映画評「サガン -悲しみよ こんにちは-」
☆☆★(5点/10点満点中)
2008年フランス映画 監督ディアーヌ・キュリス
ネタバレあり
僕が本格的に小説を読み始め映画を観始めた1970年代初めフランソワーズ・サガンは我が邦でも大人気だったが、未だに彼女の作品を読んでいない。「悲しみよこんにちは」「ある微笑」「さよならをもう一度(ブラームスはお好き)」「別離(熱い恋)」の映画版を観ているだけである。
1954年18歳の時に発表した「悲しみよこんにちは」がセンセーションを呼んで時代の寵児になったサガン(シルヴィー・テスチュー)は舞い込んできた莫大な財産を賭博や取り巻き連中との豪遊で使い果たし、新作に対する兄の酷評にショックを受けて交通事故を起こし、その治療で痛み止めとして使ったモルヒネの常習性に悩んでコカインに手を出し、二度の結婚に失敗して一人儲けた息子との信頼関係構築を果たせず、モデル出身の女友達ペギー・ロッシュ(ジャンヌ・バリバール)の死後晩年は病気と孤独に苦しめられる。
これだけ自滅的で波乱に富んだ人生だから映画としては比較的長いと言えども122分ではどうしても駆け足的になって掘り下げが不足し、結果物足りなさを覚えるのはやむを得ない。フランスで観られた180分バージョンはもう少しじっくり解り易く作られているのだろう。
二人の夫よりもペギーとの人生をぐっと長く扱うアイデアはサガンの両性愛を強調する目的なのかもしれないが、やはりオリジナルの長さで判断したいものだ。
その彼女との付き合いの始め、泥酔したサガンが「歩くこともできない」と言いながらペギーに支えられてホテルの廊下を歩くショットは彼女の後半生のアレゴリーになっていて印象的。
その後半生は122分版でもじっくり描かれ、特にペギー亡き後孤独に苛まれる一連の場面にはしんみりさせられる。「『悲しみよ こんにちは』は世界の事件だったが、(中略)その死は彼女だけの事件だった」が彼女自身が考えた墓碑銘とは、余りに悲しい。
平凡でも“のんきな父さん”で居られる僕の方が幸せだなあ。
2008年フランス映画 監督ディアーヌ・キュリス
ネタバレあり
僕が本格的に小説を読み始め映画を観始めた1970年代初めフランソワーズ・サガンは我が邦でも大人気だったが、未だに彼女の作品を読んでいない。「悲しみよこんにちは」「ある微笑」「さよならをもう一度(ブラームスはお好き)」「別離(熱い恋)」の映画版を観ているだけである。
1954年18歳の時に発表した「悲しみよこんにちは」がセンセーションを呼んで時代の寵児になったサガン(シルヴィー・テスチュー)は舞い込んできた莫大な財産を賭博や取り巻き連中との豪遊で使い果たし、新作に対する兄の酷評にショックを受けて交通事故を起こし、その治療で痛み止めとして使ったモルヒネの常習性に悩んでコカインに手を出し、二度の結婚に失敗して一人儲けた息子との信頼関係構築を果たせず、モデル出身の女友達ペギー・ロッシュ(ジャンヌ・バリバール)の死後晩年は病気と孤独に苦しめられる。
これだけ自滅的で波乱に富んだ人生だから映画としては比較的長いと言えども122分ではどうしても駆け足的になって掘り下げが不足し、結果物足りなさを覚えるのはやむを得ない。フランスで観られた180分バージョンはもう少しじっくり解り易く作られているのだろう。
二人の夫よりもペギーとの人生をぐっと長く扱うアイデアはサガンの両性愛を強調する目的なのかもしれないが、やはりオリジナルの長さで判断したいものだ。
その彼女との付き合いの始め、泥酔したサガンが「歩くこともできない」と言いながらペギーに支えられてホテルの廊下を歩くショットは彼女の後半生のアレゴリーになっていて印象的。
その後半生は122分版でもじっくり描かれ、特にペギー亡き後孤独に苛まれる一連の場面にはしんみりさせられる。「『悲しみよ こんにちは』は世界の事件だったが、(中略)その死は彼女だけの事件だった」が彼女自身が考えた墓碑銘とは、余りに悲しい。
平凡でも“のんきな父さん”で居られる僕の方が幸せだなあ。
この記事へのコメント
でしょうか。ご自愛ください。
さて本作の私めの感想はといいますと…
<サガンを知るには彼女の小説を読むのが一番だと思うし、観終わったあと、なんでこの映画を撮る必要があったのだろうって、やっぱり製作意図がわからない。>となりました。
サガン演じたシルヴィー・テステューは他にも彼女の出演作を何本か観たことあるけれど、なかなかの女優みたい。
サガンは「悲しみよ、こんにちは」を読むのが一番かと思うナァ。
>平凡でも“のんきな父さん”で居られる僕の方が幸せだなあ。
