映画評「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1984年アメリカ映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり

スティーヴン・スピルバーグの監督作品では「激突!」と「E・T」を高く評価しているが、「インディ・ジョーンズ」シリーズも断然優秀。特に第2作である本作は連続活劇的なアクション映画として非常に完成度が高く、恐らくマニアックな方が推すであろう第一作の「レイダース/失われた聖櫃」ではなく本作をシリーズNo.1として推したい。

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時は1935年。最初の舞台は上海のナイトクラブで、ケイト・キャプショーの歌う「エニシング・ゴーズ」に乗って1930年代のレヴュー映画かと紛うほど素晴らしいレヴューが繰り広げられ、ミュージカル映画ファンでもある僕をご機嫌にさせてくれる。このままミュージカルとして暫く続いても全く問題ないレベルなり。

ここで清朝の開祖であるヌルハチの遺骨を巡って取引中に相手から毒を盛られたインディアナ・ジョーンズ博士(ハリスン・フォード)が、乱闘の末にやっと解毒剤を手に入れ飛行機で脱出して安心するのも束の間、これが一味の飛行機だった為に睡眠中にパイロットが消え大慌て、一緒に連れてきた歌姫ケイトと便利に使っている中国人少年キー・ホイ・クアンと共に救命ボートを落下傘代りにしてヒマラヤの麓に軟着陸する。

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最初からハラハラどきどきの連続だが、この時援助の手を差し伸べた村の長老の言い分に従って、略奪された宝石と子供たちを取り返す為に邪教の司祭が牛耳っている宮殿に乗り込む。かくして、宮殿の下にある鉱山を舞台に数々のピンチを潜り抜ける大アクションが切れ目なく繰り広げられる。

基本は1910~20年代の連続活劇の復活。宮殿での場面が1939年に作られた冒険映画「ガンガ・ディン」からの影響を多分に感じさせるのもスピルバーグの映画マニアぶりに嬉しくなるが、一般客にはそんな大昔のことは関係ないのでこの辺に留めましょう。

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剣山状態の天井が下りて来るサスペンス、トロッコやつり橋を使ったサスペンスフルな大アクションなど、とにかく宮殿に入ってからは息を付く間もなくヒヤヒヤの連続。
 19年ぶりの第4作「クリスタル・スカルの王国」でも述べたように、スピルバーグの場面の繋ぎや映画文法即ちカット割りはいつも通りに適切無比で、自ずと楽しめるようになっていることに映画ファンなら注目しておきたい。ストーリーは劇映画の成否において大体6割を占めるのではないかと思っているが、そのストーリーの面白さを支えるのが的確なカット割りや場面の繋ぎであることを忘れてはいけない一方で、ストーリーの面白さ(つまらなさ)だけを以って監督の有能・無能を決めつけるのは全く見識がない、ということである。脚本を担当していない場合はなおさら。

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閑話休題。
 冒険映画では女性は足手まといとお色気の為に配置されるのが定石で、本作も基本はそこにあるものの、いつも足手まといでイライラさせる代わりにそれなりに活躍するのが有難く、コメディリリーフの大半を担っているのが嬉しい。今思えば、本作は典型的なスクリューボール・コメディーでもありました。

因みに、<消える魔球>は出て来ない。

この記事へのコメント

シュエット
2009年10月16日 14:45
>スティーヴン・スピルバーグの監督作品では「激突!」と「E・T」を高く評価しているが
あらっ、私は「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」も高く評価してるわ!この時のディカプリオもトム・ハンクスもとっても良い良い。
「インディ・ジョーンズ」については、これはもう文句なしに面白い。
どこがって、やっぱり面白いんですよね。
スピルバーグってやっぱりこんなん撮らせたらぴか一ですよね。
「クリスタルスカラ」も観る度にあちこちに散りばめられたものが見えてきて、やっぱ面白いなって思うこのごろ。
>スピルバーグの場面の繋ぎや映画文法即ちカット割りはいつも通りに適切無比で、自ずと楽しめるようになっている
やはりこの辺なんでしょうね。P様みたいにそこまでは意識してみていないけれど、飽きさせないし、眼を逸らさせないし、観ていてウキウキしてくる。
シリーズの中でどの作品がい一番だとか
オカピー
2009年10月17日 01:11
シュエットさん、こんばんは。

>「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
これは僕自身のヘマで、割合良くて観ているTV「アンビリバボー」で彼の人生を知ってしまっていたのでそう面白く感じれなくて「上の下」の印象に留まっているのです。
勿論、カット割りといった面ではいつもながら上手くて、展開がドタバタしないのはさすがでしたが。

従って、本シリーズをノッキングしたような展開しか見せられない「ハムナプトラ」シリーズなどと比べるのはちゃんちゃら可笑しく、ましてこちらより面白いなどというのは頭のネジが緩んでいるのではないかと思う程ですが、まあ、英語の文法を全く知らない我が兄に完璧な文法の英文を見せるようなもので「猫に小判」なんだろうと、その類のコメントを読むとがっかりさせられます。

>飽きさせないし、眼を逸らさせないし
映画文法や映像言語がしっかりしているからなんですね。
こういう部分の才能は一度現れたら基本的に死ぬまで変わりませんよ。
スピルバーグの凄いところは、スローと細切れショットといったごまかし的手法を絶対使わないこと。リアル・スピードで見せる(魅せる)自信があるんですね。
全員に当てはまるわけではないですが、これを使う監督は大抵大した才能がないです。
やあ
2009年10月17日 23:16
オカピーって雑魚のくせにいつもえらそうですよね
2009年10月18日 09:13
プロフェッサー、おはようございます。

私もこの「魔宮の伝説」がインディの中で一番すきです。
というか、オカルト色のつよい1作目は未見で、この2作目、ちょうど中学、いや高校かな?のときに劇場で鑑賞してもう、おもしろかったですよ。
まさにノンストップ・ジェットコースタームービーという感じ。
映画はこうじゃなきゃと思いました。

ほんとスピルバーグはカット割り、展開がうまい。

そして、もともとダブルオーみたいな映画をつくりたかったが、その風貌をルーカスに反対された彼。冒頭の白のジャケットを羽織って現れるインディはまさにジェームズ・ボンドのようでしたよね。

ほんとに楽しい映画です。


最後に私はハイスピードと細かいカット割りがすきなのですが、仰る通り使い方ひとつで効果的でない、つまり無意味な場面での多用はうんざりしますね。

では、また。
オカピー
2009年10月18日 21:40
イエローストーンさん、こんばんは。

>オカルト色のつよい1作目
僕にとっては呪われた映画で、いつも眠くなるんですよ(笑)。
いや、退屈からではなく、どうもそういうタイミングで観ることになるようなんです。

3作目はジェットコースター的な面白さで本作に劣りますが、ショーン・コネリーが出てちょっと面白い味が出ていました。

文学性に振り回されて、こういう映画を楽しめない人は本当に損ですね。

>ハイスピードと細かいカット割り
のべつまくなく使う人は論外ですね。ハイスピード(スローモーション)の場合は効果がない以上単なる尺稼ぎと、遅いものを早く見せる為の誤魔化しにしかなりませんから。
翻って、ポール・グリーングラスのように細かいカット割りでもきちんとアクションが伝えられる人もいますが、何も伝わってこないカット割りが目立つ今日。
本当にうんざりします。

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