映画評「天使と悪魔」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督ロン・ハワード
ネタバレあり
同じ原作者(ダン・ブラウン)・監督(ロン・ハワード)・主演(トム・ハンクス)による「ダ・ヴィンチ・コード」の正統な続編。
ローマ教皇死亡を受けての後継者選び(コンクラーベ)の最中に、イルミナティという中世・近世から断続的に続くらしい秘密結社から、誘拐した四人の枢機卿を一時間ごとに殺害し、午前零時に科学研究所から奪った“反物質”を爆破させてヴァチカンを全滅させる、という脅迫状が届く。
そこで前作で活躍した象徴学者ラングトン(ハンクス)がヴァチカン警察から招聘され、市内警備担当のオリヴェッティ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)、教皇らの警備を専門とするスイス衛兵隊長リヒター(ステラン・スカーシュゴード)、半物質開発関係者の美女ヴィットリア(アイェレット・ゾラ―)、そして前教皇の侍従(ユワン・マクレガー)と手を組んで事件解決に当たるが、宗教や慣習に対する考えの違いにより互いに疑心暗鬼になる部分が出て来る。
というお話で、土・空気・火・水というギリシャ科学の四大元素をベースにした“見立て殺人”がミステリーとしての興味となるが、物凄いスピードで展開するので推理の醍醐味が薄く、どちらかと言えば冒険映画に分類したいような作りになっている。カメラを積極的に動かした華麗な画面構成は楽しめる。
邦画「神様のパズル」にも出て来た反物質が反応して凄まじい爆破を起す終盤で大活躍した後上空から落下傘で降りて来る人物を天使に見立てる発想もタイトルに絡めて秀逸。
お話の底流にあるのは「薔薇の名前」にも似た科学と宗教の対立ではあるものの、総合力で同作と比較するとさすがに厳しい。最近の邦画は内容の割に長すぎて文句ばかり垂れているが、こちらは20分がとこ短いのではあるまいか。
根比べより知恵比べですな。
2008年アメリカ映画 監督ロン・ハワード
ネタバレあり
同じ原作者(ダン・ブラウン)・監督(ロン・ハワード)・主演(トム・ハンクス)による「ダ・ヴィンチ・コード」の正統な続編。
ローマ教皇死亡を受けての後継者選び(コンクラーベ)の最中に、イルミナティという中世・近世から断続的に続くらしい秘密結社から、誘拐した四人の枢機卿を一時間ごとに殺害し、午前零時に科学研究所から奪った“反物質”を爆破させてヴァチカンを全滅させる、という脅迫状が届く。
そこで前作で活躍した象徴学者ラングトン(ハンクス)がヴァチカン警察から招聘され、市内警備担当のオリヴェッティ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)、教皇らの警備を専門とするスイス衛兵隊長リヒター(ステラン・スカーシュゴード)、半物質開発関係者の美女ヴィットリア(アイェレット・ゾラ―)、そして前教皇の侍従(ユワン・マクレガー)と手を組んで事件解決に当たるが、宗教や慣習に対する考えの違いにより互いに疑心暗鬼になる部分が出て来る。
というお話で、土・空気・火・水というギリシャ科学の四大元素をベースにした“見立て殺人”がミステリーとしての興味となるが、物凄いスピードで展開するので推理の醍醐味が薄く、どちらかと言えば冒険映画に分類したいような作りになっている。カメラを積極的に動かした華麗な画面構成は楽しめる。
邦画「神様のパズル」にも出て来た反物質が反応して凄まじい爆破を起す終盤で大活躍した後上空から落下傘で降りて来る人物を天使に見立てる発想もタイトルに絡めて秀逸。
お話の底流にあるのは「薔薇の名前」にも似た科学と宗教の対立ではあるものの、総合力で同作と比較するとさすがに厳しい。最近の邦画は内容の割に長すぎて文句ばかり垂れているが、こちらは20分がとこ短いのではあるまいか。
根比べより知恵比べですな。
この記事へのコメント
>上空から落下傘で降りて来る人物を天使に見立てる発想もタイトルに絡めて秀逸。
んだ!んだ! このシーンなんて結構考えてますよね。秀逸・秀逸(笑)
しかし最近の公開作品でみたい映画のないこと。
先日お家シネマで「メン・イン・ブラック」の1と2を劇場鑑賞以来の再鑑賞して、この頃はこんなに良くできたおバカ映画があって大いに楽しめたのになぁって痛感。溜息交じりでみたい映画がなくってくさっている最近のシュエットです。
前作の「ダ・ヴィンチ・コード」は推理小説というより実際の歴史に関する探究という意味で、シュエットさんが眉唾と言われるところが大変面白かったんですよ。ただ映画を見る前に各TV局の特集で全て知っていたのが残念でしたが。
図書館に原作があったので借りてこようかな。
今度の作品は一般的な冒険ミステリー作品としてはもっと一般的に楽しめるように工夫されていましたね。もう少し「見立て殺人」の場面をじっくり見せたほうがミステリー・ファンとしては有難かったのですが、快調に楽しめたことは確か。物凄いテンポだったのは、各スパンが1時間しかないということを感じさせる配慮なんでしょうね。
確かに。歴史に隠されたものなんてのはもともと大いに興味をそそられる方なんで、そういう点では原作も映画もふむふむと面白かったし、テンプル騎士団なんかはワクワクするほど興味ありだったわ。ただ、どうも聖杯伝説がねぇ…。実際キリスト教世界では巷ではどんな話が流布されてるんでしょうね。諸説さまざまなんでしょうけどね。「天使と悪魔」で面白かったのは、壮麗なる建物の地下にある牢獄とか、よく知られているんだけど、そういう宗教のダークな部分ってのにも大いに興味ありなんで、こっちの方が面白かったのかな?
