映画評「少年メリケンサック」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・宮藤官九郎
ネタバレあり
監督デビュー作「真夜中の弥次さん喜多さん」が死を巡る陰湿なお話に同性愛ネタを絡めたこともあって今一つ肌に合わなかった脚本家・宮藤官九郎の監督第二作は笑いのピントが素材に合っているので前作より幅広い観客層に受けそうな印象あり。
レコード会社の新人発掘部の契約社員宮崎あおいが、辞める前日にネットで発見した“少年メリケンサック”というパンクバンドに可能性を感じ、社長ユースケ・サンタマリアに報告したところGOサインが出る。
ところが、実際にメンバーのベイシストに逢ってみると50がらみの疲れた中年男(佐藤浩市)なのでがっかり。その弟であるギタリスト(木村祐一)は腹の出た中年男で兄とは犬猿の仲、ボーカリスト(田口トモロヲ)は二人の暴力騒動に巻き込まれた後遺症による麻痺、といった具合にとても演奏どころではない。
ネットで発見した映像は25年前のものと判明するが、ネット上で人気が爆発した為に後に引けなくなりメンバーの尻を叩いてツアーを敢行。甘いラブソングを歌っている歌手志望の勝地涼を恋人に持つあおい嬢がやる気も体力もないメンバー4人と珍道中を繰り広げる。
先般観た「デトロイト・メタル・シティ」はジキル博士とハイド氏のような二重生活で笑わせたのに対し、こちらは格好良さをすっかり失った中年が反体制的なパンクをするというギャップで笑わせるわけで、どちらもシチュエーションの可笑しさをベースにしたもの故に笑いが長続きする。
かくしてロードムービー部分でゲラゲラ笑わせた後、遂に漕ぎつけたスタジオ演奏場面が傑作。即ち、田口氏がもとらない口で「ニューヨークのマラソン~」と歌っていると思われた歌詞が実際には過激な歌詞と判明したり、右腕と左腕を怪我した兄弟に抱き合わせでギターを弾かせ、勝地をにわかパンク野郎に変身させてベースを弾かせる・・・という具合に登場人物を無駄なく上手く扱って抜群に面白い。
難点はあおい嬢を探して走り回った後突然バンドの演奏力が復活する理由が全く解らないこと。走り回った結果体力でも付いたのかな?
宮崎あおいはやはりTVのスケールで収まる女優ではないことを証明する実力を発揮し、面白い顔ぶれのベテラン男優陣も好調。
僕も25年前と精神的には変わらず、見た目とのギャップが広がるばかり。考えさせられますな。
2008年日本映画 監督・宮藤官九郎
ネタバレあり
監督デビュー作「真夜中の弥次さん喜多さん」が死を巡る陰湿なお話に同性愛ネタを絡めたこともあって今一つ肌に合わなかった脚本家・宮藤官九郎の監督第二作は笑いのピントが素材に合っているので前作より幅広い観客層に受けそうな印象あり。
レコード会社の新人発掘部の契約社員宮崎あおいが、辞める前日にネットで発見した“少年メリケンサック”というパンクバンドに可能性を感じ、社長ユースケ・サンタマリアに報告したところGOサインが出る。
ところが、実際にメンバーのベイシストに逢ってみると50がらみの疲れた中年男(佐藤浩市)なのでがっかり。その弟であるギタリスト(木村祐一)は腹の出た中年男で兄とは犬猿の仲、ボーカリスト(田口トモロヲ)は二人の暴力騒動に巻き込まれた後遺症による麻痺、といった具合にとても演奏どころではない。
ネットで発見した映像は25年前のものと判明するが、ネット上で人気が爆発した為に後に引けなくなりメンバーの尻を叩いてツアーを敢行。甘いラブソングを歌っている歌手志望の勝地涼を恋人に持つあおい嬢がやる気も体力もないメンバー4人と珍道中を繰り広げる。
先般観た「デトロイト・メタル・シティ」はジキル博士とハイド氏のような二重生活で笑わせたのに対し、こちらは格好良さをすっかり失った中年が反体制的なパンクをするというギャップで笑わせるわけで、どちらもシチュエーションの可笑しさをベースにしたもの故に笑いが長続きする。
かくしてロードムービー部分でゲラゲラ笑わせた後、遂に漕ぎつけたスタジオ演奏場面が傑作。即ち、田口氏がもとらない口で「ニューヨークのマラソン~」と歌っていると思われた歌詞が実際には過激な歌詞と判明したり、右腕と左腕を怪我した兄弟に抱き合わせでギターを弾かせ、勝地をにわかパンク野郎に変身させてベースを弾かせる・・・という具合に登場人物を無駄なく上手く扱って抜群に面白い。
難点はあおい嬢を探して走り回った後突然バンドの演奏力が復活する理由が全く解らないこと。走り回った結果体力でも付いたのかな?
宮崎あおいはやはりTVのスケールで収まる女優ではないことを証明する実力を発揮し、面白い顔ぶれのベテラン男優陣も好調。
僕も25年前と精神的には変わらず、見た目とのギャップが広がるばかり。考えさせられますな。
この記事へのコメント
田口トモロウさんは、エロ漫画雑誌で描いていたころから変わった名前なので覚えていて、俳優としてでてきたときは、ビックリしました。
人生色々、紆余曲折ありますね。(^O^)/
>精神的に大人でない自分
そうなんですね。
見かけが老けると精神もそうなるかと思っていたら、そんなことがないわけで、ある意味大変恐ろしいことだと思いました。
>エロ漫画雑誌
へえ~、それは先見の明ありですね。
僕は「鉄男」で初めて知りました。それから「プロジェクトX」のナレーションも印象的でしたね。