映画評「レオン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1994年アメリカ映画 監督リュック・ベッソン
ネタバレあり
リュック・ベッソンの代表作と目されているサスペンスで、いつの間にかIMDbで35位とジャンプアップしているが、その評価には些か疑問が残る。
ニューヨークのリトル・イタリー、元締めトニー(ダニー・アイエロ)の下で働く殺し屋レオン(ジャン・レノ)が、隣室に住む一家が麻薬ギャングに襲撃された時に偶然買い物に出て危機を逃れた十二歳の次女マチルダ(ナタリー・ポートマン)を救い、父と娘に成り済ましてホテルに滞在、犯人に復讐することを胸に誓う少女に銃器の使い方を教える。彼女は彼に読み書きを教え愛情を注ぎ、彼のいない間に単独でギャングのボス実は麻薬取締局の捜査官(ゲイリー・オールドマン)を殺しに事務所に潜入するが逆に捕囚となり、そこへレオンが駆けつけ、以降両者の抗争がところを変えて展開する。
リメイクもされたジョン・カサヴェテスの傑作「グロリア」の男女関係をひっくり返したようなお話で、フランス映画の伝統的なスローさではなく切れ味を持ち味とするベッソンとしてはフランス的と言うか、やや鈍重な感じがする。それはやはり僕がサスペンスとして観すぎる為で、疑似親子というよりは年の離れた恋人のように二人を捉え一種の恋愛映画の要素を持ち込んだベッソンの意図との齟齬みたいなものだが、どうしても「グロリア」のハードボイルドぶりと比較してしまい物足りなさを覚えてしまうのだ。
そんなことを言いつつ、少女が彼の愛でていた観葉植物を校庭の片隅に植える幕切れにじーんとしてしまう涙もろい僕ではあります。
レノの殺し屋はストイックという以上に少年のような純真さが面白い。本作でデビューしたナタリーは既に眼力があって本作一番の収穫、その後の活躍はご承知の通り。オールドマンの狂気をにじませる悪党ぶりも悪くないが、これ以降のフィルモグラフィーの偏った傾向を観ると彼自身の芸歴にプラスになったかどうかは疑わしい。
観葉植物は観賞、映画は鑑賞するものです。
1994年アメリカ映画 監督リュック・ベッソン
ネタバレあり
リュック・ベッソンの代表作と目されているサスペンスで、いつの間にかIMDbで35位とジャンプアップしているが、その評価には些か疑問が残る。
ニューヨークのリトル・イタリー、元締めトニー(ダニー・アイエロ)の下で働く殺し屋レオン(ジャン・レノ)が、隣室に住む一家が麻薬ギャングに襲撃された時に偶然買い物に出て危機を逃れた十二歳の次女マチルダ(ナタリー・ポートマン)を救い、父と娘に成り済ましてホテルに滞在、犯人に復讐することを胸に誓う少女に銃器の使い方を教える。彼女は彼に読み書きを教え愛情を注ぎ、彼のいない間に単独でギャングのボス実は麻薬取締局の捜査官(ゲイリー・オールドマン)を殺しに事務所に潜入するが逆に捕囚となり、そこへレオンが駆けつけ、以降両者の抗争がところを変えて展開する。
リメイクもされたジョン・カサヴェテスの傑作「グロリア」の男女関係をひっくり返したようなお話で、フランス映画の伝統的なスローさではなく切れ味を持ち味とするベッソンとしてはフランス的と言うか、やや鈍重な感じがする。それはやはり僕がサスペンスとして観すぎる為で、疑似親子というよりは年の離れた恋人のように二人を捉え一種の恋愛映画の要素を持ち込んだベッソンの意図との齟齬みたいなものだが、どうしても「グロリア」のハードボイルドぶりと比較してしまい物足りなさを覚えてしまうのだ。
そんなことを言いつつ、少女が彼の愛でていた観葉植物を校庭の片隅に植える幕切れにじーんとしてしまう涙もろい僕ではあります。
レノの殺し屋はストイックという以上に少年のような純真さが面白い。本作でデビューしたナタリーは既に眼力があって本作一番の収穫、その後の活躍はご承知の通り。オールドマンの狂気をにじませる悪党ぶりも悪くないが、これ以降のフィルモグラフィーの偏った傾向を観ると彼自身の芸歴にプラスになったかどうかは疑わしい。
観葉植物は観賞、映画は鑑賞するものです。
この記事へのコメント
プロフェッサーならとっくに取り上げて
らっしゃると思ってましたが~(^ ^)
そうですね~「グロリア」似ですけれど
カサヴェテスの乾いた味は到底望めませんね。
かなりウェットで哀しみチックな味わいの
復讐兼殺し屋映画でしょう。
ジャン・レノはこの頃どうしたか見ませんが
ポートマンはポシャラないでこの作品の成功を
土台に堅実に女優への道のりを
のぼっているようですね。(^ ^)
結構有名な作品を挙げていないんですよネエ。
