映画評「神様のパズル」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・三池崇史
ネタバレあり
機本伸司の同名小説を多作の三池崇史が映像化したSF。
物理を専攻する大学生・綿貫喜一(市原隼人)が海外に出ている間出来の悪い双子の兄・基一(市原二役)が大学のゼミに出席することになり悪戦苦闘するが、60代の聴講生(笹野高史)の疑問をベースに「人間に宇宙は作れるか」と話しかけることで、16歳にして“むげん”という国家的事業を発案した引きこもり天才少女サラカ(谷村美月)をゼミに戻すことに成功。
彼の素人故の発想を味方にサラカは可能性に近づいていくが、人工授精ベイビーかつ天才故の孤独に苦しめられて暴走、新型の粒子加速器である“むげん”を使って宇宙を破壊しかねない自らの命題を実行に移そうとし、大騒動が起きる。
僕は完全な文系、高校時代物理が“理科”の中でも一番苦手だったから、本作の内容にしても完全に解るわけではないものの、原作の設定を変えて主人公を物理の素人にすることで映画の中で語られる内容を本作を見るであろう大半の観客のレベルに引き下げたのは嬉しい配慮。実際に物理音痴の僕は前半のほうを面白く観た。
後半は“無限”を中心としてSFサスペンスらしい見せ場を用意してそれなりに見せるが、暗い場面が多い上に関係者の行動を描くカットバックが混乱気味で、手に汗を握ると言うほどではない。
いずれにしても、最終的に本作を楽しいものにしている二つの工夫があり、まずは【コスモス(調和)とカオス(混沌)のペア】という宇宙創成の基礎概念を全面的に配した作劇である。
例えば、展開上はさほど意味がなさそうな双子への設定変更が、物理に巻き込まれる兄とインドで音楽的に目覚める弟がクロスしていく関係により【調和と混沌のペア】を象徴しているように感じさせていったり、意図的なものかどうかはともかく谷村美月の無粋なジャージーとその下に見える扇情的な下着の関係もそう言えないことはない。
もう一つはベートーヴェン。
宇宙誕生直前の短い空白を「運命」の始まりおける8分休符に例え、主人公がバイトをする農家の畑では「田園」が流れ、クライマックスで「歓喜の歌」のロックバージョンが歌われる、といった具合に楽しませてくれる。
「歓喜の歌」の音符が違っているのは、意図的な改変なのか、間違って憶えたのか、単に音痴なのか。
2008年日本映画 監督・三池崇史
ネタバレあり
機本伸司の同名小説を多作の三池崇史が映像化したSF。
物理を専攻する大学生・綿貫喜一(市原隼人)が海外に出ている間出来の悪い双子の兄・基一(市原二役)が大学のゼミに出席することになり悪戦苦闘するが、60代の聴講生(笹野高史)の疑問をベースに「人間に宇宙は作れるか」と話しかけることで、16歳にして“むげん”という国家的事業を発案した引きこもり天才少女サラカ(谷村美月)をゼミに戻すことに成功。
彼の素人故の発想を味方にサラカは可能性に近づいていくが、人工授精ベイビーかつ天才故の孤独に苦しめられて暴走、新型の粒子加速器である“むげん”を使って宇宙を破壊しかねない自らの命題を実行に移そうとし、大騒動が起きる。
僕は完全な文系、高校時代物理が“理科”の中でも一番苦手だったから、本作の内容にしても完全に解るわけではないものの、原作の設定を変えて主人公を物理の素人にすることで映画の中で語られる内容を本作を見るであろう大半の観客のレベルに引き下げたのは嬉しい配慮。実際に物理音痴の僕は前半のほうを面白く観た。
後半は“無限”を中心としてSFサスペンスらしい見せ場を用意してそれなりに見せるが、暗い場面が多い上に関係者の行動を描くカットバックが混乱気味で、手に汗を握ると言うほどではない。
いずれにしても、最終的に本作を楽しいものにしている二つの工夫があり、まずは【コスモス(調和)とカオス(混沌)のペア】という宇宙創成の基礎概念を全面的に配した作劇である。
例えば、展開上はさほど意味がなさそうな双子への設定変更が、物理に巻き込まれる兄とインドで音楽的に目覚める弟がクロスしていく関係により【調和と混沌のペア】を象徴しているように感じさせていったり、意図的なものかどうかはともかく谷村美月の無粋なジャージーとその下に見える扇情的な下着の関係もそう言えないことはない。
もう一つはベートーヴェン。
宇宙誕生直前の短い空白を「運命」の始まりおける8分休符に例え、主人公がバイトをする農家の畑では「田園」が流れ、クライマックスで「歓喜の歌」のロックバージョンが歌われる、といった具合に楽しませてくれる。
「歓喜の歌」の音符が違っているのは、意図的な改変なのか、間違って憶えたのか、単に音痴なのか。
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