映画評「傷だらけの栄光」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1956年アメリカ映画 監督ロバート・ワイズ
ネタバレあり

本年9月にポール・ニューマンが逝去した。83歳だからアメリカ人男性としては長生きの部類だが、僕が映画ファンになった頃アラン・ドロン、スティーヴ・マックィーンに次いで人気のあった男優だからやはり寂しいものがある。遅ればせながら出世作の本作をもって追悼する次第。

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ロッキーという名のプロボクサーのお話と言っても「ロッキー」にあらで、実在したミドル級ボクサー、ロッキー・グラジアーノ(本名ロッキー・バルベラ)の伝記映画である。監督はこれ以前に「罠」という秀作ボクシング映画を作ったこともあるロバート・ワイズ。編集者出身の彼ならではの切れの良い編集が本作をスポーツ映画史上に残る秀作としたと言っても過言ではない。

ボクサー崩れの父親に反抗して不良の道に入っていく若きロッキーを捉えるプロローグ。ここで早くも引き込まれる。警官二人に補導されかかり「10年後には刑務所行きさ」という声から逃げるように走り去る少年時代の後ろ姿を捉えた後、ニューマンに成長したロッキーが施設から脱走してこちらに向ってくるというショットが続き(下画像参照)、その呼吸の良さとスピードに唸ったのである。
 このスピード感はその後も維持され、施設から少年院、刑務所へと落ちるところまで落ちていく様が怒涛の勢いで進行するが、新人だったニューマンの反応の良い演技がそれを支えていると言っても良いだろう。

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軍隊を脱走した後小銭を稼ぐ為にバイト的に始めたボクシングで才能を発揮、脱走の罪で1年間服役した後本格的にジムに所属して出世街道をまっしぐら、ユダヤ女性のノーマ(ピア・アンジェリ)と結ばれて娘を儲け益々やる気になるが、好事魔多し、刑務所時代の知人が持ちかけた八百長試合を拒んだのに名前を言わなかった為にプロ免許が剥奪されてまたぐれそうになり、法律の違う為に出場できるシカゴでのタイトルマッチからも逃げ出してしまうが、長年の知己であるソーダ屋の説教で思い返して翌日の試合に臨む。

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ありがちと言えばありがちな役柄のノーマの扱いも良くて凡庸ではない。元来暴力嫌いだった彼女が夫の為にボクシングを受け入れ、「逃避している過去は消えない」と夫にけしかけるなどして努力する様子がなかなか繊細に描かれ観客の胸を熱くするのだ。ハリウッドに引っ張られて約2年、些かぎこちない英語を話すピア・アンジェリの清純な美しさもプラスに働いている。

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ボクシングの試合模様は的確なカメラワークと編集で魅了。アカデミー賞を受賞したジョゼフ・ルッテンバーグの撮影は、ニューヨーク・ロケの部分が特に素晴らしい。

父親への反発と愛されない悲しみを基調としたニューマンの演技も好調。ふてぶてしさとユーモアの入り混じった性格俳優としての面白味は本作からスタートするのだ。
 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

この記事へのコメント

2008年12月06日 23:46
こんばんは。この映画、先日、BSかどこかでやっていましたね。
うちの相方が「『傷だらけの栄光』、TVでやったんだ?!観たかったのに!」と録画し忘れたことを嘆いていました。
こんな良い作品だったと知っていたら、チラ見で終わりにせず観賞すれば良かったとちょっと後悔・・・。
今度、レンタルで探してみたいと思います。

ポール・ニューマンは世代の割には母の影響でかなり多くの作品を観た記憶があります。その中でも、子供の時にTV放映で観て気に入ったのが「暴力脱獄」と「評決」。
前者の卵を何十個も食べるシーンは最高でした。

もちろん「スティング」「明日に向かって撃て」も大好きですが、残念ながらこの2本を観てファンになったのは、ロバート・レッドフォードの方で、ちなみにレッドフォードは小学生の時からファンです☆
オカピー
2008年12月07日 02:28
RAYさん、こんばんは。

NHK-BS2でございます。^^
恐らく追悼的な意味で特集が組まれています(継続中)。
僕はもう一本愛妻ジョアン・ウッドワードと共演した「レーサー」を観るつもりです。全部再鑑賞ですが、その中でもこれは久しぶりなので。

>こんな良い作品だったと知っていたら
あくまで僕の評価ですけどね。^^;
内容以上に、序盤からの展開のスピード感に注目して観て戴きたい作品です。
後年の「ロッキー」は本作から少なからぬ影響を受けているようです。

>「暴力脱獄」
再鑑賞したいなあ、これも。
「評決」はニューマン主演の作品でも完成度が高いと思います。「明日に向って撃て!」以降、彼の作品は大体映画館で観ましたよ。

>レッドフォード
そう言えば、ニューマンは監督業で先輩でしたね。結構良い作品を撮っていますよ。
レッドフォードは監督としてイーストウッドより高く評価しています。今一つ話題性には乏しい作品が多いのは残念ですが、腕前は保証しています。
arichanK
2008年12月08日 03:52
ポール ニューマン、アラン ドロン、の次の私のあこがれ
試合のあと、美男がひどい顔で帰ってくるところなど思い出しました
ロッキー・グラジアーノ自身が何かのインタビューでこの映画のことを聞かれて「ああ、あのハンサムボーイがやったのね」というのもTVで見ました。やはり、拳闘は野蛮なスポーツ。なぜ今でもあるのだろう
オカピー
2008年12月09日 01:45
arichanKさん、こんばんは。

>美男がひどい顔で帰ってくるところなど
子供が出来てからのショットを積み重ねる場面でしょう。
姿を見せる度に怪我がひどくなり、その都度母親が「パパよ、恐がらなくても良いの」と怯えて泣く子供を諭した後、遂に子供が「パパよ、恐がらなくても良いのよ」と余りのひどさに怯える母親に話す、という傑作な落ちがついていました。

>拳闘は野蛮なスポーツ
やるほうは貧しさを克服する為(今は必ずしもそうではありませんが)、
観る方は戦争などに対する代償行為、ではないでしょうか。

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    Excerpt: (1956/ロバート・ワイズ監督/ポール・ニューマン、ピア・アンジェリ、アイリーン・ヘッカート、サル・ミネオ/113分) Weblog: テアトル十瑠 racked: 2008-12-08 08:09