映画評「くもりときどきミートボール」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督フィル・ロード、クリス・ミラー
ネタバレあり

少年時代から変な発明ばかりして周囲に迷惑を掛けてきたフリントが、自分の住んでいる島の住民がにしんばかり食べていることに気付いて、水を食べ物に変換する機械を作り出すが、いざ起動すると機械は暴走を始め、島中を混乱に陥れた挙句に空の彼方に消えてしまう。が、やがて空から雨の代りにチーズバーガーが降って来る。
 これを島の観光地化計画に利用しようと市長は彼に次々と食べ物を降らせるうち欲望の赴くままに暴走した為、世界各国から客を集めた島開きの日、巨大化した食べ物が降って来て島は壊滅状態になる。これを食い止めようとフリントと彼と気の合うお天気お姉さんサムらが竜巻の中に入って行く。

昨今のアメリカ製アニメは説教臭いか喋りすぎで好感を覚える作品が少ないが、これはそのどちらでもなく大変よろしい。擬人化動物ものでないだけでも有難い。

大元の発想は「ヘンゼルとグレーテル」だと思うが、終盤のパニック模様は「2012」に先行した感じ(こちらのほうが発表が早い)もあるし、さらにそれよりずっと面白い冒険場面が繰り広げられ誠に結構。

食べ物を粗末にしているという意見があるようだが、本作の狙いは寧ろ逆で、終盤巨大化した食べ物の逆襲は正に飽食の時代へのそこはかとない風刺となっている。特に食べ物が意志を持って人間を食べようとするアイデアにはハッとさせられる。実際食べすぎの人間は食べ物に食べられていると言っても良いのではあるまいか。

実写・アニメを問わずアメリカ映画が馬鹿の一つ覚えのように繰り出してくる家族の問題も「2012」より数段うまく処理され、終盤本音を言えない父親の本音をフリントが発明した“気持ち翻訳機”が代りに告げてくれるというアイデアのおかげでジーンとさせられる。これが父親が自分で言ったら直截で白けるだけである。

彼とサムの恋愛感情もそつなく交えて本年観たアメリカのアニメでは出色の出来。

飴降って腹ふくれる。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • くもりときどきミートボール

    Excerpt: 原作はジュディ・バレットの手による同名の絵本。ファンタジー・3D・アニメーションです。空から食べ物が降ってくる?とある青年の手で完成した水を食べ物に変換するマシーン。このマシーンが産み出す様々な食べ物.. Weblog: LOVE Cinemas 調布 racked: 2010-11-08 17:48
  • くもりときどきミートボール IMAX-3D吹替版/梯篤司

    Excerpt: 私としては別に2Dでも良かったし出来れば字幕で観たかったんですけど、私のホームシアターはどこも吹替版の3Dしか上映してなくて選択の余地がありません。それならばということでIMAX-3Dで観ることにしち.. Weblog: カノンな日々 racked: 2010-11-08 20:54
  • 『くもりときどきミートボール』'09・米

    Excerpt: あらすじ失敗続きの発明家フリント・ロックウッドは水を好きな食べ物に変える<食べ物マシーン>を発明するのだが・・・。感想ゴールデン・グローブアニメーション作品賞ノミネート... Weblog: 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映... racked: 2010-11-08 22:03
  • 『くもりときどきミートボール』 ('10初鑑賞143・WOWOW)

    Excerpt: ☆☆☆☆★ (10段階評価で 9) 10月31日(日) WOWOWのHV放送を録画で鑑賞。 Weblog: みはいる・BのB racked: 2010-11-09 21:01