こう暑いと尚更そう思うこの頃でございます(笑)
先日の休みはWOWOW録画していた「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー」3作。やっぱ面白いナァと3本ぶっ通して見ておりました。それからBSで「スター・ウォーズ」シリーズ順放映で、今日は最終の「ジェダイの帰還」ダースベイダーg息子ルークによって闇黒面から救い出されジェダイとして葬られる。ドラマよね~泣けるよね~と浸ります!(6本ともDVD持ってるから敢えて観んでもいいのにね)エピソード4にあたる一番最初の公開作品がやっぱ一番面白い。インディ・ジョーンズといい、この頃の作品って何度観ても楽しませてくれますねぇ。楽しゅう映画見るのが一番よろしいナァ(笑)
サガンのフランスからアメリカに話が飛んでしまって…
>恙無く
実は4月から6月前半くらいまでは、病院へ駆け込むほどではないですが、不調でして、薬が余りに高いのでどうも時々抜いたのが悪いのだろうと、最近は真面目に飲んでおります。
おかげさまでその後は大分良好で、父親の見舞いと看護に勤しむ日々。
>サガン
そうかもしれませんね。
音楽家や美術家に比べると、作家の伝記映画が割合少ないのはご本人が書いたものを読めば大体のところは掴めるからでしょうか。
>BTTFシリーズ
ふーむ、ブルーレイ・レコーダーを買ってから何でも録画したくなって、特にシリーズ物は3倍で録画(通常録画と区別できないほど画質は良いです)して一枚に収めております。但し、ハイビジョン放送でないのは価値が下がるので、今回のBTTFはスキップ。
「インディ・ジョーンズ」シリーズは昨年DVD化したけれど、ブルーレイとは比較にならず、もはや無価値も同然。あらら。
スピルバーグでは「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」抱き合わせで一枚焼きました。こちらもDVDがパー。誰かにあげようっかな。^^
>「スター・ウォーズ」シリーズ
で、当然ブルーレイ待機組です。
こちら雷の大量発生地でありまして、雷雨による受信障害を危惧しておりましたが、五日間は無事に終わりました。今日が無事に録画できればブルーレイ化します。神様、お頼み申します。
また、NHKなので、地震等があると字幕だらけになる危険性もありますが、今のところそんな不都合もないようで、こちらも後一日。頼みます。
そんな風に日々を過ごしております。^^
>「スター・ウォーズ」シリーズ 当然ブルーレイ待機組です
さっき用心棒さんのブログお邪魔したらエピソード6のサブタイトル「ジェダイの帰還」に拘っていて、彼の中では「ジェダイの復讐」なんだって。許せないのが新シリーズのアナキン役のヘイデンがオビワンとヨーダの横にいる事だって!ブルーレイは当然「ジェダイの帰還」だし、アナキンもいるよね(笑)
でもなんだかんだいってスターウォーズいいよね。「ブレードランナー」なんかもブルーレイだと映像がさらにいいだろうね。
いいおもちゃができたわね。夏の暑さも跳ね除けてP様の今年の夏は録画してせっせとブルーレイにいそしむ日々ですナァ。
私はDVD
>スター・ウォーズ
聞いて下さいよ。
神様にお願いしたのに、何と6日目にして雷でおじゃんになってしまいました。うわぁ~ん。
一応5本をブルーレイ化しましたが、不完全で気持ちが悪い。
ハイビジョンで再放映を頼みますよ、NHKさん。
>VHS
VHSライブラリーは1000本くらいあります。
相当な貴重品もあるでよ。^^
>ブルーレイになるのってたいていハリウッド映画でしょ?
公式版はね。
だから、せっせとハイビジョンで放映された時に作るんですよ、自分で。
来年7月からNHK-BS3はなくなって、NHK-BS1と2がハイビジョンになるので、今まで通りばんばん古い映画をハイビジョンでやって欲しいですが、地上波の代替放映の問題もあるので、そうこちらが願っているように行くかどうか。
保存版はWOWOWがより適しています。ハイビジョンでの本放送の時には地震情報など一切無視しますから。
>「ブレードランナー」
「エイリアン」シリーズ共々これもDVD化したんだよなあ。^^;
>今年の夏
後は雷雨だけに襲われないように願うだけです。
あの墓碑はなかなかですね。
日本はほとんど墓碑にその人の何事かを刻む伝統はないですね。
それがまた、民族性なのかもしれません。
>墓碑
悲しい墓碑銘でもありましたけどね。
キリスト教徒でもない限り墓碑銘というのは聞かないですね。
輪廻転生の考えと関連性でもあるのでしょうか。