映画評「2012」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督ローランド・エメリッヒ
ネタバレあり
一昨年あたりから急激に耳目に触れ始めたマヤ文明マヤ歴を拡大解釈した人類(生命)滅亡説に基づくパニック映画。最近英語に倣ってディザスター(災害)ムービーという言い方が定着してきたようだが、僕は古い人間なのでパニック映画という古い言い方に拘りたい。監督はこの手の作品がお得意のローランド・エメリッヒ。
核心部分を大幅にぼかした勿体ぶったプロローグの後、2012年カリフォルニアに住む三文作家ジョン・キューザックが別居している子供二人とイエローストーン国立公園を訪れた時に軍人に囲まれたり、独自に人類滅亡の危機が迫っていることを告知しているローカルDJのウッディー・ハレルスンと遭遇したりするうちに既に始まった地面のひび割れを発端として大災害が起きると信じるようになり、前妻アマンダ・ピートや内縁の夫トーマス・マッカーシーと子供たちとで飛行機で脱出を図る。正にその時大地震が起きて碌な運転技術のないマッカーシーをパイロットに次々と崩れ落ちる地面から辛うじて飛び立つセスナ。
CGがなければ実現できなかった物凄い場面であると一応は誉めておきたい。どうして一応かと言えばやはり絵にしか見えないからで、ここだけ切り取ればCGアニメと何ら差がないからである。しかし、絵であろうとスリル満点であることは間違いない。
さて、ハレルスンの言を信じて中国の山地に準備された“箱舟”を目指す一行はキューザックを運転手に雇っているロシア人大富豪が所有する中型飛行機に便乗するが、燃料がなくなったり様々なピンチを迎える。
この辺りからご都合主義が目立つようになり、作家が大富豪の運転手をしているというのはともかく、海に着水すると覚悟を決めたら目的地の方が2000km以上も移動していたという設定には思わず失笑。確かに地球の地殻が溶けてしまうわけだから理論的にはあり得るだろうが、科学的に正しいかどうかより余りに調子が良すぎるのが問題なのでござるよ。
最後に登場する“箱舟”が宇宙船ではなく本当に箱舟というのがちょっと面白いものの、パニック映画としてはここからがひどくスローな展開になって相当がっかり。パニック場面はともかく今さら有難くもない父子の愛情交換風景などが必要以上に盛り込まれてモタモタするのだ。
先日の「ノウイング」よりぐっと本格的な「ノアの箱舟」もので、終末思想に支配された作品群の中にあって珍しくコスモポリタン的な思想を強く打ち出している。その象徴が中国が“箱舟”を作っているという設定であろう。悪役たるロシアの大富豪も子供の為に自分の命を投げ出すわけで、人類は皆本質的には善であると楽観的な結論を示していく。
パニック映画は一部に広まっている考えとは逆にサスペンスを基本に据え、そこにほんの少し人間描写を振りかけて味付けをするのが正しい作り方なので、本作は箱舟登場まで☆☆☆★、つまらない水増し的人間描写が増えるそれ以降は☆☆★といった印象。最終評価はその中間と致します。
水中にもぐる場面で水増し・・・か。面白い洒落にはなりますが。
2009年アメリカ映画 監督ローランド・エメリッヒ
ネタバレあり
一昨年あたりから急激に耳目に触れ始めたマヤ文明マヤ歴を拡大解釈した人類(生命)滅亡説に基づくパニック映画。最近英語に倣ってディザスター(災害)ムービーという言い方が定着してきたようだが、僕は古い人間なのでパニック映画という古い言い方に拘りたい。監督はこの手の作品がお得意のローランド・エメリッヒ。
核心部分を大幅にぼかした勿体ぶったプロローグの後、2012年カリフォルニアに住む三文作家ジョン・キューザックが別居している子供二人とイエローストーン国立公園を訪れた時に軍人に囲まれたり、独自に人類滅亡の危機が迫っていることを告知しているローカルDJのウッディー・ハレルスンと遭遇したりするうちに既に始まった地面のひび割れを発端として大災害が起きると信じるようになり、前妻アマンダ・ピートや内縁の夫トーマス・マッカーシーと子供たちとで飛行機で脱出を図る。正にその時大地震が起きて碌な運転技術のないマッカーシーをパイロットに次々と崩れ落ちる地面から辛うじて飛び立つセスナ。
CGがなければ実現できなかった物凄い場面であると一応は誉めておきたい。どうして一応かと言えばやはり絵にしか見えないからで、ここだけ切り取ればCGアニメと何ら差がないからである。しかし、絵であろうとスリル満点であることは間違いない。
