映画評「日曜はダメよ」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1960年ギリシャ映画 監督ジュールス・ダッシン
ネタバレあり
ジュールス・ダッシンは「裸の町」「街の野獣」といったセミ・ドキュメンタリーの秀作を発表した後悪名高い赤狩りにより1953年にアメリカを去った。ジョン・ヒューストン、ジョセフ・ロージーと並んでアメリカ映画にとって大損失だったことはこの後のフランスやギリシャで作った色々なタイプに渡る秀作群を見れば解る。その代表的な一編。
古代ギリシャを専門とするアメリカ人学者ダッシンが、町で人気の美女メルナ・メルクーリが娼婦なのに日曜ごとにギリシャ悲劇を観劇すると知って興味を惹かれ、何でもハッピーエンドにしてしまう出鱈目さに一発奮起して彼女を本物の教養人に仕立てようと奮闘努力。
彼女の独立営業が気に入らない売春組織のボスがこれを利用して排斥若しくは取り込もうと企むが、結局彼女は二人がつるんでいたことに怒って娼婦たちを集めて蜂起、ボスから安いアパート家賃を引き出し日曜日休業の権利まで得る。
という艶笑喜劇だが、さすがに才人ダッシンだけにエロ気を全く使わずに最後まで見せ切る。
本作の面白さの基本はギリシャ古典ネタの活用である。英国に渡ったウッディー・アレンが「タロットカード殺人事件」で様々な英国絡みの文化をパロディー化して見せたように、ダッシンも才気煥発で、にやにやさせてくれる。
まずダッシン扮する学者先生の名前がホーマー・スレース。ご存知のように日本でホメロスと呼ばれるギリシャの大詩人は英語ではホーマーと呼ばれている。スレースは古代ギリシャのトラキア(野蛮人=異国人を暗示していると思われる)。
或いはインテリが品のない女性を自分の思うように変えようとするのは「マイ・フェア・レディ」の原型となったバーナード・ショーの「ピグマリオン」をベースにしているのは間違いない。ピグマリオンはギリシャ神話の登場人物である。
ヒロインがギリシャ悲劇をハッピーエンドと理解するのもアリストテレスの「詩学」の定義を逆に行く可笑しさで、彼女がこの哲学者を女性蔑視者と嫌悪しているのも愉快。
眼目はアメリカ人の主人公には奇行としか映らないカルチャーギャップの描出で、最終的には異文化との接触に際しては「郷に入っては郷に従え」という結論をもって映画はめでたく終わり、観光地で自国流儀を発揮するアメリカ人をやんわりと風刺して見せる。
演技者としてのダッシンもなかなか達者だが、やはり後に正式に結婚する内妻メルナ・メルクーリの豪快な演技が魅力的。カンヌ映画祭で女優賞を獲っている。有名な主題歌もゴキゲンです。
とりあえず僕のブログは日曜も休みません。ついでながら、鼠も殺しません。(笑)
1960年ギリシャ映画 監督ジュールス・ダッシン
ネタバレあり
ジュールス・ダッシンは「裸の町」「街の野獣」といったセミ・ドキュメンタリーの秀作を発表した後悪名高い赤狩りにより1953年にアメリカを去った。ジョン・ヒューストン、ジョセフ・ロージーと並んでアメリカ映画にとって大損失だったことはこの後のフランスやギリシャで作った色々なタイプに渡る秀作群を見れば解る。その代表的な一編。
古代ギリシャを専門とするアメリカ人学者ダッシンが、町で人気の美女メルナ・メルクーリが娼婦なのに日曜ごとにギリシャ悲劇を観劇すると知って興味を惹かれ、何でもハッピーエンドにしてしまう出鱈目さに一発奮起して彼女を本物の教養人に仕立てようと奮闘努力。
彼女の独立営業が気に入らない売春組織のボスがこれを利用して排斥若しくは取り込もうと企むが、結局彼女は二人がつるんでいたことに怒って娼婦たちを集めて蜂起、ボスから安いアパート家賃を引き出し日曜日休業の権利まで得る。
という艶笑喜劇だが、さすがに才人ダッシンだけにエロ気を全く使わずに最後まで見せ切る。
本作の面白さの基本はギリシャ古典ネタの活用である。英国に渡ったウッディー・アレンが「タロットカード殺人事件」で様々な英国絡みの文化をパロディー化して見せたように、ダッシンも才気煥発で、にやにやさせてくれる。
まずダッシン扮する学者先生の名前がホーマー・スレース。ご存知のように日本でホメロスと呼ばれるギリシャの大詩人は英語ではホーマーと呼ばれている。スレースは古代ギリシャのトラキア(野蛮人=異国人を暗示していると思われる)。
或いはインテリが品のない女性を自分の思うように変えようとするのは「マイ・フェア・レディ」の原型となったバーナード・ショーの「ピグマリオン」をベースにしているのは間違いない。ピグマリオンはギリシャ神話の登場人物である。
ヒロインがギリシャ悲劇をハッピーエンドと理解するのもアリストテレスの「詩学」の定義を逆に行く可笑しさで、彼女がこの哲学者を女性蔑視者と嫌悪しているのも愉快。
眼目はアメリカ人の主人公には奇行としか映らないカルチャーギャップの描出で、最終的には異文化との接触に際しては「郷に入っては郷に従え」という結論をもって映画はめでたく終わり、観光地で自国流儀を発揮するアメリカ人をやんわりと風刺して見せる。
演技者としてのダッシンもなかなか達者だが、やはり後に正式に結婚する内妻メルナ・メルクーリの豪快な演技が魅力的。カンヌ映画祭で女優賞を獲っている。有名な主題歌もゴキゲンです。
とりあえず僕のブログは日曜も休みません。ついでながら、鼠も殺しません。(笑)



この記事へのコメント
古典文学との関連についても非常に勉強になりました。“なるほど”にポチッさせていただきます。
>僕のブログは日曜も休みません。ついでながら、鼠も殺しません。(笑)
アハハ
>“なるほど”にポチッ
有難うございました。
励みになります。
>古典文学
ギリシャ古典劇独自の進行役コロスなど、まだまだあるのですが、余り言うとくどくなるので、やめました。
笑って戴き有難うございます。
古い映画に造詣がないとちょっと笑えませんね。^^
でもお話のほうはさっぱり覚えてませんから、観たのは相当に小さい頃だったと思います。じっくりと見てみたいです。
>観たのは相当に小さい頃だったと思います。
ティーンエイジャーと時に一度、それから20年くらい前に一度観ていますが、結構忘れていますね。
大人向けの内容であり、作り方ですから、お子様にはちょいと難しかったでしょう。だから忘れっちゃたんですよ、きっと。^^
主題歌(主題曲)は有名ですよね。見る前から知っていました。