映画評「マン・オン・ワイヤー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年イギリス=アメリカ映画 監督ジェームズ・マーシュ
ネタバレあり
高所恐怖症の僕には全く縁のない世界である綱渡りで世間の耳目を騒がせたフランス人フィリップ・プティが、1974年に完成したばかりの(映画を見る限り完全に完成していたわけではないようだ)ワールド・トレード・センターのツイン・タワーの間にロープを張ってそこを何往復もした末に逮捕された経緯が、本人を含めた関係者たちの証言、当時のフィルム及び再現ドラマを交えて語られるドキュメンタリーである。
中心となるのは、仲間二人とこっそりビルに侵入して警備員の目をかいくぐって深夜に準備を進めるくだりで、関係者の話を聞くだにサスペンスフル。再現ドラマも加えられているが、きっちりサスペンス映画風な仕立てにはなっていないので、誰かきちんと劇映画にしてくれないかという馬鹿げた考えが脳裏を過ったほどだ。
やがて朝が来て綱渡りを決行する場面は大事な部分が全てスティル・ショットというのが残念。しかし、本人が笑っているのでハラハラよりは気分の高揚や爽快感が伝わってくる。また、映画の功績とは言えないものの、綱渡りの背景に飛行機が飛んでいるスティル・ショットは抜群にフォトジェニック。
かつての恋人を含めた仲間たちとの関係も浮かび上がるような構成になっていて、いかにもフランス人の友人関係らしいと感心、ジュリアン・デュヴィヴィエの「我等の仲間」やロベール・アンリコの「冒険者たち」を思い出して良い気分にして貰えるのが嬉しい。
既成曲の選曲も秀逸で、終盤綱渡りの場面の背景として流れるエリック・サティの二曲「ジムノペディ第1番」「グノシエンヌ第1番」が何とも美妙。
しかし、全く気に入らないことに、未調整のワイドTVのように4:3のスタンダード・フィルムが16:9のサイズに変換されているところがあるのだ。なんてこった。
今となってはWTCが観られるだけでも収獲かも。
2008年イギリス=アメリカ映画 監督ジェームズ・マーシュ
ネタバレあり
高所恐怖症の僕には全く縁のない世界である綱渡りで世間の耳目を騒がせたフランス人フィリップ・プティが、1974年に完成したばかりの(映画を見る限り完全に完成していたわけではないようだ)ワールド・トレード・センターのツイン・タワーの間にロープを張ってそこを何往復もした末に逮捕された経緯が、本人を含めた関係者たちの証言、当時のフィルム及び再現ドラマを交えて語られるドキュメンタリーである。
中心となるのは、仲間二人とこっそりビルに侵入して警備員の目をかいくぐって深夜に準備を進めるくだりで、関係者の話を聞くだにサスペンスフル。再現ドラマも加えられているが、きっちりサスペンス映画風な仕立てにはなっていないので、誰かきちんと劇映画にしてくれないかという馬鹿げた考えが脳裏を過ったほどだ。
やがて朝が来て綱渡りを決行する場面は大事な部分が全てスティル・ショットというのが残念。しかし、本人が笑っているのでハラハラよりは気分の高揚や爽快感が伝わってくる。また、映画の功績とは言えないものの、綱渡りの背景に飛行機が飛んでいるスティル・ショットは抜群にフォトジェニック。
かつての恋人を含めた仲間たちとの関係も浮かび上がるような構成になっていて、いかにもフランス人の友人関係らしいと感心、ジュリアン・デュヴィヴィエの「我等の仲間」やロベール・アンリコの「冒険者たち」を思い出して良い気分にして貰えるのが嬉しい。
既成曲の選曲も秀逸で、終盤綱渡りの場面の背景として流れるエリック・サティの二曲「ジムノペディ第1番」「グノシエンヌ第1番」が何とも美妙。
しかし、全く気に入らないことに、未調整のワイドTVのように4:3のスタンダード・フィルムが16:9のサイズに変換されているところがあるのだ。なんてこった。
今となってはWTCが観られるだけでも収獲かも。
この記事へのコメント
あの静止画面でしょう?
私もせっかくあそこまで持って
いきながらまるで臨場感のない
45分間上空にいて8回も往復したって
後から言われたってね~(- -)
でも春の嵐の中、わざわざ映画館に
でかけて観てよかったと思いましたよ。
命がけの冒険と遊びごころ・・・
男の子、男の子、してましたね。(^ ^)
>スティル・ショット
厳密に言えば、既成の写真を取り込んだのであって、映画技法としてのスティル・ショットではないですけど、面倒くさいのでそう表現してみました。
しかし、検索エンジンで調べてみたら、スティル・ショットという言葉自体が余り使われていないようで、びっくりしましたです。
>8回も往復したって後から言われたってね~(- -)
あははは。
あれを誰も撮っていなかったというのも間の抜けた話ですが、爽快さは伝わってきましたね。
しかし、400m上空でよくもあんな芸当が出来たものです。(*_*)
>冒険と遊びごころ
それで「冒険者たち」を思い出しちゃったわけ。
言わば主人公は凱旋門をくぐろうとしたアラン・ドロンの立場。
ドロンは挫折しましたけどね。
ただただ面白くって夢中になった子供時代。そのまんま大きくなったんですねぇ、彼は。
アメリカ人はすぐに理由をつけたがる。それってナンセンスだよって言っていた彼のコメントが印象的だった。こんなところがフランス人かしらね。
これは家のリフォーム時期と重なって劇場に行く余裕がなくって残念。それと明日アップするんだけどシドニー・ルメット監督の「その土曜日、7時58分」も。
これもWOWOWで放映されてましたよね。圧倒されました。これも劇場鑑賞できなかったのが残念。
>そのまんま大きくなったんですねぇ
僕も冒険心はあったけど、高所恐怖症だから綱渡りはダメだなあ。
それはともかく、彼は生まれつきバランス感覚が人間離れしているので、才能もあったということですよね。
>アメリカ人はすぐに理由をつけたがる。
色々な映画を観ていても、アメリカ人はそういう傾向即ち合理主義的なのがよく解りますね。
その一方で、「裸足で砂漠を歩き出す『モロッコ』の幕切れをナンセンスと言ったのはフランス人らしからぬ野暮だ」と双葉さんが述懐していたのを思い出します。^^