映画評「ジェイン・オースティンの読書会」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ロビン・スウィコード
ネタバレあり

映画界においてジェイン・オースティンはほぼ同時代のブロンテ姉妹に比べると人気がなかったが、映画がリアリティを重んじるようになって人気は完全に逆転した。オースティンのスケッチ描写に時代が追いついたのだ。
 という現象面はともかく、オースティンの長編全6作を読んでいないと本作を正確に語ることはできないのだが、実はかく言う僕も「自負と偏見(高慢と偏見)」しか読んでいない。「エマ」や「分別と多感」(いつか晴れた日に)は映画版を観ているのでお話は記憶している。いずれにせよ、似非インテリの弱さを暴露してしまうしかないようです。

初老のキャシー・ベイカーはオースティンの大ファン。人生の解毒剤と信ずるオースティンにより、愛犬の死を悲しむマリア・ベローや夫に別離宣告されたエイミー・ブレナマンを慰めようと読書会発足を思い付くが、長編6作に合せる為にもう3人のメンバーを募る必要がある。そして、夫が冷淡なために教え子によろめくフランス語教師エミリー・ブラント、エイミーの娘で同性愛者のマギー・グレース、さらに唯一の男性ヒュー・ダンシーも加わる。

というのを発端として、彼らの恋や人生模様がオースティンの小説群に重なっていく面白さを狙った作品なので、オースティンを全く読まずに本作の実力を測ることはできない。従って、「エマ」「自負と偏見」「分別と多感」のうちどれか一冊くらいは読んでから観た方が無難だろう。

前述したように僕なども余り大したことは言えないわけだが、さすがにダンシーをエイミーとくっつげたがっているマリアが「エマ」の主人公エマを投影した人物であることくらいは解る。全体のムードやお話の進展ぶりがオースティン風であることも伺えるが、残念ながらニヤニヤできるほど精通していない。
 それでも、読書会といった風俗的な興趣を軸に群像劇として楽しませる要素が充分にあるので、上記の星を進呈する次第。

全部読んでから出直してきます。

この記事へのコメント

2009年08月08日 15:10
TBありがとう。
僕は若いときにかなり読んでいました。ほとんど忘れちゃって。その頃は、英文学専攻でもない男性が、オースティンを読むなんて、ちょっと奇異に見られましたね。ハーレークインロマンスを読むような恥ずかしさもあって(笑)
オカピー
2009年08月08日 23:48
kimion20002000さん、こんばんは。

僕は、大学でロシア語とロシア文学を専攻していた時代に、「自負と偏見」だけ読みましたね。英国の女性作家でもエミリー・ブロンテの「嵐が丘」なら良いでしょうが、シャーロットの「ジェーン・エア」やオースティンは・・・という感覚もありましたかねえ。
2009年08月09日 02:12
お久しぶりです。その後、お体、大丈夫ですか?
どうぞご自愛下さいませ。

この作品、オースティン信者でなくても、読書好きな人あれば、ピンとくるエピソードも多く、なかなか楽しめる”オトナのための”群像劇に仕上がっていましたね!
観賞後の印象が妙に爽やかな点も、結構、気に入りました☆
オカピー
2009年08月09日 23:25
RAYさん、コメント有難うございます。

体調はぼちぼち、激しい運動は無理ですが、日常生活はほぼ支障ありません。
それより食事制限がかなり厳しいので嫌になってしまいますよ。

仰るように、なかなかきちんとまとまった、大人向けの群像劇でした。
オースティンを知っていればいるほど、楽しみが増える作品ではありましたけどね(と全てを読んでいない僕がいうのも変ですぞ)。
シュエット
2009年08月10日 09:15
これは、彼らの会話とか反応がとても自然なのがとても気に入った作品だったわ。どうかすると大げさっぽくなったり、わざとらしくなったりするんだけど、これは観ていてとても気持ちよく楽しめた映画でした。
オカピー
2009年08月10日 17:16
シュエットさん、こんばんは。

>彼らの会話とか反応がとても自然
双葉塾的に言えば、生活感情を伴った作品ですね。ドラマは勿論そうですが、アクションでもSFでもサスペンスでもこれが伴わなければ、絵空事になってしまいます。

群像劇は散漫になりがちなんですが、6章に分けたことがタイトさに繋がっていましたね。

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