映画評「探偵<スルース>」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1972年イギリス映画 監督ジョゼフ・L・マンキウィッツ
ネタバレあり
アンソニー・シェイファーの原作戯曲が発表されて3年後にベテランのジョゼフ・L・マンキウィッツが映画化した異色ミステリー。
“第一幕”のお話はリメイクと基本的に同じなのでそちらを参考にして下さい。
リメイクでマイケル・ケインが演じたミステリー作家アンドリュー・ワイクにローレンス・オリヴィエ、ティンドルに若きケインが扮して丁々発止の演技合戦を本編同様に繰り広げて見応え十分、階級対立を意識した洒落たお喋りの応酬が大変面白い。
中盤現れる刑事はリメイクとは違ってドップラーという名前で、この名前自体に仕掛けがあるので言語に詳しい人はニヤリとするだろう。実は35年前に観た時純情だった僕はすっかりこの刑事については騙されてしまったが、今観れば一目瞭然、映画の中のワイク先生以外は大概見破れそう。配役表にそれに対応する仕掛けがしてあるのは今回初めて気が付いた。
リメイクと一番違うのは、幕切れ前のティンドルの凝りに凝った仕掛けで、【言わぬが花】の幕切れにも洒落っ気が横溢している。
迷路になった庭園から始まる開巻もミステリー気分満点でご機嫌。無機質な機械的な冷たさに覆われたリメイクに比べてユーモアとグロテスク(不気味)さが入り混じったムードが大いに楽しめる。そのグロテスクさに寄与しているのは数多の人形で、リモコンで笑う船長人形の使い方になかなか気の利いたところがある一方、その人形群とポール・ニューマンの奥方ジョアン・ウッドワードをモデルにしたという妻の肖像画を必要以上の頻度で(必要もないのに)カットインさせるのは気に入らない。
それ以外は全く満足できる出来栄えだが、旧作とは言うものの詳細は伏せることにしたので、僕のように内容より内容と作り方の関係を述べたがる人間にとって書きにくいことこの上ないのであります。
昨今グロテスクや猟奇といった言葉が誤用されちょる。この映画に含まれている要素こそグロであり、猟奇的と言うのじゃよ。僕も意図的に誤用することもありますがね。
1972年イギリス映画 監督ジョゼフ・L・マンキウィッツ
ネタバレあり
アンソニー・シェイファーの原作戯曲が発表されて3年後にベテランのジョゼフ・L・マンキウィッツが映画化した異色ミステリー。
“第一幕”のお話はリメイクと基本的に同じなのでそちらを参考にして下さい。
リメイクでマイケル・ケインが演じたミステリー作家アンドリュー・ワイクにローレンス・オリヴィエ、ティンドルに若きケインが扮して丁々発止の演技合戦を本編同様に繰り広げて見応え十分、階級対立を意識した洒落たお喋りの応酬が大変面白い。
中盤現れる刑事はリメイクとは違ってドップラーという名前で、この名前自体に仕掛けがあるので言語に詳しい人はニヤリとするだろう。実は35年前に観た時純情だった僕はすっかりこの刑事については騙されてしまったが、今観れば一目瞭然、映画の中のワイク先生以外は大概見破れそう。配役表にそれに対応する仕掛けがしてあるのは今回初めて気が付いた。
リメイクと一番違うのは、幕切れ前のティンドルの凝りに凝った仕掛けで、【言わぬが花】の幕切れにも洒落っ気が横溢している。
迷路になった庭園から始まる開巻もミステリー気分満点でご機嫌。無機質な機械的な冷たさに覆われたリメイクに比べてユーモアとグロテスク(不気味)さが入り混じったムードが大いに楽しめる。そのグロテスクさに寄与しているのは数多の人形で、リモコンで笑う船長人形の使い方になかなか気の利いたところがある一方、その人形群とポール・ニューマンの奥方ジョアン・ウッドワードをモデルにしたという妻の肖像画を必要以上の頻度で(必要もないのに)カットインさせるのは気に入らない。
それ以外は全く満足できる出来栄えだが、旧作とは言うものの詳細は伏せることにしたので、僕のように内容より内容と作り方の関係を述べたがる人間にとって書きにくいことこの上ないのであります。
昨今グロテスクや猟奇といった言葉が誤用されちょる。この映画に含まれている要素こそグロであり、猟奇的と言うのじゃよ。僕も意図的に誤用することもありますがね。
この記事へのコメント
まずは
>ポール・ニューマンの奥方ジョアン・ウッドワードをモデルにしたという妻の肖像画を必要以上の頻度で(必要もないのに)カットインさせるのは気に入らない。
これはねぇ、なんか意図があったんでしょうか? ちょっとこれだけは目障りだったけど、なにをか言わんという風に見せてましたよね。
最後の部屋中に響き渡る人形達の嬌声が、この映画の隠れテーマみたいで気に入ったわ。
それにローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの組合せがGood!
こうして比べるとリメイクはケインもロウもどちらも甘くって、いってみれば生クリームのケーキのダブルで味わう見たいなもんで、テレンス・スタンプみたいな硬質なタイプだったらまたムードも違ったかもって思いました。
しかし、ローレンス・オリヴィエはこの時70歳ぐらい。でも身のこなしといい、裏に表に丁々発止の台詞といい、さすが!って思いました。
>この映画に含まれている要素こそグロであり、猟奇的と言うのじゃよ。
うまいですよね!本当そう思う。
オリジナルみたらケネス・プラナーとしては、新しい感覚でリメイクに取り組みたかったんでしょうね。「魔笛」でもそうだけど、懲りすぎて、だめになっちゃったみたいですね。
二人+物言わぬ人形と、台詞のやり取りだけで、ここまで釘付けさせるんですからね。いやぁ、堪能しました!
>ケインもロウもどちらも甘く
リメイク版でここについて書こうと思って結局止めたのですが、ローは「アルフィー」に続いてケインの演じた役を演じているわけで、ムードが若い時のケインに似ているので、対決していて妙な印象を禁じえません。そういう意味では、ローを中心に考えるならケインはミスキャストでしたね。
>新しい感覚
インテリアの冷たい感触もそうですし、第3場は全く違うお話にしましたが、抽象的で僕には全くピンと来なかったな。
こちらでは若者が老人を最後まで苦しめるところが抜群に面白い。
>台詞のやり取り
上映時間が50分も長いのにね!
同じ台詞が多いのに、リメイクでは余り洒脱な感じがしないんですよね。
リメイク版とオリジナル版合わせた記事ですが、TBを奉納いたしますね。
リメイク版は、大人の事情がありまして(笑)、仕方なく映画館まで足を運んだのですが、見終わった後で無性にオリジナル版を見直したくなる印象でした(苦笑)。早いとこオリジナル版もDVD化されることを願っています。
ちょくちょく覗いていますよ。
コメントを残したいと思う時に限ってコメント欄がクローズされていて。
別の作品のTBも後日致したいと思うので、よろしくご査収ください。
>リメイク版
そちらで豆酢さんが仰っているように、リメイクはもはやミステリー若しくはスリラーではなくなっていまして、特に三幕目(?)の嫌らしいお芝居は僕に言わせれば抽象的で面白味のかけらもないです。
ティンドルを俳優に変えたのは良い(演技が上手いのは当然)と思ったのですが、豆酢さんのご指摘する弱点(どこまでが演技か曖昧になる)も納得できますね。まあ、一長一短といったところでしょうか。