映画評「刑事ジョン・ブック/目撃者」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1985年アメリカ映画 監督ピーター・ウィアー
ネタバレあり
オーストラリアで秀作を連発したピーター・ウィアー監督のアメリカ進出第1作。東京の名画座で観たのも早いものでもう四半世紀近くも前になる。「シェーン」現代版の趣あり。
本作を語る時欠かせないのはアーミッシュという近代文明を拒絶しているキリスト教宗派の存在で、プロローグで彼らの生活の一端が紹介されてから映画は本番に入っていく。
フィラデルフィア駅構内で私服刑事が殺され、初めて村の外に出たアーミッシュの少年ルーカス・ハースが目撃する。担当刑事ハリスン・フォード(タイトルになっているジョン・ブックですな)が少年を証人に真犯人を追ううちに麻薬捜査課刑事ダニー・グローヴァ-の犯行と判り、副部長ジョセフ・ソマーに報告するが、その直後に狙撃されて重傷を負った為に、少年の母親ケリー・マクギリスに案内されて辿り着いたアーミッシュの村に身を潜め、汚職一派を告発する機会を伺う。
中盤はペンシルヴェニア州にあるアーミッシュの村の生活風景に終始するので、刑事サスペンスという前提で見続けると肩すかしを食らうが、本作の面白さは寧ろここにある。
彼らの生活はSF映画「オメガマン」の一派の如く近代物質文明(産業革命以降の発明品か?)を原則的に拒絶しているので、自動車、電気は言うまでもなく、電話もない。ブック刑事を村に探し出そうと躍起になる汚職グループにとってこの現実が大きな障壁となる。電話もなく1万5千戸のうち3分の1は同じ姓なので、一々探し出すことになって日が暮れる、というわけである。
こうした牧歌的な生活と戒律を厳格に順守する村人の様子が大変興味深く、映画に大きな魅力をもたらす。ブックは数世紀前にタイプスリップしたようなこの村においては平和と規律を乱す危険要素であるが、異文化の接触が生み出す様々な感情が後半の基調となっていく。
その中にはブック刑事と彼を甲斐甲斐しく看護する未亡人ケリーの、余りにかけ離れた文化間故に決して実ることのない恋模様もある。村人が村の文化を素直に受けいける彼への警戒心を徐々に解いていく一方で、村を訪れる観光客の好奇心による出鱈目な行動に耐えられないのもまたアウトサイダーの彼なのだ。そこでの暴力沙汰が汚職一派に居場所を突き止められる結果を与えてしまう、という終盤の急展開もテーマに沿って違和感を与えない。
再び刑事サスペンスになる終盤は序盤の目撃場面同様になかなかタイトに処理され、見事に撃破した後村人に惜しまれて村を去っていく幕切れの味わいも捨てがたい。ウィアーさん、硬軟緩急いずれも鮮やかなもんです。
異文化交流編その①。その②は明日のお楽しみ。
1985年アメリカ映画 監督ピーター・ウィアー
ネタバレあり
オーストラリアで秀作を連発したピーター・ウィアー監督のアメリカ進出第1作。東京の名画座で観たのも早いものでもう四半世紀近くも前になる。「シェーン」現代版の趣あり。
本作を語る時欠かせないのはアーミッシュという近代文明を拒絶しているキリスト教宗派の存在で、プロローグで彼らの生活の一端が紹介されてから映画は本番に入っていく。
フィラデルフィア駅構内で私服刑事が殺され、初めて村の外に出たアーミッシュの少年ルーカス・ハースが目撃する。担当刑事ハリスン・フォード(タイトルになっているジョン・ブックですな)が少年を証人に真犯人を追ううちに麻薬捜査課刑事ダニー・グローヴァ-の犯行と判り、副部長ジョセフ・ソマーに報告するが、その直後に狙撃されて重傷を負った為に、少年の母親ケリー・マクギリスに案内されて辿り着いたアーミッシュの村に身を潜め、汚職一派を告発する機会を伺う。
中盤はペンシルヴェニア州にあるアーミッシュの村の生活風景に終始するので、刑事サスペンスという前提で見続けると肩すかしを食らうが、本作の面白さは寧ろここにある。
彼らの生活はSF映画「オメガマン」の一派の如く近代物質文明(産業革命以降の発明品か?)を原則的に拒絶しているので、自動車、電気は言うまでもなく、電話もない。ブック刑事を村に探し出そうと躍起になる汚職グループにとってこの現実が大きな障壁となる。電話もなく1万5千戸のうち3分の1は同じ姓なので、一々探し出すことになって日が暮れる、というわけである。
こうした牧歌的な生活と戒律を厳格に順守する村人の様子が大変興味深く、映画に大きな魅力をもたらす。ブックは数世紀前にタイプスリップしたようなこの村においては平和と規律を乱す危険要素であるが、異文化の接触が生み出す様々な感情が後半の基調となっていく。
その中にはブック刑事と彼を甲斐甲斐しく看護する未亡人ケリーの、余りにかけ離れた文化間故に決して実ることのない恋模様もある。村人が村の文化を素直に受けいける彼への警戒心を徐々に解いていく一方で、村を訪れる観光客の好奇心による出鱈目な行動に耐えられないのもまたアウトサイダーの彼なのだ。そこでの暴力沙汰が汚職一派に居場所を突き止められる結果を与えてしまう、という終盤の急展開もテーマに沿って違和感を与えない。
再び刑事サスペンスになる終盤は序盤の目撃場面同様になかなかタイトに処理され、見事に撃破した後村人に惜しまれて村を去っていく幕切れの味わいも捨てがたい。ウィアーさん、硬軟緩急いずれも鮮やかなもんです。
異文化交流編その①。その②は明日のお楽しみ。



この記事へのコメント
というのは先日、WOWOWで再観賞(もう4度目か5度目です)して、改めてこの映画の良さに感動しまして、WOWOWで放映なので絶対、オカピーさんがレビューをアップされるのでは?と秘かに期待しておりました。
わたし的には8点ではなくて9点献上です。
ピーター・ウィアーの作品では「危険な年」とこの作品が一番好きです。
「シェーン」現代版・・・というご意見にも1票で!
静かなる秀作という趣がいいですね。
少しうっすらと幕がかかったような柔らかい色使いの映像もこの監督作品の魅力かもしれません。絵画でいうとユトリロみたいな印象。
余談ですがこの映画、中学か高校の時に初めて観たんですが、当事、イギリス人の先生に英会話を習っていて、この映画について先生に良さを伝えようとしたのに英語タイトルが分からなくて、とにかく必死にストーリーを説明したら
「その映画は”Witness”だね」と名答が。
お蔭でこの単語を一生忘れずに覚えるきっかけになりました 笑
>WOWOWで放映なので絶対
とも言い切れないんですよ。^^
二月は例年アカデミー賞特集が組まれる為か、未見の作品が少なく、スケジュールが空いたところへ折良く放映されたという次第。
>「危険な年」
僕もそう思いますね。^^)v
これも放送があるのですが、こちらは観られるかな。
ちょっと微妙。
>9点献上
でも良いと思いましたし、実際9点に近い☆4つとご理解ください。
>イギリス人の先生に英会話を習っていて
ほーっ。
僕はロシア人の教師相手に「モスクワを涙を信じない」というソ連映画についてロシア語で話したことがあります。その時単語の順番を訂正されたのを思い出しました。ロシア語は語順が変わっても意味が解るので、意思疎通には問題ないのですが。以下の如し。
(誤)Москва не верит слезам
(正)Москва слезам не верит