ケンフォレット原作で12世紀のイングランドを舞台にした「大聖堂」の映画化を観たいなって思う。原作は読まれました? 正統派の歴史大作がみたいなって思う。最近少ないですよね。
それと、ブログやってられる方ってvivajijiさんなんかも映画グループで文章書いてらした方も多いんですね。私は仕事で議事録まとめたりなんかの程度で、自分の考えを文字にしてアウトプットすることって、せいぜいPTAがらみで、あとは考えたら大学の卒論以来ですわ(笑)。ただ頭の中であれこれ散らばっているのを言葉と文字にまとめて、自分の中できちんきちんと押しピン押していくって、これは頗る快感でもありますねぇ(笑)。だからブログも続いているのかも。
僕は第1作第2作とも☆☆☆★なのでかなり楽しんだわけですが、ちょっと持ち味が違う感じがあり、並べて鑑賞しないと優劣は決め難いです。
僕にとって宗教ミステリー(映画)は「薔薇の名前」が基準。これを超える作品はなかなか出来そうもないなあ。
>「大聖堂」
殆ど新しい小説、特に映画化されそうなのは読まない僕です。
最近は読む古典がなくなってきたので、新しい(と言っても1960年以降くらい)のも物色中です。シュエットさんがお好きらしい大江健三郎もぼちぼち読み始めたところ(笑)。
映画はまっ白な状態で見るものと思っているので、用心棒さんみたいにどう映画化されるかというのを楽しむ境地にはなかなかなれないものです。
>議事録
懐かしい響き!
尤も、僕は会社では90%以上英文でした。
作文が苦手だから大学生になった時から映画評を書き始めたのですけどね。流れるような文章はとても書けない。まだ英文の方が綺麗な文章が書けそうな気がしますよ。よく話をしたアメリカ人の印象では、相当文語的らしいですが(笑)。
宗教と科学を絡めて語っていくというやり方は効果的だったと思います。また映像的にもヨーロッパらしい宗教文化が良い雰囲気をかもし出し、劇場で観ていて、楽しかったのを覚えています。
今年最初にアップしたのも旧約聖書の有名エピソードの映画化である『天地創造』でしたので、一緒にTBさせていただきますね!
ではまた!
宗教ミステリーは多くないですが、なかなか楽しいものが多いですね。僕はこのシリーズは結構気に入っているんですよ。
>『天地創造』
前に触れたような気がしましたが、ほやほやの記事でしたか。^^;
旧約聖書では「十戒」「ソドムとゴモラ」「サムソンとデリラ」などスペクタクルが多く、これまた楽しいですね。
『薔薇の名前』のような陰鬱さと深さには及びませんでしたが、なかなかの楽しさでしたね。欧米人の思想の基礎となっている旧約聖書を完全に理解するのは無理でしょうが、せめて知識としては知っておくべきだと思いました。
旧約聖書の世界観の映画化というとセシル・B・デミルやジョン・ヒューストンのような“大きい”映画を撮る人しか出来ないでしょうね。今ならスピルバーグかエメリッヒとかになるんでしょうね。
『2012』なんか現代版のノアの方舟でしたが、今作ったらSFモノになってしまうんでしょうかね。ではまた!
>旧約聖書
有名なお話くらいは知っていますが、詳細にはこれから勉強です。
できれば、vivajijiさんのアドバイスに従って、聖書と解説書みたいなのを並べて勉強したいと思います。
>『2012』
動物まで載せていましたから、正にノアの箱舟の現代版でしたね。
本質的にはSFも神話も似ているかもしれません。