さて、ハレルスンの言を信じて中国の山地に準備された“箱舟”を目指す一行はキューザックを運転手に雇っているロシア人大富豪が所有する中型飛行機に便乗するが、燃料がなくなったり様々なピンチを迎える。
この辺りからご都合主義が目立つようになり、作家が大富豪の運転手をしているというのはともかく、海に着水すると覚悟を決めたら目的地の方が2000km以上も移動していたという設定には思わず失笑。確かに地球の地殻が溶けてしまうわけだから理論的にはあり得るだろうが、科学的に正しいかどうかより余りに調子が良すぎるのが問題なのでござるよ。
最後に登場する“箱舟”が宇宙船ではなく本当に箱舟というのがちょっと面白いものの、パニック映画としてはここからがひどくスローな展開になって相当がっかり。パニック場面はともかく今さら有難くもない父子の愛情交換風景などが必要以上に盛り込まれてモタモタするのだ。
先日の「ノウイング」よりぐっと本格的な「ノアの箱舟」もので、終末思想に支配された作品群の中にあって珍しくコスモポリタン的な思想を強く打ち出している。その象徴が中国が“箱舟”を作っているという設定であろう。悪役たるロシアの大富豪も子供の為に自分の命を投げ出すわけで、人類は皆本質的には善であると楽観的な結論を示していく。
パニック映画は一部に広まっている考えとは逆にサスペンスを基本に据え、そこにほんの少し人間描写を振りかけて味付けをするのが正しい作り方なので、本作は箱舟登場まで☆☆☆★、つまらない水増し的人間描写が増えるそれ以降は☆☆★といった印象。最終評価はその中間と致します。
水中にもぐる場面で水増し・・・か。面白い洒落にはなりますが。
この記事へのコメント
実は、今日、池袋サンシャインの古代オリエント博物館で「マヤへの道/古代メキシコ・オルメカ文明展』を見に行ってきたところなんですよ(笑)
紀元前1500年ごろですからマヤ文明を遡ること1000年、ここにマヤ言語と占暦術の原点があるようです。
マヤの長期暦ではちょうどその始原がこの頃で、ここからひとつの時代の終末が2012年となります。ですから、オルメカ文明の人たちも、マヤ・インカ文明の人たちも、ずっと時代が下って現在の僕たちも、長期暦でいえば同じ時代を生きているということになります。それもあと2年だけね(笑)。
茶化すつもりはないのだけれど、こういう映画をみていてよく思うのが、ガソリン持つんかい? どこでガソリン供給してるんだい?って(笑)。
父親の家族への愛と強さをみせてる本作。「宇宙戦争」と重なりますねぇ。本作はヒューマニズムも前面に、いささかくさかったですネェ。
船に乗らず地上に残る決意をしたアメリカ大統領といい。ロシアも中国も皆さん分別ある行動をされて…人間のヒューマニズムは信じているけれど、極限ではやっぱり本音のエゴが出るんじゃないかな?とも思うんですけどねぇ…。
>「マヤへの道/古代メキシコ・オルメカ文明展』
へぇー、奇遇ですねぇ。
オルメカ文明と言えば、あのでかいオルメカ・ヘッドしか思い浮かびませんが、10年近く前知り合いだった女性がオルメカ・ヘッドが落ちてくる夢を観たとか言っていたのを思い出します。
長期歴が終わるというだけで地球滅亡とか人類滅亡とかこじつけなのでしょうけど、そういうのを信じてみたくなるのもまた人間らしくてヨロシイですね。
>ガソリン
飛行機の燃料は切れましたけどね。^^
>父親の家族への愛
確かに「宇宙戦争」と共通するものがありますけど、スピルバーグに比べると見せ方が下手で、わざとらしい。
僕なんか映像言語と映画文法の適切さに感心しまくりでしたけど、評判悪かったですねえ、「宇宙戦争」。シュエットさんにも不評でしたっけ?(笑)
>極限ではやっぱり本音のエゴ
それが本当でしょうね。
まあ嘘でも良いです。そのヒューマニズムが本当らしく見えないのはやはり“過ぎたるは及ばざるが如し”なんですなあ。
古い作品記事にコメしましてすみません。
さきほど他の方からコメントをいただき読んでみたら、なんと僕の記事をコピペしてAmazonに自分の意見としてアップしている人がいてビックリしました。
https://amzn.to/2IrZKo6
本当にこういうことをする人がいるのですね…。残念です。
元記事をトラバさせていただきます。
情けないですね。
ではまた!
>コピペ
感想に共感してそれを応用するくらいは良いと思いますが、文章を殆どそのまま流用というのは余りにひどいですね。