映画評「プリンセス・シシー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1955年オーストリア映画 監督エルンスト・マリシュカ
ネタバレあり

ナチスの台頭でドイツ及びオーストリアの映画界は凋落、戦後日本に入って来る映画はファミリー映画くらいしかないという惨状が1970年代末まで続いた。本作もそんな一本だが、史実に基づいた王室ロマンスで予想外に楽しめる。後にフランスで名女優になるロミー・シュナイダー主演ということで日の目を浴びた貴重作。

有名なルードヴィヒ2世を生んだバイエルン王家の傍系である公爵の夫人(マグダ・シュナイダー)が長女ヘレーネ=ネネ(ウッタ・フランツ)を、甥であるオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(カールハインツ・ベーム)に嫁がせようと誕生会に乗り込むが、宮廷生活を嫌う自然派の夫の目を誤魔化す為に次女エリザベート=シシー(ロミー・シュナイダー)を連れて来たことにより計画は思わぬ方向へ向っていく。即ち、彼女が釣りを始めた時に通りがかった皇帝に気に入られて二人はすっかり親しくなり、母や姉の思惑とは逆にシシーが婚約者になってしまうのである。

姉を愛し自由を愛する彼女にとっては皇帝の求婚は半ば拷問で非情に困惑するという心境がなかなか面白く描かれているが、そこに至るまでも色々と工夫があって興味が尽きない。

特に暗殺未遂事件を受けて監視を強めた守備隊長のコメディーリリーフが良いアクセントになってなかなか好調。まず軟禁されたシシーが城館を抜け出て、発明されたばかりの電信を使って父親に宛てて電報を送信する。後をつけた隊長が「銃を持って当地に来て」という電報の内容と知ってすっかりテロリストと誤解することから一連の珍騒動が生まれ、多少泥臭い印象を残しながらもくすくす笑わせてくれる。しかも、観客としては笑いながらどういう推移で誤解が解けるか楽しみをもって観続けることができるという仕組み。

終盤は型通りでつまらないが、伯母でもあるゾフィー大公妃(フィルマ・デキッシャー)に対するシシーの凛とした態度が興味深く、続編を観る気にさせるのは有難い。

エリザベートがシシーとなる理由がよく解らない。

この記事へのコメント

シュエット
2010年09月16日 17:04
ずっと覚えていたのに、うっかりと録画予約し忘れてしまって観れてないんだけど、さほどお気に入りの女優というわけでもなかったので、まっイイか…なんですけど、彼女の最後の作品となった「サン・スーシの女」はもう一度見てみたいなってちらっと思ってTSUTAYAにリクエスト。最近、古い作品が無性に観たくなって…レンタルショップもご無沙汰なんですけど、いまや韓国作品が主流で、数十年前の素敵なヨーロッパ映画なんてどんどん隅っこに押しやられ、このリクエスト作品も大阪にはなくって東京の一店舗に在庫があるそうなんですって。ま、こんなことは横においておいて
>エリザベートがシシーとなる理由がよく解らない。
コメントいれたのはこれが私もちょっと気になってなんですけど。
ハンガリー語名ではErzsébet(エルジェベート) この発音からシシーになったのかな?と。
どうでもいいことなんだけど、やっぱりこんなことってちょっと気になりますよね。
シュエット
2010年09月16日 17:17
エリザベートのハンガリー表記がコピーをそのまま貼り付けたからかしら?アップしたら変な文字化けしてるんでもう一度。
Erzsebet
オカピー
2010年09月17日 09:29
シュエットさん、こんにちは。

>まっイイか
僕は割合誉めていますが、他愛無いファミリー映画風ロマンスですので、見逃して残念がる必要もないでしょう。

>韓国作品が主流
韓国映画の水準は日本映画より大分低いし、輸入の中心となっているロマンスは全然当たっていないような気がしますが、TVドラマでしょうかね。
BS放送における韓国ドラマの席捲は恐ろしいほど。金曜日には10本も放映されるので、韓流ドラマファンは悲鳴を上げているのでは?

>シシー
わざわざ有難うございます。
コメント欄は“テキスト”らしく、アクセント記号は表記できないみたいです。
しかし、やはり解らんなあ。(笑)

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