映画評「銀色のシーズン」
☆☆★(5点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・羽住英一郎
ネタバレあり
「海猿」シリーズの羽住英一郎監督が冬山を舞台に作り上げた青春ドラマ。内容は推して知るべしだが、一通り説明をば。
舞台は恐らく架空の桃山町(和歌山県に2005年まで同名の町があったが関係はないはず)。台詞から北海道でないのは明らかなので、撮影の行われた長野県のつもりで観ていた。
雪で作られた教会を呼び物にして町起こしに躍起になっている桃山町民の悩みの種は、モーグルの元人気選手・瑛太をリーダー的存在とする雪山何でも屋三人衆。稼ぎがないと当たり屋をやるなどスキー場で傍若無人に振る舞うので客が遠のくことを恐れている。
何故町が青年を排斥しないかと言えば、町民の過度の期待が彼に重傷を負わせた原因と思い込んでいるからで、腫れ物に触るようにおずおずと彼が復帰するのを待つうちに怪我より二年の月日が経っている、という設定である。
その彼が教会で挙式する第1号カップルの花嫁・田中麗奈がスキーが全くできないのに付け込んで高額な授業料を取ろうとするのだが、あろうことか三人組の暴挙が原因で教会が壊れてしまう一方で、新郎が半年前に死んでいることも判明。
この瞬間に作品の狙いが青年の立ち直りにあることは明確になり、「全てが中途半端だった」と反省しているわけだから彼がジャンプに失敗した後完走すること、怒りは期待の裏返しであるから最初に拍手をするのが敵対する救助隊の杉本哲太であることなど、全てこちらの予測通りに進んでくれる。
僕はそれはそれで構わないと思う。問題は、一連の場面が余りに気を持たせすぎて滑稽にしか見えないことだ。
帰京しようとしてる麗奈嬢が戻ってくるのを待っているようにスタート台に立った瑛太選手が一向にスタートしない。彼女が彼の出走に間に合うかどうかというサスペンスを感じさせる代わりに、彼が彼女に合わせるようにスタートするように見えてしまうのは演出の呼吸が悪いからである。
或いは彼が立ち上がるまでも異様に長い。ドラマツルギー的に完走するのが解っている以上それほど気を持たせる必要はないのだが、作者側はこの映画を見る観客の大多数にはその予測がつかないと判断したのだろう。とにかく、本来一番盛り上がるべきシークェンスが数多く映画を見てきた人間には一番馬鹿馬鹿しいものになったことは否めない。
田中麗奈のヒロイン像も、花婿がいないのに挙式を準備させ、挙句に「(教会が)壊されて良かった」では出鱈目というしかないだろう。
後半は失速気味だが、それなりに楽しめた前半に免じてとりあえず水準とする。
2008年日本映画 監督・羽住英一郎
ネタバレあり
「海猿」シリーズの羽住英一郎監督が冬山を舞台に作り上げた青春ドラマ。内容は推して知るべしだが、一通り説明をば。
舞台は恐らく架空の桃山町(和歌山県に2005年まで同名の町があったが関係はないはず)。台詞から北海道でないのは明らかなので、撮影の行われた長野県のつもりで観ていた。
雪で作られた教会を呼び物にして町起こしに躍起になっている桃山町民の悩みの種は、モーグルの元人気選手・瑛太をリーダー的存在とする雪山何でも屋三人衆。稼ぎがないと当たり屋をやるなどスキー場で傍若無人に振る舞うので客が遠のくことを恐れている。
何故町が青年を排斥しないかと言えば、町民の過度の期待が彼に重傷を負わせた原因と思い込んでいるからで、腫れ物に触るようにおずおずと彼が復帰するのを待つうちに怪我より二年の月日が経っている、という設定である。
その彼が教会で挙式する第1号カップルの花嫁・田中麗奈がスキーが全くできないのに付け込んで高額な授業料を取ろうとするのだが、あろうことか三人組の暴挙が原因で教会が壊れてしまう一方で、新郎が半年前に死んでいることも判明。
この瞬間に作品の狙いが青年の立ち直りにあることは明確になり、「全てが中途半端だった」と反省しているわけだから彼がジャンプに失敗した後完走すること、怒りは期待の裏返しであるから最初に拍手をするのが敵対する救助隊の杉本哲太であることなど、全てこちらの予測通りに進んでくれる。
僕はそれはそれで構わないと思う。問題は、一連の場面が余りに気を持たせすぎて滑稽にしか見えないことだ。
帰京しようとしてる麗奈嬢が戻ってくるのを待っているようにスタート台に立った瑛太選手が一向にスタートしない。彼女が彼の出走に間に合うかどうかというサスペンスを感じさせる代わりに、彼が彼女に合わせるようにスタートするように見えてしまうのは演出の呼吸が悪いからである。
或いは彼が立ち上がるまでも異様に長い。ドラマツルギー的に完走するのが解っている以上それほど気を持たせる必要はないのだが、作者側はこの映画を見る観客の大多数にはその予測がつかないと判断したのだろう。とにかく、本来一番盛り上がるべきシークェンスが数多く映画を見てきた人間には一番馬鹿馬鹿しいものになったことは否めない。
田中麗奈のヒロイン像も、花婿がいないのに挙式を準備させ、挙句に「(教会が)壊されて良かった」では出鱈目というしかないだろう。
後半は失速気味だが、それなりに楽しめた前半に免じてとりあえず水準とする。
この記事へのコメント
これ以前は関西落語、戦前のレコードでの「宿替え」ーー東京では「粗忽の釘」しか聞いてなかった。渡瀬恒彦の声にふらふら)だったので、青木崇高さんにつられて、帰京してからほとんど最終日に映画館で見ました。楽しみにしていたスキーが
モーグルだったのには少しがっかりしました
ダウンヒルをとるのは大変だったでしょうが
瑛太は「峰君」イメージとあまりかわらなかった
2度見る気はしない映画です
>青木崇高さん
「ちりとてちん」はその時間帯たまたま居間にいると家族と一緒に観た程度ですが、どうもどこかで見たことがあると思いました。
あの彼でしたか。
若い役者の名前を憶えるのも大変になってきました。
瑛太は昨年憶えたところ。
>モーグルだったのには少しがっかり
僕もモーグルよりアルペンが好きなので、残念でしたね。
ダウンヒルの場面は、もう少し工夫が必要かなと思って観ておりました。
>2度見る気はしない
今の日本映画の水準ですと作り込んでいないので、一度は何とか観てしまえても二度の鑑賞に堪える作品は少ないですね。