映画評「寝取られ男のラブ♂バカンス」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督ニコラス・ストーラー
ネタバレあり
最近アメリカのラブ・コメディーはセックス・コメディー化していて上品な僕(笑)には余り有り難くない作品が多い。本作も先月の「噂のアゲメンに恋をした!」同様下ネタが目立つが、構成自体はクラシックで骨組みはがっちりしている。
TV捜査劇の音楽を作っている音楽家ジェースン・シーゲルがその捜査劇で主演を務める人気女優クリステン・ベルと付き合って5年のある日、彼女から別れを切り出される。落ち込んだ彼はハワイに傷心旅行に出るが、あろうことか泊ったホテルに彼女が新しい恋人のロック歌手ラッセル・ブランドと共に先に来ていた為に却って火に油を注ぐようなことになる。
それを気の毒に思ったフロントの美女ミラ・クニスが救いの手を差し伸べてくれたことから次第に彼女に傾いていく一方で、捜査劇が打ち切られてブランドとも別れることになったクリステンが元の鞘に戻ろうとすり寄って来た為にややこしくなる。
最近の恋愛喜劇の手詰まり具合を見ると、シチュエーション的に新しい(面白い)アイデアはもう出て来ないのではないかとさえ思わされる。新しい着想を容易に生み出せないので、近年は古い構図をそのままに一般映画とは思えない露骨なセックス場面や下ネタ、小ネタで楽しませる方向性に進んでいるのだろう。
実際にクリステンの出演捜査劇のパロディー的扱いやマペット・ミュージカル「ドラキュラ」など面白いネタもあってその場その場はなかなか楽しめるが、最近のコメディーの例に洩れず出たとこ勝負的で連続的な笑いになっていかない。本作で言えば元の恋人同士が偶然にも旅行先でばったり出会うという古典的なしっかりした基礎アイデアにもう一ひねりを加えられたらぐっと楽しくなったにちがいない(と言うのは簡単だけどね)。
結局、最も笑え、同時に最も映画的に秀逸と言うべきは、シーゲル氏が素っ裸でいるところにクリステンが飛び込んでお話が始まり、同じように素っ裸でいるところにミラが飛び込んできて終る、というシンメトリカルな構成でありましょう。
エルンスト・ルビッチ、ビリー・ワイルダーで口直しと行こう。
2008年アメリカ映画 監督ニコラス・ストーラー
ネタバレあり
最近アメリカのラブ・コメディーはセックス・コメディー化していて上品な僕(笑)には余り有り難くない作品が多い。本作も先月の「噂のアゲメンに恋をした!」同様下ネタが目立つが、構成自体はクラシックで骨組みはがっちりしている。
TV捜査劇の音楽を作っている音楽家ジェースン・シーゲルがその捜査劇で主演を務める人気女優クリステン・ベルと付き合って5年のある日、彼女から別れを切り出される。落ち込んだ彼はハワイに傷心旅行に出るが、あろうことか泊ったホテルに彼女が新しい恋人のロック歌手ラッセル・ブランドと共に先に来ていた為に却って火に油を注ぐようなことになる。
それを気の毒に思ったフロントの美女ミラ・クニスが救いの手を差し伸べてくれたことから次第に彼女に傾いていく一方で、捜査劇が打ち切られてブランドとも別れることになったクリステンが元の鞘に戻ろうとすり寄って来た為にややこしくなる。
最近の恋愛喜劇の手詰まり具合を見ると、シチュエーション的に新しい(面白い)アイデアはもう出て来ないのではないかとさえ思わされる。新しい着想を容易に生み出せないので、近年は古い構図をそのままに一般映画とは思えない露骨なセックス場面や下ネタ、小ネタで楽しませる方向性に進んでいるのだろう。
実際にクリステンの出演捜査劇のパロディー的扱いやマペット・ミュージカル「ドラキュラ」など面白いネタもあってその場その場はなかなか楽しめるが、最近のコメディーの例に洩れず出たとこ勝負的で連続的な笑いになっていかない。本作で言えば元の恋人同士が偶然にも旅行先でばったり出会うという古典的なしっかりした基礎アイデアにもう一ひねりを加えられたらぐっと楽しくなったにちがいない(と言うのは簡単だけどね)。
結局、最も笑え、同時に最も映画的に秀逸と言うべきは、シーゲル氏が素っ裸でいるところにクリステンが飛び込んでお話が始まり、同じように素っ裸でいるところにミラが飛び込んできて終る、というシンメトリカルな構成でありましょう。
エルンスト・ルビッチ、ビリー・ワイルダーで口直しと行こう。
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