映画評「シューテム・アップ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督マイケル・ポール・デーヴィス
ネタバレあり

マイケル・ポール・デーヴィスなる人物の日本劇場デビュー作は拾い物と言いたい快作である。

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ベンチに座っていた男クライヴ・オーウェンは、妊婦がギャングに追われるのを見過ごすことができず、彼女を庇う為に応戦するうち産気づいた妊婦の出産を助けるが、次々現れる男たちの弾丸に妊婦が倒れたので、赤ん坊を片手に抱いて逃走、馴染みの風俗嬢モニカ・ベルッチに赤子を預けようとするがすんなりとは行かず、結局二人で赤ん坊奪還に必死になっているポール・ジアマッティの一味から逃げながら闘う羽目になる。

複雑さで目をくらます作品が多い中で、基本的に無駄が少なく直線的に一気呵成に進む物凄いスピードを評価したいわけだが、併せて同じくらい楽しめる要素は上品な僕には言うのが憚れそうな下ネタ絡みのユーモアである。銃弾にネオンが消えて"FUK U"、さらに"FUK U TOO"となるのを序の口にして、モニカ嬢が母乳プレイに従事していたり、赤ん坊の排泄物を捨てる新聞に事件のそもそも発端である銃規制派大物議員の記事が載せられている、といった辺りゲラゲラ笑わせてくれる。

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主人公が事件の背景に気付く辺りのミステリー趣向にも捨てがたい面白さがあり、益々結構。

妻子を事件により失ったオーウェンはその為に銃器を持たず、故に反撃する時はいつも食べているニンジンか、倒した相手の銃器を使うというのが興味を引く一因でもあり、指紋認証式拳銃も手を負傷しても頭を使ってクリアしてしまう。相手の武器庫で紐を使って上部から乱射する場面も迫力満点だ。

さらに自分の車の窓ガラスを突き破ってさらに相手の窓ガラスを突き破るアクションも漫画的で痛快。些か残念なのは空中での銃撃場面で、あれくらいできるスカイダイバーはいるだろうから実写中心に処理してほしかった。内容が漫画的だから不自然とは言えないが、描写まで付き合う必要はない。

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しかし、犬好きなので敵の犬にまで好かれてしまう下ネタとは違うユーモラスな味付けや、最後のアクション場面のスピードとユーモアが秀逸なので、ご機嫌のうちに観終えることができる。

人が次々と倒れていくのでゲーム的と捉えられるかもしれないが、ゲーム感覚ではあってもゲームそのものとは違う印象を受けるのは、主人公の任侠的性格がすばやい展開の中でもきちんと造形されているからである。

主人公は「レッドクリフ」の謝雲の生まれ変わりじゃろ。

この記事へのコメント

シュエット
2009年04月21日 10:44
>マイケル・ポール・デーヴィスなる人物の日本劇場デビュー作は拾い物と言いたい快作
どんなかな?って思いつつ、迷った挙句、録画スルーした作品でしたが、拾い物に「!」
観てみます。
クライヴ・オーウェンって、いい役者だと思うんだけど、今ひとつ「これが彼だ!」って思わせる役にめぐり合っていないみたいで、ハリウッドで伸び悩んでるみたいな気がする。
2009年04月21日 22:40
これ、たしか弾丸んね~!(たまんね~)っていうキャッチコピーでしたよね。おおいに笑わせてもらいました。
まだ本編は未見ですけど、クライブ・オーウェンの顔がどの作品も同じなのを、確かめてみたいと思ってます(笑)
レンタル店で「シューテムアップ」の横に置いてあったスティーブン・セガールの「弾突!」(ダントツ)も非常に気になったことも付け加えておきます
オカピー
2009年04月22日 01:31
シュエットさん、こんばんは。

シュエットさんに、こういう基本的にアクションしかない作品はどうなんでしょうかねえ(考えれば風刺的なところもありますが、事実上中味はないです)。
余り自信がないです。
品がないのはOKですよね?(笑)

>オーウェン
なかなか味のある顔をしていると思いますよ。
オカピー
2009年04月22日 01:37
しゅべる&こぼるさん、こんばんは。

>クライブ・オーウェンの顔がどの作品も同じなのを、確かめてみたい
僕には全く同じに見えました。^^

>弾丸んね~
>「弾突!」(ダントツ)
映画興行界もダジャレの時代ですかあ。
WOWOWに出る度に律儀に観ていますが、セガールの作品も最近はお話のレベルが低くて困ったものです。まだ、文句が言えるうちは良いですが。
2009年05月11日 07:59
これは面白かったですね!
おばかだけど、設定やストーリーがしっかりしています。
おもしろくしてやろうというアイデアいっぱいで、笑わせてくれます。快作ですね。
オカピー
2009年05月12日 00:11
ボーさん、こんばんは。

快作でしょう!
世の中には、ジャンル映画なのに高尚なメッセージや主題を打ち出して弱体なストーリーや演出を誤魔化そうとする、或いは本気でそういうことを打ち出せば良い映画になると勘違いしている映画作家たちがいますが、本作のような作品を堂々と作れる人は映画が解っている、即ち、勘違いした一部“高級ファン”を怖がっていないと思いますね。

そういう客が増えると、良いジャンル映画も自ずと増えるのだけど。

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