映画評「ファウンテン 永遠につづく愛」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ダーレン・アロノフスキー
ネタバレあり

先週観た「ハーフェズ ペルシャの詩」は解り難くて困ったが、本作は難解というよりは誠に妙ちきりん。

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脳腫瘍を病んだ作家?の妻イジー(レイチェル・ワイズ)を治療する為に病理学者トミー(ヒュー・ジャックマン)が猿を実験台に懸命に研究を進め、南米産の古木から抽出した成分が細胞を若返らせることに気付くが、脳腫瘍治療効果はなさそうで成功を焦る。
 死に対する覚悟を決めた彼女は小説「ファウンテン(泉、起源)」を書き夫に読ませる。16世紀宗教裁判長の策謀に潰されそうなスペイン女王(レイチェル二役)の為に生命の樹を発見しようと躍起になる騎士トーマス(ジャックマン二役)の物語である。

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この二つの部分だけなら構成的にもすっきりするのだが、問題はものの本などが【未来】と解している部分のこの二つとの関連で、僕にはトミーの幻想のように思えるし、そう考えた方がすっきりする。本当に未来なんだろうか?

ここまでなら“些か幻想的な作品”くらいの印象で済んだのだが、丸坊主のジャックマンが胡坐を組んで宙に浮いている仏教的ムードが出てくる終盤はダーレン・アロノフスキーも遂にいかれちまったかと思えるほど奇妙な観念的映像のオンパレード、苦笑いするしかない。

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テーマは【愛と死を見つめて】といったところで、人類の始祖“アダムとイヴ”が選ばなかった【生命の樹】なる宗教的素材に関連付けて幻想場面を大々的に繰り広げ、妻の死を間際にした男が<妻の最期に際し何を成すべきか>気付くというお話になっている。その為に幻想を挟んでリスタートする構造に仕立てているようなのだが、大げさな騒動を経る割に常識的な結論で、「なぁんだ」という印象を覚える人も多いだろう。

言わば難病哲学映画です。

この記事へのコメント

シュエット
2009年03月12日 16:47
これは劇場公開はスルーした作品。
多分P様が書かれているような印象だなって思って、取ってつけたような、きっと<妙ちきりん>と思ったから。ピンポンでちょっとお邪魔しました。
この作品に似た映画でガイ・ピアース主演の「タイムマシン」ごときの妙ちきりんかなって思うわ。この映画が収拾つかなくなっていつの間にやらテーマがかわってきて訳分からん作品でしたけどね。
>丸坊主のジャックマンが胡坐を組んで宙に浮いている仏教的ムードが出てくる終盤
これ読んでいるだけで笑いがこみ上げてくる(ガハガハ!)
お疲れ様でした!
冷やかし訪問でゴメンなすって。
オカピー
2009年03月13日 03:11
シュエットさん、コメント有難うございます。

「タイムマシン」は言わば直球なので「つまらん」で済ませられますけどね、こちらはナックルですよ。うまく抜ければ空振りを取れるけれど、高めに抜けたらホームランボールでしょう。

>仏教的
ふーむ、ベースは【アダムとイヴ】だからキリスト教なのに、突然坊主頭で胡坐をかいたジャックマンが出てきた時には唖然としました。
作者が至って真面目だから厄介なんだ。(爆)
2009年03月14日 22:44
こんばんは。
奇妙な作品でしたね。
でも、意外にその辺が気に入りました。
>本当に未来なんだろうか?
私もあれは幻想だと思います。
オカピー
2009年03月15日 03:02
hashさん、こんばんは。

僕は途中から笑っちゃいましたよ。
映画館で観なくて良かったなあ。
真面目な場面で笑うのは恥ずかしいですから。^^

>幻想
そうですよね。
あれが未来だと話がちょいと繋がりまへん。^^;

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