映画評「沈黙の激突」

☆★(3点/10点満点中)
2006年アメリカ=ルーマニア映画 監督ミヒャエル・コイシュ
ネタバレあり

またまた出ましたスティーヴン・シーガル(セガール)のアクション(ビデオ映画)。

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考えてみると、漫画的なSFの要素を多分に持つようになってからシーガルのアクションはつまらなくなったようだが、実は彼の作品には良い部分が結構ある。
 まず直線的な作りである。入り組んだ内容が作れないからと言えばそれまでだが、ややこしく作って独善を極めるよりは余程良いし、本作の場合は50年前の映画でも観るようにきちんとタイトルから始まり、そこから物語へと入っていくという感じの良さ。そのせいかシーガル主演作品のワーストと酷評されている本作も前回観た「沈黙のステルス」より楽しんだ。しかし、<楽しんだ>のであって<楽しめた>のではない。

軍の上級将校シーガルが仕込む間もなく新しい部下三名を何者かに惨殺され、重用している曹長デーヴィッド・ケネディーと共に犯人探しを始め、軍に所属する化学兵器研究者の美人リサ・ラヴブランドの協力で、彼女たちが開発した新薬が人間を無敵の超人に変えることを知り、上水道への薬品ばらまきを計画する彼女の共同研究者アダム・クロースデルの殺人マシーン団と対決することになる。

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シーガルとコンビを組む主筆脚本家ジョー・ハルピンは「ステルス」同様肝心なところが抜けていて、軍が自ら開発した兵器を自ら収拾するような馬鹿げたお話になっている。そもそも人物関係が全く不透明で、美人科学者は良いとしても、クロースデルをよく知る刑事や軍のお偉方の立場が全く曖昧、最終的にシーガル一派に協力する形にして適当に終わらせた感じである。

さらに、一味が上水道に薬品を流してしまった後シーガル・グループが動き出すというのも映画的に間が抜けた構成で、ハルピン氏には観客にサスペンスを感じさせる気など全くなささそうだ。その事実を知ったリサ嬢が水道局に連絡しないのも全く変である。世の中にはアクションだけ観ていれば良いという殊勝な方もいるかもしれないが、一般的にはこれでは受けまい。

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