映画評「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年イギリス映画 監督エドガー・ライト
ネタバレあり
戦前から英国映画には地味な作品が多い一方で、時にとてつもなくアナーキーで面白い作品を生む傾向があり、本作などは正にその典型である。
法を曲げることが嫌いで職務に忠実、しかも頭脳明晰で運動能力抜群という警官サイモン・ペッグが優秀すぎるという変な理由で、長いこと重犯罪のない田舎町サンフォードに左遷させられる。
重犯罪はないと言うものの軽犯罪に関しては町民も官憲も寛容につき、ペッグが酒場に集っている少年たちを追い払うと客が殆どいなくなってしまう。という序盤から大いに笑わせてくれるが、ここに重要な伏線があることは後になって判る。
ペッグが赴任前に酔っ払い運転で捕まえた男ニック・フロストは赴任する署の署長ジム・ブロードベントの不肖の息子で、いやおうなく相棒を押し付けられる。この辺りは厳格な警官といい加減な町民のギャップをのんびり楽しませる展開と思わせておいて実は緻密に伏線を敷いているので、鑑賞者におかれてはゆめゆめ油断することなかれ。
彼が落ち着く間もなく、男女二人が首実検状態で発見される交通事故、冷蔵庫王の焼死、新聞記者が落下物に押しつぶされる事故、と次々に怪事件が発生、町は俄かに不穏な空気に包まれる。が、町の治安に貢献している【近隣監視同盟】も他の警官たちも尽く事故と決めつける。
やがてペッグは、“街が平和であること”に心を傾けている【近隣監視同盟】こそ事件の張本人であることに気付くが、署長までも味方ではどうにもならない。ずっこけながら人柄の良いフロストまでも敵側だった・・・と思わせておいて、序盤の血糊パックを利用した大芝居と判明する辺りもきちんと伏線を敷いた上での展開でなかなか気が利いている。しかもこれはフロストがポリス映画の大ファンという設定に関連付けられるわけで、「ハートブルー」の事前解説が終盤の場面で生かされるのも嬉しい。
そして、本作全体がバディ刑事映画の上質なパロディーとなっているのは言わずもがな。前半部分は布石と伏線を散りばめて無駄がなく、後半で実に巧みに布石を回収し伏線を生かして、誠に要領良く作られた快作と評価したい。排他的コミュニティを描いた作品としても先般鑑賞した「ウィッカーマン」よりずっと上出来でござる。
事件が酸鼻を極めるのが閉口させられるものの、パロディー的な扱いなので★一つ減点といった程度に留めましょう。
主人公の名前がエンジェル、神父の名前がシューター、というのだから何ともふざけています。
2008年イギリス映画 監督エドガー・ライト
ネタバレあり
戦前から英国映画には地味な作品が多い一方で、時にとてつもなくアナーキーで面白い作品を生む傾向があり、本作などは正にその典型である。
法を曲げることが嫌いで職務に忠実、しかも頭脳明晰で運動能力抜群という警官サイモン・ペッグが優秀すぎるという変な理由で、長いこと重犯罪のない田舎町サンフォードに左遷させられる。
重犯罪はないと言うものの軽犯罪に関しては町民も官憲も寛容につき、ペッグが酒場に集っている少年たちを追い払うと客が殆どいなくなってしまう。という序盤から大いに笑わせてくれるが、ここに重要な伏線があることは後になって判る。
ペッグが赴任前に酔っ払い運転で捕まえた男ニック・フロストは赴任する署の署長ジム・ブロードベントの不肖の息子で、いやおうなく相棒を押し付けられる。この辺りは厳格な警官といい加減な町民のギャップをのんびり楽しませる展開と思わせておいて実は緻密に伏線を敷いているので、鑑賞者におかれてはゆめゆめ油断することなかれ。
彼が落ち着く間もなく、男女二人が首実検状態で発見される交通事故、冷蔵庫王の焼死、新聞記者が落下物に押しつぶされる事故、と次々に怪事件が発生、町は俄かに不穏な空気に包まれる。が、町の治安に貢献している【近隣監視同盟】も他の警官たちも尽く事故と決めつける。
やがてペッグは、“街が平和であること”に心を傾けている【近隣監視同盟】こそ事件の張本人であることに気付くが、署長までも味方ではどうにもならない。ずっこけながら人柄の良いフロストまでも敵側だった・・・と思わせておいて、序盤の血糊パックを利用した大芝居と判明する辺りもきちんと伏線を敷いた上での展開でなかなか気が利いている。しかもこれはフロストがポリス映画の大ファンという設定に関連付けられるわけで、「ハートブルー」の事前解説が終盤の場面で生かされるのも嬉しい。
そして、本作全体がバディ刑事映画の上質なパロディーとなっているのは言わずもがな。前半部分は布石と伏線を散りばめて無駄がなく、後半で実に巧みに布石を回収し伏線を生かして、誠に要領良く作られた快作と評価したい。排他的コミュニティを描いた作品としても先般鑑賞した「ウィッカーマン」よりずっと上出来でござる。
事件が酸鼻を極めるのが閉口させられるものの、パロディー的な扱いなので★一つ減点といった程度に留めましょう。
主人公の名前がエンジェル、神父の名前がシューター、というのだから何ともふざけています。
この記事へのコメント
単なるパロディに終わることなく、いろいろな要素を盛り込みつつも、きちんと作られており、予想以上に楽しめました。
>「ウィッカーマン」よりずっと上出来
仰る通りですね。
あれもザクザクすすむけど、面白いですね~~。
ホットファズに出てくる刑事たち、いかにもあだ名で呼ばれてそうで笑ってしまいます。「太陽にほえろ」に出てきそう(笑)
「ウィッカーマン」はオカピーさんとは反対でオリジナルを見ていて、ニコケイのリメイクは未見です。オリジナルは強烈ですわ。好きです。
これは偶然か、ホットファズはオリジナルのウィッカーマンにもかなりオマージュささげてると思いますよ。
エドガー・ライト監督、「ショーン・オブ・ザ・デッド」と本作だけしか見てないけど、いまのところ外れなしです!