90年代の影響力のある三大作品?の残る二本「パルプ・フィクション」「シックス・センス」も避けています。
どうも誉めきれないので・・・(笑)
ベッソンもやはりフランス人だったか、というところがあって、
「サムライ」で孤独なアラン・ドロンが小鳥を愛でるように観葉植物を愛でていますね。
鈍重とは言ったものの構成はコンパクト。しかし、僕はもう一つ乗り切れないんだなあ、何度観ても(と言っても二度目です)。
でも、ブルーレイでハイビジョン保存版作りますから許して下さい。<(_ _)>
>ジャン・レノ
CMで観ていたのでうっかりしていましたが、そう言われれば映画では観られませんね。
今月WOWOWが放映する「ピンクパンサー2」で第1作に引き続き観られるようですが、ちょっとお寒い。
「サムライ」はわたし的には9点献上の大好きなノワール映画で、個人的にはあの映画のアラン・ドロンはストイックであると同時に、脆さというか儚さみたいな雰囲気もあって刺さりましたね。
それと比較してしまったら「レオン」は可哀相かもしれませんが・・・でもイマヒトツな感じです。
たぶんジャン・レノとナタリー・ポートマンの擬似恋愛ちっくな持っていき方が、一歩間違えると「ロリコンかいっ」って感じてしまったのも、乗り切れなかった要因かと 苦笑
でも時々、ハッとさせられるような「絵」もあったりで、やっぱりベッソンは「漫画は読むけど本は読まない人」みたいな、良くも悪くも”漫画的”な画作りのヒトですね。
ゲイリー・オールドマンは無名時代に出た「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」は素晴らしかったです!
でも「レオン」以降はなんだかビミョーに「割といがちな性格俳優」になってしまいましたねぇ。
>「サムライ」
監督をしたメルヴィルの映画の静謐さはちょっと独自で、この作品はその頂点でしたね。
あの作品でのドロンは虚無的で見事なまでに格好良い。5年後の「スコルピオ」では猫を愛でていましたが、これは模倣で感心できなかった。^^;
レオンは非常に純粋で、精神年齢が12歳くらいなんですね、きっと。
何かで読みましたが、ナタリーもそう言っているらしい。
ジャン・レノがそれを表現できているかどうか僕には判断致しかねますが。
>ハッとさせられるような「絵」
確かに。
僕もその辺りについて一言を書いたり消したり迷った挙句、気力が足りず具体的に書く素材が見つからなかったので、結局残さなかったんですよ。^^;
>「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」
これ、「ハムレット」からの抜粋ですよね?
名前はよく聞きますが未だ観ず終い。どうもすみません。
フランスのアクション系、フィルム・ノワール系は、伝統的なものだと思っていますけれど、これも、その例には漏れない作品かな?
わたしは、「レオン」は「シベールの日曜日」がモチーフになっているような気がしてなりません。いわゆるロリータ・コンプレックスは、正常な感覚ではないかもしれませんし、性的なものがどのくらい双方の内部に発生しうるかは、あまり知りたくもないことですし、しかし、一般的な嫌悪感で人間の複雑な感性を否定したくもありません。考え込んじゃいますよ。
ところで、最近、「映画伝説ジャン・ピエール・メルヴィル」という本を購入いたしました。ひさびさメルヴィルに、はまっていますよ。
で、ドロン三部作続けてDVD鑑賞してしまいました。一般的には評判悪いんですけれど、「リスボン特急」の魅力に取り憑かれています。主演のドロンでさえ失敗作だといってるんですけれどね・・・。
では、また。
>伝統的
ベッソンが脚本を書いた諸作品はアンチ伝統的スタイルと感じていましたし、この「レオン」も当時は新感覚と思って観た記憶がありますが、今回見直したら意外と昔の伝統的風味が残っているように思いましたね。
>「シベールの日曜日」
「シベール」について若い頃はロリコンとは無縁の映画と思っていましたが、今となると何とも言えないですねえ。
言われてみると、幕切れの悲劇性とか共通する面もありますね。
いずれにしても世間のロリコン=犯罪性という考えは些か短絡に過ぎ、それが高じて生まれた大人が知らない子供に挨拶の声すら掛けられないような現在のムードは寧ろ病的な感じがします。
>「リスボン特急」
へぇ~、ドロン自身が。( ..)φメモメモ
確かに昔観た時は面白いと思わなかったですが、子供時代ですから・・・。
DVDに保存してありますが、何でも食するタイプにつきなかなか観る時間が見つけられません。^^;