映画評「ルイスと未来泥棒」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督スティーヴン・アンダースン
ネタバレあり

ディズニーの3Dアニメ。ピクサーのジョン・ラセターを絡めたことでディズニーらしさが多少減っているのは良いが、全体としては失望の部類。

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孤児のルイスは発明マニアの12歳で、ルームメイトのグーブへの睡眠妨害も構わず、捨てた母親に会う為に“記憶スキャナー”なる製品を作り上げる。グーブは睡眠不足の為に野球の試合で大チョンボを犯してしまう。
 一方、ルイスが発表の会場に現れた“未来泥棒”に妨害されてデモンストレーションに失敗して自棄になったところへ、ウィルバーという少年が現れてタイムマシンで彼を未来へ連れていく。ルイスはそこで、彼の未来を何故か奪おうとする“未来泥棒”と対決する。

世に溢れているタイム・トラヴェルものに付き新味は余りない。新味はともかく作者がこの時間SFで何を言わんとしているのかと言えば、この“未来泥棒”は言うまでもなくルイスのせいで試合で大チョンボを犯してその後の人生を奪われたグーブの成人した姿で、過去に拘る二人の少年を通じて「人間は過去に拘らず未来を見つめそこに向けて歩き出すべきだ」と説くのである。

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その主旨は買っておきたいが、時間SFの原則を無視した作劇をどう評価したものか。
 本人は過去に行っても未来に行ってもその時代の本人には会えない若しくは会ってはならないという時間SFにおける常識に反し、例えば未来の大人になったルイスが現在のルイスと話までしている。かくも杜撰な印象がある一方で、物語の発端や未来の世界ではタイム・トラヴェルの結果をきちんと織り込んでタイム・パラドックスを回避する努力をしているので何となく妙な感じがするのである。全てが織り込み済みならお話は一つの円環の中にあるわけで、そういう場合には本人同士が会えるのか僕は知らないが。

ウィルバー少年の賑やかな家庭を描いた部分にフランク・キャプラ「我が家の楽園」(1938年)のムードがあるのはちょっと面白く、拝金主義批判をしていたあのコメディーの“お金”を“過去”に置き換えて作ったような気がしないでもない。

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ところで、最近【タイム・パラドックスもの】という、余りピンと来ない表記を目にする。恐らく「サマータイムマシン・ブルース」のようにタイム・パラドックスが生じないように努力する人々を描いた作品に特化して言うのだろうが、単に【タイム・トラヴェルもの】で良いのではないだろうか。

♪よーく考えよう 過去も大事だよ~

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