映画評「ワンダー・ボーイズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2000年アメリカ映画 監督カーティス・ハンスン
ネタバレあり

極めて安定した力があり、かつ、落ち着いた作風の監督としてカーティス・ハンスンを僕は高く評価しているが、多少旧作ながら今日まで観ることが出来なかった本作もしっかり作っている。

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かつて神童(ワンダー・ボーイ)と言われ傑作を発表したこともある文学教授マイケル・ダグラスは近年手詰まり。妻に出て行かれ、文学部長リチャード・トーマスの妻である学長フランシス・マクドーマンドと不倫の末に彼女の妊娠を知らされる。
 折しも大学は文学者の祭り“ワードフェスト”の開催が迫り、学長の家で行われるパーティーに彼の新作を心待ちにしている編集者ロバート・ダウニー・ジュニアと共に参加するが、家主のいない間にダグラスを噛んだ飼い犬を射殺し、マリリン・モンローの着たコートを掠めてしまった才能ある教え子トビー・マグワイアを、学長夫婦や警察の目から隠すことになって一緒に行動、彼の天才的な嘘に振り回されるうちに、ダウニーを含めた各々の抱える問題が顕在化してくる。

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ダグラス扮する作家が紆余曲折の末に教授職など種々なものを失う代わりに同時にフランシスと子供を得て自己再生する、というお話の構造はニューシネマ以降の作品としてはさほど珍しいものではないが、死んだ犬や盗んだコートの顛末、車の持ち主を巡る騒動、主人公が書きためた膨大な原稿の吹き飛ばされる事件等<紆余曲折>と一からげにまとめられる挿話が狂騒の中にペーソスを漂わせなかなか宜しい。

夜に狂騒が始まる辺りはジャン・ルノワールの傑作「ゲームの規則」を思い出させ、同作に匹敵するとは言わないまでも描写の力強さがあり、そのせいか作家の再生までの物語であると同時に案外少人数の群像劇ではないのか、という気がしないでもない。

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ハンスンはダグラスによるナレーション(ナラタージュ)という21世紀的手法を別にすると正攻法にがっちり展開、主人公の再生への道はフランシスの妊娠の発覚から始まったのに違いないから、最後に彼女が連れてくる赤ん坊が男児なら3人目のワンダー・ボーイ(神童ならぬ奇跡の子)と思えてくる余韻を漂わす。

役者として余り買っていないダグラスも本作では好調。

歴史は夜作られる、か。

この記事へのコメント

2008年12月06日 08:48
えらく出遅れて今頃TB&コメント
させていただきます。
何せ例のアレが明日なもんで~♪
きょうはこれからそのリハーサル。
うまくクリアできるか、気もそぞろ。
お天気までも本日から崩れて
まいりました~アハハハ~

朝方、リー・タマホリなる妙ちくりんな
方のお作りになった「ザ・ワイルド」を
鑑賞折にあらためてハリウッドは動物を
うまく演技させるな~と感心しきり。
本作でもあの白内障みたいなワンコの挿話も
巧みでしたよね~~。

>役者として余り買っていないダグラスも

彼、肩のチカラがほど良く抜けてて
よかったでしょ。
ま、周りがダウニーJrやマクガイア、
マクドーマンドらクセ者達者連中ばかり
でしたから返ってそれが幸いしたかな
オカピー
2008年12月07日 01:35
viva jijiさん、こんばんは。

>リハーサル
大変そうですねえ。
カラオケとは訳が違いますからねえ。

>「ザ・ワイルド」
その昔☆☆★を付けたらしいですが、全く記憶ないです、この作品。
で、面白かったですか?(笑)
>動物をうまく演技させるな~
作品全体の出来不出来に拘らず、伝統的に上手いですね。

>ダグラス
本当に良い感じに演技していました。
周囲の演技者とのアンサンブルという要素もあったかもしれませんね。
とにかく好演でした。

ご健闘をお祈り申し上げます。

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    Excerpt: こういう何の変哲もないけれど、 何とも言えない人生の悲哀なんぞ 時おり含んだ台詞や思わずクスッと してしまうシーンなんかある映画を 観せられると、もう・・・・ 「叫び出したくなるー!」 だから、映画.. Weblog: 映画と暮らす、日々に暮らす。 racked: 2008-12-06 08:23