映画評「キャデラック・レコード~音楽でアメリカを変えた人々の物語~」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督ダーネル・マーティン
ネタバレあり
アメリカで独自に生れた最初の黒人音楽(?)ブルースが白人音楽と合体した上で白人音楽の部分を色濃く反映させたのがロックンロール、黒人音楽の部分を反映させたのがR&Bとして発展していった、というのが僕の理解である。音楽研究家ではないから余り信用して貰っても困るが、当らずとも遠からずと思う。この映画にはその全てが出て来る。
1940年代のシカゴで恋人と結婚する為にクラブを始めたポーランド系移民レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)が演奏に呼んだ南部出身ブルース・ギタリスト兼シンガー、マディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)とハーモニカ奏者のリトル・ウォルター(コロンバス・ショート)に才能を見出しチェス・レコードを設立(1950年)、その音楽性の為に白人と間違えられたチャック・ベリー(モス・デフ)を加える(1955年)。
ベリーはロックンロールの創始者の一人と後年考えられるようになるが、売り上げは抜群で、チェスはお金に困ったウォーターズの為にベリーに与えるべき印税の一部を彼に渡している。当たりを取ったアーティストには大金の代わりにキャデラックを買い与えるという変な趣味も持っていたらしい。当時のアーティストがお金の管理について実にいい加減だったということがよく解る一幕(但し序盤のナレーションとやや矛盾する)で、黒人の意識が高まった60年代に彼らの仲が些かこじれるのはこれが直接の原因である。
1960年に当時中堅だったR&Bシンガーのエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)と契約して大ヒットを飛ばすが、彼女は生まれの不幸もあって麻薬に溺れ、チェスと私的な関係が生まれている。初期にレーベルを支えたリトル・ウォルターがアル中の末に抗争に巻き込まれて死ぬという悲劇も起き、1969年人気の下降したレーベルを売り渡した直後失意のチェスは急死してしまう。
ポピュラー音楽界では当たり前の【飲む打つ買う】を交えた展開(但し、音楽界での“打つ”は麻薬のことであります)は型通り、一代記としては駆け足的かつぶつ切り的展開で相当もの足りず映画としてはせいぜい☆☆☆の出来映え。しかし、チェス・レーベルをめぐる音楽実録ものとしては要領良く作られた印象があり興味をそそられるので★一つプラスしましょう。
ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリンなどブルースへの傾倒が認められるロック・アーティストのファンは必見。映画中に出て来る音楽に痺れ、ウォーターズとエタ・ジェイムズのCDが買いたくなったので、早速アマゾンに調べに行ったことを報告しておきます。
しかし、実際に買ったのは何故か(笑)全く関係のないサザン・ロックのアトランタ・リズム・セクション(輸入盤)で、もう少ししたら白人ファンク・バンドのアヴェレージ・ホワイト・バンドを買おうと思っている。エタ・ジェイムズについてはWOWOWで2001年のステージが今晩(9月21日)放映されるので、そちらで暫く勉強します。
黒人俳優さんはいつでも歌手になれるくらい上手い人が多いですね。たいしたたまげた。 by あららのり子
2008年アメリカ映画 監督ダーネル・マーティン
ネタバレあり
アメリカで独自に生れた最初の黒人音楽(?)ブルースが白人音楽と合体した上で白人音楽の部分を色濃く反映させたのがロックンロール、黒人音楽の部分を反映させたのがR&Bとして発展していった、というのが僕の理解である。音楽研究家ではないから余り信用して貰っても困るが、当らずとも遠からずと思う。この映画にはその全てが出て来る。
1940年代のシカゴで恋人と結婚する為にクラブを始めたポーランド系移民レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)が演奏に呼んだ南部出身ブルース・ギタリスト兼シンガー、マディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)とハーモニカ奏者のリトル・ウォルター(コロンバス・ショート)に才能を見出しチェス・レコードを設立(1950年)、その音楽性の為に白人と間違えられたチャック・ベリー(モス・デフ)を加える(1955年)。
