映画評「この道は母へとつづく」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年ロシア映画 監督アンドレイ・クラフチュク
ネタバレあり
ロシア北方の孤児院にいる6歳の少年ワーニャ(コーリャ・スピリドノフ)がイタリア人夫婦の養子になることが内定するが、先に養子に出た少年の母親が孤児院から追い返された挙句に飛び降り自殺してしまうという事件が起きた為、自分もそうなっては困ると実の母親に会いたいと思い始める。
売春でお金を稼いでいる先輩の少女イルカ(オルガ・シュヴァロヴァ)にこっそり字を学び、眠っている院長から鍵を奪ってファイルから前にいた孤児院の情報のある紙片を抜き取り、少女と共に前の孤児院に向うが、少女が途中の駅で時計を盗んだらしい男に捕まってしまった為にワーニャは単独で向う羽目になる。養子縁組ブローカーの女性(マリヤ・クズネツォーヴァ)は取り戻すべく運転手(ニコライ・レウトフ)に先回りさせるが、運転手は人情にほだされて少年を解放する。
ロシア版「母を訪ねて三千里」と言えば当たらずとも遠からずだが、「題名のない子守唄」の母子の関係を逆にしたようだなと思いつつ観ていた。どちらも養子ビジネスという旧ソ連圏が現在抱えている社会問題を取り上げていて興味深く、本作にしても物語から想像されるよりずっと厳しいリアリズム基調で作られている。売春が暗示され暴力場面があり、社会派的な側面が色濃く漂う。
しかし、終幕部分になると途端にそれまでの描写の厳しさが消えて、運転手は人情を示すし、声だけの母親の扱いは児童ものらしく幻想的である。どちらが良い悪いという問題ではなく、首尾一貫しないのが残念なのだ。
細かな不満もあり、例えば少女が駅で捕まる挿話には伏線が欲しい。或いは、運転手が怪我をして治療を受ける病院で呼び出される看護婦の名前が母親と同じヴェーラなので、少年が母親に会う為にここを訪れてひと騒動が起こるのかと思ったらそんなこともない。作者の狙いが全く見えてこない迷シーン・・・と思ったが一晩のうちに考えが変わった。恐らく作者はこの場面で少年の母親をちらっと観客に見せようとしたのではないか(上の画像参照)。そうだとしたらなかなか茶目っ気がある。
母親の声に続く少年のナレーション(最近はヴォイス・オーヴァーとも言う)で少年が母親に無事引き取られ、その代わりに友人がイタリアに引き取られたことが婉曲的に解る幕切れは気持ちが良い。この気持ちの良さには中盤の布石が利いているという理由もある。
2005年ロシア映画 監督アンドレイ・クラフチュク
ネタバレあり
ロシア北方の孤児院にいる6歳の少年ワーニャ(コーリャ・スピリドノフ)がイタリア人夫婦の養子になることが内定するが、先に養子に出た少年の母親が孤児院から追い返された挙句に飛び降り自殺してしまうという事件が起きた為、自分もそうなっては困ると実の母親に会いたいと思い始める。
売春でお金を稼いでいる先輩の少女イルカ(オルガ・シュヴァロヴァ)にこっそり字を学び、眠っている院長から鍵を奪ってファイルから前にいた孤児院の情報のある紙片を抜き取り、少女と共に前の孤児院に向うが、少女が途中の駅で時計を盗んだらしい男に捕まってしまった為にワーニャは単独で向う羽目になる。養子縁組ブローカーの女性(マリヤ・クズネツォーヴァ)は取り戻すべく運転手(ニコライ・レウトフ)に先回りさせるが、運転手は人情にほだされて少年を解放する。
ロシア版「母を訪ねて三千里」と言えば当たらずとも遠からずだが、「題名のない子守唄」の母子の関係を逆にしたようだなと思いつつ観ていた。どちらも養子ビジネスという旧ソ連圏が現在抱えている社会問題を取り上げていて興味深く、本作にしても物語から想像されるよりずっと厳しいリアリズム基調で作られている。売春が暗示され暴力場面があり、社会派的な側面が色濃く漂う。
しかし、終幕部分になると途端にそれまでの描写の厳しさが消えて、運転手は人情を示すし、声だけの母親の扱いは児童ものらしく幻想的である。どちらが良い悪いという問題ではなく、首尾一貫しないのが残念なのだ。
細かな不満もあり、例えば少女が駅で捕まる挿話には伏線が欲しい。或いは、運転手が怪我をして治療を受ける病院で呼び出される看護婦の名前が母親と同じヴェーラなので、少年が母親に会う為にここを訪れてひと騒動が起こるのかと思ったらそんなこともない。作者の狙いが全く見えてこない迷シーン・・・と思ったが一晩のうちに考えが変わった。恐らく作者はこの場面で少年の母親をちらっと観客に見せようとしたのではないか(上の画像参照)。そうだとしたらなかなか茶目っ気がある。
母親の声に続く少年のナレーション(最近はヴォイス・オーヴァーとも言う)で少年が母親に無事引き取られ、その代わりに友人がイタリアに引き取られたことが婉曲的に解る幕切れは気持ちが良い。この気持ちの良さには中盤の布石が利いているという理由もある。



この記事へのコメント
>養子ビジネスという旧ソ連圏が現在抱えている社会問題
ソ連崩壊後の東欧諸国が抱える問題は、抗して映画を通して知る意外には、私たちには伝わってこないところもある。そういう意味でもこういう作品の公開の意義も大きいでしょうね。この間でずいぶんいわゆる東欧諸国の映画でずいぶんと彼等の社会状況の一端を見せてもらったと思います。
話は変わりますが「探偵<スルース>」リメイク版とあわせてWOWOWで放映されてましたね。ご覧になられました? 私は見たかった作品だけに早速に録画・鑑賞しました。いやぁ実に面白いしほとんど完璧! ローレンス・オリヴィエはさすが棚って思いました。リメイクは劇場鑑賞だけで再鑑賞したい気は起きないのでこちらはパスしましたが。
>「僕がいない場所」
ざっと読ませて貰いましたが、結末こそ違え何だか似たようなお話ですね。
旧東欧圏にはまだ西欧化未満の問題が多そうです。
>「探偵<スルース>」
大昔に観て以来ご無沙汰ですが、一応リメイクと一緒に録画しましたです。^^
で、リメイクは既に鑑賞済みで、ご本家は今日か明日か観られるのではないかと思います。
最初観た時は腰を抜かさんばかりに楽しみました。キャスト表も観ていなかったので、すっかり騙されましたしね。
リメイク・・・うーむ、一回観れば十分だべし。(笑)
ローレンス・オリヴィエはさすが棚って思いました。
さすが棚→さすがだな です。
いつものことで、翻訳済みかと思いますが、ありゃ!と気がつきました次第で…。(ジム連絡にて返信不要)
18番地のおじいさんのベルを鳴らすところまでみれたけど、寝ていた息子達に泣かれて寝かしつけている間に終わってしまったから
ネタバレしてくれてありがとう!
あぁ、良かった…
ちゃんと会えたのね
いっしょに住めるのね
ネタバレして誉められたのは初めてです(笑)。
はっきりと抱き合うような場面はないのですけれど、ハッピーエンドでした。