映画評「真夏のオリオン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・篠原哲雄
ネタバレあり

近年邦画でも戦争映画が増えたのはどういうわけかよく理解できないが、本作は珍しくも余り深刻ぶらずに観ることができる娯楽作である。
 ベテラン映画ファンなら途中で1957年製作のアメリカ映画「眼下の敵」からお話を拝借しているのにお気付きになるだろう。と書けばお話については説明したのも同様。

ドイツ軍クルト・ユルゲンスに相当する日本軍潜水艦の艦長が玉木宏、アメリカ軍駆逐艦の艦長ロバート・ミッチャムに相当するのがデーヴィッド・ウィニングで、ミッチャムが身内を敵軍の魚雷で失っているという設定まで戴いている。で、虚々実々の作戦を繰り返すうちに互いの軍人としての資質に敬意を払う好敵手となっていくわけである。かの作品では勝敗なし、本作でも戦争終結により引き分けに終わる。

日本の戦争映画らしからず明朗にスポーツの試合感覚で作られているのは珍しいと膝を打ったものの、「眼下の敵」ほど楽しめない。

その理由の一つは作戦が具体的である一方で専門的すぎてどうも解りにくい部分があること。僕の“灰色の脳細胞”が弱って来たのを別にしても単純明快でないのは確かだろう。但し、人間魚雷“回天”の使い方は面白い。

もう一つは回想が二重になる部分があって些かモタつくことである。全体が最年少の乗組員だった鈴木瑞穂(若い時は大賀)の回想なのにその中にさらに主人公の回想らしきものが入るのは映画文法的に甚だぎこちない。それ自体は大目に見るとして、ウィニングの孫から玉木の孫娘・北川景子(若き日の祖母との二役)に戻された手紙自体がお話を展開させる狂言回し兼小道具の役目を果たすので、現在の場面は必要ないとは言わないまでももっと簡素化できる。その結果が「眼下の敵」が95分、こちらが119分という上映時間の差である。

長髪に関しては勿論歓迎出来ないが、潜水艦内なので多少の長さはやむを得ず、肩まで髪が伸びた陸上勤務の軍人が出て来る(がパラレル・ワールドという扱いなので看過されがちな)「ローレライ」に比べれば大分マシ。

駆逐艦と潜水艦に関しては本物と大型模型が使われているようで本格的、潜水艦内部についてもかなり正確らしい。

戦争映画に「楽しめない」といった表現を使ったらきっと叱られますな。どうもすみません。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2010年07月11日 06:54
長髪はありえないし・・・
夜の六本木のクラブのほうが似合いそうな女性を配役するのも・・・
オカピー
2010年07月11日 23:44
ねこのひげさん、こんばんは。

>長髪
階級の上の方にはごく一部にいらしたようですが、一般論としてダメですね。
まあロン毛がぞろぞろ出てくる「ローレライ」という作品があるので比較すると観られてしまうんですが。
「ローレライ」はパラレル・ワールドなので批判する方が少ないですが、ああいうロン毛が通用する国民性なら戦争になってないというのが僕の意見です。

>六本木のクラブ
あはは、これは手厳しい。^^
まあ、現在ものの方が明らかに似合う容貌ですかね。

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