映画評「ROCK YOU! (ロック・ユー!)」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2001年アメリカ映画 監督ブライアン・ヘルゲランド
ネタバレあり
中学生の時に観たピエル・パオロ・パゾリーニの「カンタベリー物語」はやたら全裸の出て来る猥雑な映画だった。今ならR15だろうが、当時は成人映画と一般映画の2区分しかなかったから、問題なく観られた。高校生の時ジェフリー・チョーサーの原作を読んだこともある。
どうしてこんな書き方から始めたかと言えば、本作は原作にある「騎士の物語」をモチーフにしているからで、序盤全裸の青年(ポール・ベタニー)が現れてチョーサーを名乗るので、裸に溢れるパゾリーニの映画を思い出しニヤニヤしながら見始めたのである(裸にニヤニヤしたのではないですぞ)。
彼が出会うのが、貴族を名乗って馬上槍試合に参加することにしたばかりの英国平民ウィリアム(ヒース・レジャー)と仲間二人。ウィリアムは自己流の試合運びで注目を集め、美しい貴族令嬢ジョセリン(シャニン・ソサモン)の争奪戦も兼ねて遂に故郷のイングランドでフランスの強敵アダマー伯爵(ルーファス・シーウェル)と雌雄を決することになる。
背景が中世であるにも拘らず、クイーンのお馴染み「ロック・ユー」、懐かしいシン・リジィの「ボーイズ・アー・バック・イン・タウン」など、およそ似つかわしくないロックの楽曲をお話の進行役としてバラッド風に扱い大胆に使っているが、馬上槍試合を現代の格闘技に模して勇ましく見せる趣向にはぴったり合っている。「時代劇には合わん」などと野暮は言いません。
その間、主人公が屋根葺きだった父親と別れて貴族になる道を選んだ幼年時代を回想した後、十数年ぶりに失明した父親と再会するエピソードが紹介され、結構しんみりとさせる瞬間もある。しかし、基本的には明朗な娯楽編で、武勇に明け暮れた有名なエドワード黒太子の使い方もメロドラマ的に気が利いている。
最後にチョーサーが「色々な階級の人々を描きたい」と代表作「カンタベリー物語」成立を予感させる台詞を吐くのは、全く予想通りとは言え、なかなか嬉しい。
この邦題で時代劇を想像する人は皆無でしょう。
2001年アメリカ映画 監督ブライアン・ヘルゲランド
ネタバレあり
中学生の時に観たピエル・パオロ・パゾリーニの「カンタベリー物語」はやたら全裸の出て来る猥雑な映画だった。今ならR15だろうが、当時は成人映画と一般映画の2区分しかなかったから、問題なく観られた。高校生の時ジェフリー・チョーサーの原作を読んだこともある。
どうしてこんな書き方から始めたかと言えば、本作は原作にある「騎士の物語」をモチーフにしているからで、序盤全裸の青年(ポール・ベタニー)が現れてチョーサーを名乗るので、裸に溢れるパゾリーニの映画を思い出しニヤニヤしながら見始めたのである(裸にニヤニヤしたのではないですぞ)。
彼が出会うのが、貴族を名乗って馬上槍試合に参加することにしたばかりの英国平民ウィリアム(ヒース・レジャー)と仲間二人。ウィリアムは自己流の試合運びで注目を集め、美しい貴族令嬢ジョセリン(シャニン・ソサモン)の争奪戦も兼ねて遂に故郷のイングランドでフランスの強敵アダマー伯爵(ルーファス・シーウェル)と雌雄を決することになる。
背景が中世であるにも拘らず、クイーンのお馴染み「ロック・ユー」、懐かしいシン・リジィの「ボーイズ・アー・バック・イン・タウン」など、およそ似つかわしくないロックの楽曲をお話の進行役としてバラッド風に扱い大胆に使っているが、馬上槍試合を現代の格闘技に模して勇ましく見せる趣向にはぴったり合っている。「時代劇には合わん」などと野暮は言いません。
その間、主人公が屋根葺きだった父親と別れて貴族になる道を選んだ幼年時代を回想した後、十数年ぶりに失明した父親と再会するエピソードが紹介され、結構しんみりとさせる瞬間もある。しかし、基本的には明朗な娯楽編で、武勇に明け暮れた有名なエドワード黒太子の使い方もメロドラマ的に気が利いている。
最後にチョーサーが「色々な階級の人々を描きたい」と代表作「カンタベリー物語」成立を予感させる台詞を吐くのは、全く予想通りとは言え、なかなか嬉しい。
この邦題で時代劇を想像する人は皆無でしょう。
この記事へのコメント
いつもコッソリ、毎日、更新を楽しみにさせて頂いていますので、休載から無事に復活されて嬉しいです。
この映画は映画館で公開当事に観ました!ROCK好きなので 笑
「馬鹿馬鹿しくも愛すべき娯楽映画」って感じで、好きですこの作品。
点数的には☆3つですが、DAVID BOWIEをバックに貴族の皆さんが踊ってしまうシーンなんて刺さりまくりでしたね。
ソフィア・コッポラが「マリー・アントワネット」でUKロックをサントラに駆使していましたが、この映画の方がある意味、先駆的(?)ですね!
>体調
有難うございます。
慢性膵炎気味ですので、肋骨やみぞおちの辺りが時々痛みますが、生活に支障はありません。
映画を観る集中力も大分戻りました。
食事が不都合なんですけどね。
さて、時代劇におけるロック・・・
本作より数年前の「三銃士」のタイトル音楽がロックでしたが、まだ本編に使う勇気はなかったようですね。
本作の場合は、歌詞を流用してバラッドとして扱ったのが上手く行った理由ですが、お話を軽妙で現代風にしたのも違和感を軽減しましたね。
>DAVID BOWIE
"Golden Years"でしたっけね。ミュージカルかと思いましたよ。
僕の趣味としては、黒人ロックのSly & the Family Stoneの"I Want to Take You Higher"も嬉しかった。彼等のCDは何枚か持っています。