ベリーはロックンロールの創始者の一人と後年考えられるようになるが、売り上げは抜群で、チェスはお金に困ったウォーターズの為にベリーに与えるべき印税の一部を彼に渡している。当たりを取ったアーティストには大金の代わりにキャデラックを買い与えるという変な趣味も持っていたらしい。当時のアーティストがお金の管理について実にいい加減だったということがよく解る一幕(但し序盤のナレーションとやや矛盾する)で、黒人の意識が高まった60年代に彼らの仲が些かこじれるのはこれが直接の原因である。
1960年に当時中堅だったR&Bシンガーのエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)と契約して大ヒットを飛ばすが、彼女は生まれの不幸もあって麻薬に溺れ、チェスと私的な関係が生まれている。初期にレーベルを支えたリトル・ウォルターがアル中の末に抗争に巻き込まれて死ぬという悲劇も起き、1969年人気の下降したレーベルを売り渡した直後失意のチェスは急死してしまう。
ポピュラー音楽界では当たり前の【飲む打つ買う】を交えた展開(但し、音楽界での“打つ”は麻薬のことであります)は型通り、一代記としては駆け足的かつぶつ切り的展開で相当もの足りず映画としてはせいぜい☆☆☆の出来映え。しかし、チェス・レーベルをめぐる音楽実録ものとしては要領良く作られた印象があり興味をそそられるので★一つプラスしましょう。
ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリンなどブルースへの傾倒が認められるロック・アーティストのファンは必見。映画中に出て来る音楽に痺れ、ウォーターズとエタ・ジェイムズのCDが買いたくなったので、早速アマゾンに調べに行ったことを報告しておきます。
しかし、実際に買ったのは何故か(笑)全く関係のないサザン・ロックのアトランタ・リズム・セクション(輸入盤)で、もう少ししたら白人ファンク・バンドのアヴェレージ・ホワイト・バンドを買おうと思っている。エタ・ジェイムズについてはWOWOWで2001年のステージが今晩(9月21日)放映されるので、そちらで暫く勉強します。
黒人俳優さんはいつでも歌手になれるくらい上手い人が多いですね。たいしたたまげた。 by あららのり子
この記事へのコメント
しかし、音楽のチカラというのは
それらの淡泊さを補って余りあるものが・・・
>WOWOWで2001年のステージが今晩
深夜ですね。
今晩は歌いに行く予定なので
しっかり録画セット完了済み。^^
ところで、そちらも涼しくなりましたか?
札幌はきょうなど3週間前とは10度近くも
気温が下がり、ワタクシ、映画館の中でも
しっかり長袖鑑賞でございました。(^ ^)
お決まりの話なんだけど、このあたりでブルースがアメリカに根付いたんですね。ミュージカルといいつつ正統派の伝記みたいな物でした。
この辺りの人たちの、カセット!結構もっているので、懐かしくて!
>映画としての出来は可もなく不可もなく。
いえ~す。
同じような時代の同じような話でもスムーズな「RAY」とは雲泥の差でした。
>今晩は歌いに行く予定
セミプロですもんね。楽しんできて下さい。^^
>そちらも涼しくなりましたか?
一日だけ極端に涼しい日がありましたが、またぶり返しました。
今日(日付が変わったので昨日)の最高気温は33度、明日(同じく今日)は34度の予想。
今年は本当に暑かった。最近は30度では涼しく感じますです。^^;
「RAY」と同じ時代の同じようなお話なのに段違いに淡白な出来でした。
僕は黒人音楽系が割合好きなので音楽だけで十分楽しみましたけど。
kimionさんも結構渋いところ聞いていたんですね!
舐めただけのサラリ感で些かの物足りなさを感じたのは皆さんも同じようですね。シャネルやサガンを描いた映画でも、表面をさらりと流して描いたって印象が強かった。これも最近の傾向ですかしらね。彼らから始まったんだ!ってそれは確かに感じられたけど、でも劇場に観にいってたらやっぱりストレスたまって出てきたかも。でも作中の音楽だけは楽しませてもらいましたよね。
これほど色々な人の印象が同工異曲という作品も近年稀ですね。
全く同じような「RAY」と作り方もそう差があるわけでないのに、印象が大きく違うのはやはり編集のリズムといったところも大きそうです。
これを主人公レナード・チェスの一代記として観れば不満が多いでしょうが、チェス・レコードの盛衰記と思えば悪くはないといったところでしょうか。