映画評「カーツーム」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1966年イギリス映画 監督ベイジル・ディアデン
ネタバレあり
英国のB級映画の監督だったベイジル・ディアデンは60年代には多少格が上がったと見えて、本作などはデーヴィッド・リーンが作ってもおかしくないような大作である。英国史に詳しい人なら知っているに違いないゴードン将軍の活躍を描く。
1883年、突然現れた狂信的イスラム指導者マフディ(ローレンス・オリヴィエ)率いる軍勢により、スーダンを守っていたエジプト人とエジプトの宗主国であった英国の軍人たちが壊滅させられ、英国首相グラッドストーン(ラルフ・リチャードスン)は前のスーダン総督ゴードン将軍(チャールトン・ヘストン)を担ぎ出すが、本音ではその要衝カーツーム(ハルツーム)を捨てる気でいる。
ゴードンはカーツームの周囲にナイルの水を引き容易に侵攻できないようにして援軍が到着するまで時間稼ぎをするも空しく、将軍救出を唯一の目的として派兵した首相の思惑は外れて結局ゴードンは壮烈な死を遂げることになる。
似た性格のリーンの「アラビアのロレンス」と比べると、人間ドラマとしてもスペクタクルとしても大分及ばない。ディアデンは良い意味でのはったりを利かせることができないし緻密な表現力もないからだが、実写と実技に立脚したこの時代のアクションの素晴らしさはよく感じさせてくれる。
90年代以降、細切れのカット割りの為にアクションの流れが把握できなくてイライラさせられることが多くなったが、一つのアクションが終わるまでカットせずに撮っているので実に気持ちが良い。また、もっさりした印象を出すことにしか貢献しないワイヤー等も使わないので、実技のスピードに胸がすく。勿論この時代のベストのアクションに比べれば切れ・迫力などに不満があるとは言え、スタイルだけで空疎な近年の水準的アクションに比べれば数段上等。
それ以外の場面は冗長で余り面白くないが、昨年亡くなったヘストンとオリヴィエが腹を探り合う二つの場面は見応えがある。共に神の信任を得たと自認する似た者同士で、鏡を見る如く対峙し互いへの尊敬が滲み出る辺りが大変興味深い。
ヘストンは全米ライフル協会会長になってから(「ボウリング・フォー・コロンバイン」よりずっと以前から)私人としての印象は悪くなったが、これほどスペクタクルに映える役者は後にも先にもいない。
オリヴィエは「オセロ」で有色人種役の実績がある為に起用されたのだろう。リアリズムの観点から言えば妙でも、演技の迫力という意味では大変充実した仕事ぶりだ。
一般的な意味では寧ろ退屈を誘われる個所が目立つものの、以上述べた点を考慮して多めの星を進呈する次第。
1966年イギリス映画 監督ベイジル・ディアデン
ネタバレあり
英国のB級映画の監督だったベイジル・ディアデンは60年代には多少格が上がったと見えて、本作などはデーヴィッド・リーンが作ってもおかしくないような大作である。英国史に詳しい人なら知っているに違いないゴードン将軍の活躍を描く。
1883年、突然現れた狂信的イスラム指導者マフディ(ローレンス・オリヴィエ)率いる軍勢により、スーダンを守っていたエジプト人とエジプトの宗主国であった英国の軍人たちが壊滅させられ、英国首相グラッドストーン(ラルフ・リチャードスン)は前のスーダン総督ゴードン将軍(チャールトン・ヘストン)を担ぎ出すが、本音ではその要衝カーツーム(ハルツーム)を捨てる気でいる。
ゴードンはカーツームの周囲にナイルの水を引き容易に侵攻できないようにして援軍が到着するまで時間稼ぎをするも空しく、将軍救出を唯一の目的として派兵した首相の思惑は外れて結局ゴードンは壮烈な死を遂げることになる。
似た性格のリーンの「アラビアのロレンス」と比べると、人間ドラマとしてもスペクタクルとしても大分及ばない。ディアデンは良い意味でのはったりを利かせることができないし緻密な表現力もないからだが、実写と実技に立脚したこの時代のアクションの素晴らしさはよく感じさせてくれる。
90年代以降、細切れのカット割りの為にアクションの流れが把握できなくてイライラさせられることが多くなったが、一つのアクションが終わるまでカットせずに撮っているので実に気持ちが良い。また、もっさりした印象を出すことにしか貢献しないワイヤー等も使わないので、実技のスピードに胸がすく。勿論この時代のベストのアクションに比べれば切れ・迫力などに不満があるとは言え、スタイルだけで空疎な近年の水準的アクションに比べれば数段上等。
それ以外の場面は冗長で余り面白くないが、昨年亡くなったヘストンとオリヴィエが腹を探り合う二つの場面は見応えがある。共に神の信任を得たと自認する似た者同士で、鏡を見る如く対峙し互いへの尊敬が滲み出る辺りが大変興味深い。
ヘストンは全米ライフル協会会長になってから(「ボウリング・フォー・コロンバイン」よりずっと以前から)私人としての印象は悪くなったが、これほどスペクタクルに映える役者は後にも先にもいない。
オリヴィエは「オセロ」で有色人種役の実績がある為に起用されたのだろう。リアリズムの観点から言えば妙でも、演技の迫力という意味では大変充実した仕事ぶりだ。
一般的な意味では寧ろ退屈を誘われる個所が目立つものの、以上述べた点を考慮して多めの星を進呈する次第。



この記事へのコメント
盛んにBSでヘストン追悼集放映中ですね。^^
年齢を経るといままで苦手だった俳優も
“食べられる”ようになるのでしょうか。
ヘストンもそうですし「黄昏」や
先日観ました「探偵<スルース>」での
オリヴィエもこの頃は“なんともなく”
なりつつあります。(笑)
本作は未見ですがラルフ・リチャードソンの
悪だくみ顔と演技がちょっと観たい気も。^^
CS放映「わらの女」での超偏屈富豪役も
お上手でとても不気味でした。
最後のUP画像のヘストン、
黒とゴールドの制服姿が
威風堂々として、素敵ですね~♪
大きなスクリーンでこそ映える人
でしたね。
>私が文句を言ったせいでもないでしょうが
仰ったんですか?(笑)
何だか大分遅くなりましたが、今頃・・・何なのでしょうか?
>ヘストン
名演技者ではないでしょうが、スペクタクルには欠かせない役者でしたね。
まあ現在はコンピューターで誤魔化してしまうのでチンピラ俳優でもそれなりに見られてしまうかもしれませんが、ミラ・ジョヴォヴィッチの映画なんてコンピューターで顔をいじくっているので、肌がつるつるで気持ち悪い。
>苦手だった俳優
以前申したように、マーク・ウォールバーグが苦手。
しかし、最後に観た「ザ・シューター」は主演をやっても良い顔になっていたかな。
今一番苦手なのはジャック・ブラック。
こちらは暑苦しくて、冬ならともかく夏観るのは嫌だなあ。^^
>ラルフ・リチャードソン
三度見ている「女相続人」はご覧になってます?
父親像について僕はちょっとご意見を伺いたいです。^^