映画評「街の野獣」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1950年アメリカ映画 監督ジュールス・ダッシン
ネタバレあり

ジュールス・ダッシンは赤狩りでアメリカを去って欧州で映画を作り続けたが、欧州での秀作群は勿論、「裸の町」や本作のような傑作を見るとアメリカ映画界にとって一時の馬鹿げた騒動の為に失った代償は極めて大きいと言わざるを得ない。

ロンドン、“シルヴァーフォックス”というナイトクラブの客引きリチャード・ウィドマークは起業して成功するのを夢見て、営業許可証を取ると嘘を言って経営者フランシス・L・サリヴァンの妻でウィドマークと手を組みたがっているグーギー・ウィザースから営業資金を巻き上げ、有名レスラーだった老人スタニスラス・ズベスコの名声を利用してプロレスの興行を目論む。老人に取り入ったのは、ロンドンのプロレス興行を牛耳っている彼の息子ハーバート・ロムと対抗する為で、親子の確執を利用したのである。が、老人がロム側のレスラーと闘った末に急死してしまった為に興行が頓挫したに留まらず、怒ったロムが遣わす刺客から逃げる羽目になる。

20年くらい前に一度見て強い印象を受けたので、今回WOWOWがジーン・ティアニーを特集して行なう放映の機会を捉えて観てみたが、やはり見事だった。

まず、序盤と終盤ウィドマークの逃走を捉えるショット群に唸らされる。縦方向と横方向の構図が実に鮮やかで、躍動感満点。ショットを繋ぐ呼吸も抜群。

続いてはディテイルの面白さで、例えば、主人公がカモとみなした人物をクラブに誘導する巧みな戦術やロム傘下のレスラーを引っ掛ける手管が大変楽しめる。
 レスラー親子の確執、ナイトクラブ経営者夫婦の不仲を展開に上手く絡め、そこに上記ディテイルの面白味が加わり、構成に隙がない。幕切れは正に断裁的な処理で凄味がある。

配役ではウィドマークが狐のような狡猾さを感じさせる小悪党に扮して正に適役好演、作品への貢献大と言うべし。特集の主役ジーン・ティアニーはウィドマークの控え目な恋人役で出番が少なく物足りない。

WOWOWと契約している人の1%くらいは観たかな?

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