映画評「ザ・スピリット」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督フランク・ミラー
ネタバレあり
ロバート・ロドリゲスと共同監督した「シン・シティ」が好評だったフランク・ミラーの単独監督作品。
ゴッサム・シティならぬセントラル・シティ。この街を守るスーパー・ヒーロー、ザ・スピリット(ガブリエル・マクト)が仇敵オクトパス(サミュエル・L・ジャクスン)と対決する間、その傍らのウォーターフロントでは沈没船から世界的な女泥棒サンド・サレフ(エヴァ・メンデス)が“黄金の羊毛”の入った箱を引き上げ、オクトパスの部下シルケン・フロス(スカーレット・ヨハンスン)が“ヘラクレスの血”の入った箱を持ち去ろうとしている。結局、別の品物を持ち帰ったことに気付いた二組が交換を取り決めたのを受け、スピリットはオクトパスを倒しサンドを逮捕すべく、取引現場に乗り込む。
日米共に評判が誠に悪いが、僕には他のアメコミ映画版同様暗くて気勢が上がりにくい「シン・シティ」より面白かったくらい。構成に難があって見通しが良いとは言えないものの、お話が単純で、アメリカン・コミック本来の楽しさが見出せるからである。少なからぬ女性陣の絡め方はハードボイルド映画風と言える。
終盤における“黄金の羊毛”の使い方もなかなか洒落ているし、また、ヒトラー、ギリシャ神話など西洋文化をある程度知っていればお笑いとして相当楽しめる。
しかし、断然ヨロシイのは全てのショットが劇画そのものに仕立てられていること。劇画通りだから嬉しいのではなく、構図が劇画的にすこぶる美しく感心させられたのである。彩度を下げた色調に赤だけを強調した映像はモノクロに一点だけ色を付けるのを繰り返した「シン・シティ」より好ましい。
どなたかのご指摘通り1960年代の鈴木清純が狙った映像世界に近く、「東京流れ者」みたいだ。
ミラーさんと会ったら鈴木さんは「君は僕を“鏡”で映したようだ」とフランク(率直)に仰るでしょう。
2008年アメリカ映画 監督フランク・ミラー
ネタバレあり
ロバート・ロドリゲスと共同監督した「シン・シティ」が好評だったフランク・ミラーの単独監督作品。
ゴッサム・シティならぬセントラル・シティ。この街を守るスーパー・ヒーロー、ザ・スピリット(ガブリエル・マクト)が仇敵オクトパス(サミュエル・L・ジャクスン)と対決する間、その傍らのウォーターフロントでは沈没船から世界的な女泥棒サンド・サレフ(エヴァ・メンデス)が“黄金の羊毛”の入った箱を引き上げ、オクトパスの部下シルケン・フロス(スカーレット・ヨハンスン)が“ヘラクレスの血”の入った箱を持ち去ろうとしている。結局、別の品物を持ち帰ったことに気付いた二組が交換を取り決めたのを受け、スピリットはオクトパスを倒しサンドを逮捕すべく、取引現場に乗り込む。
日米共に評判が誠に悪いが、僕には他のアメコミ映画版同様暗くて気勢が上がりにくい「シン・シティ」より面白かったくらい。構成に難があって見通しが良いとは言えないものの、お話が単純で、アメリカン・コミック本来の楽しさが見出せるからである。少なからぬ女性陣の絡め方はハードボイルド映画風と言える。
終盤における“黄金の羊毛”の使い方もなかなか洒落ているし、また、ヒトラー、ギリシャ神話など西洋文化をある程度知っていればお笑いとして相当楽しめる。
しかし、断然ヨロシイのは全てのショットが劇画そのものに仕立てられていること。劇画通りだから嬉しいのではなく、構図が劇画的にすこぶる美しく感心させられたのである。彩度を下げた色調に赤だけを強調した映像はモノクロに一点だけ色を付けるのを繰り返した「シン・シティ」より好ましい。
どなたかのご指摘通り1960年代の鈴木清純が狙った映像世界に近く、「東京流れ者」みたいだ。
ミラーさんと会ったら鈴木さんは「君は僕を“鏡”で映したようだ」とフランク(率直)に仰るでしょう。
この記事へのコメント
僕は個人的嗜好もあって、こういうお遊び映画が楽しくてしょうがありません。
特に、女優陣は、なかなか色っぽくて気に入っています(笑)
最近の、というか、日本人は昔から真面目な作風を好む傾向にあり、こういう作品は評価されないことが多いですね。
まあ本作には語りの面で難が相当あるのは確かなのですが、ここまで映像を作り込むと余り文句を言わないでも良いでしょう。
>女性陣
良いですなあ。(笑)