え、その他の遺品も全て失くなり、夫アンソニー・エドワーズや精神科医ゲイリー・シニーズに「息子は最初からいない」と主張されてしまう。

前半は「フライトプラン」の元ネタになった「バニー・レークは行方不明」のヴァリエーション。「フライトプラン」と違って巧妙なのは「バニー・レーク」も本作も事前に子供の存在を実像として示さないことである。実像を出してしまえば彼女の幻想を疑う者などいなくなるだろう。尤も「シックス・センス」以降の作品であるが故に額面通りに観る者は最初からいないとも想像され、結果に差は出ないかもしれないが、サスペンス映画の構成の仕方として道理に適っている。この手の作品はこういうところを軽視すべきではない。

さて、ヒロインは息子と同じ飛行機に乗った少女の父親ドミニク・ウェストから強引に娘の記憶を呼び戻させて味方に付け、何故か追って来る国家安全保障局から逃走を続けるうちに、陰謀を巡らす<とんでもない>者と接近遭遇する。

3年以上前に公開された作品なので完全ネタばれしてしまうが、その者とは宇宙人である。通常のサスペンス映画と決めつけると「なーんだ」ということになるが、本作が何を描きたかったということを考えると、さほど肩すかしを食らうには及ばない。
 本作が描きたかったのは母親の強い愛情であり、その強さを測る映画的趣向が宇宙人の馬鹿げた【親子断絶実験】という次第。陰謀者が宇宙人ということ以上にその目的が噴飯ものなのでがぐっと世評を下げる要因となったと思われるが、それまで築いてきたことを全てパーにする【夢落ち】などに比べれば罪はなく、テーマを打ち出す手段として余りに安易だったというに過ぎない。

これも9・11以降アメリカ映画を蔓延している家族再生病の一つかな。

この記事へのコメント

2008年12月09日 18:33
こんにちは。

この作品には僕は冗談レヴューでかえしました。
この馬鹿レヴューに対するコメントの数は、僕のレヴューの中で、最高ポイントを記録しています。
あまり、嬉しくないけどさ(笑)
オカピー
2008年12月10日 00:27
kimion20002000さん、こんばんば。

>コメントの数・・・最高ポイント
出来の悪い記事に限ってアクセスが多いという僕の悩みに似ていますかね(笑)、いや本当に。
2008年12月13日 00:54
こんばんは。
>「パーフェクト・ストレンジャー」より<とんでもない映画>
そんな意見があるとは知りませんでした。
映画の見方が根本的に違うのでしょうか。
悲しい現実ですね。
オカピー
2008年12月13日 02:06
hashさん、こんばんは。

>映画の見方
hashさんも恐らく、映画の構成ということに注視して見られていると思いますが、構成という見地においては「パーフェクト・ストレンジャー」「フライトプラン」は勿論、「シックス・センス」よりまともです。

が、一般的には映画内部における宇宙人の馬鹿騒動というところに集中してしまうんでしょう。馬鹿らしいことは僕も認めますが、それなら「シックス・センス」のトリックはどうなのかと僕は彼らに問いたいですね。
豆酢
2008年12月13日 11:44
なるほど、プロフェッサーが「シックス・センス」の名前を出されていた理由が分かりました。

>陰謀者が宇宙人ということ以上にその目的が噴飯ものなのでがぐっと世評を下げる要因となったと

ええ、世間一般のレビューの非難点も、ここに集中します。もう少しましなオチはなかったのかとも思いますが、映画としての構成は定石どおりと言え、そんなに破綻したものでもなかったですね。
むしろ「シックス・センス」の禁じ手は、かの「アクロ●ド殺し」同様、“騙された!!”感が強い(笑)。ただ、「シックス・センス」は騙し方が上手かったのと、“一番最初にやったモン勝ち”の利点を有効に活用していたのでしょうね。
オカピー
2008年12月14日 00:04
豆酢さん、こんばんは。

まあそういうことです(笑)。
たまたまこの手の作品が続きましてね。

本作の場合明かされたネタがひどかったが構成はオーソドックスで、「パーフェクト・ストレンジャー」が余りにも下手くそな「アクロ●ド殺し」だったのに比べれば大分ましじゃよ、と思った次第。

>「シックス・センス」
僕のその意見に賛成で、特に“一番最初にやったモン勝ち”という意味においては評価しております。
しかし、それがサスペンス映画の文法を壊してしまって、その後「シークレット・ウィンドウ」といったまがいものが生まれるなど、悪影響を生んだ作品として許し難いところがあるんですよ。観客もサスペンス映画の客観ショットを全く信じなくなったでしょ?
日本経済のバブル崩壊より罪が大きいとさえ思いますです(笑)。

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