映画評「アンナと過ごした4日間」
☆☆★(5点/10点満点中)
2008年ポーランド=フランス映画 監督イエジー・スコリモフスキー
ネタバレあり
1970年代初めにジョン・モルダー=ブラウンという人気少年俳優が主演した「早春」という映画がちょっと話題になった記憶がある。本作はその映画を作ったイエジー・スコリモフスキーが17年ぶりに発表した新作・・・と言われても殆どの作品が日本でまともに公開されていないので余りピンと来ない人が多いだろう。僕にしても「水の中のナイフ」「夜の終りに」という脚本作は観たことがあっても、40年弱前今回WOWOWに登場する「早春」を見逃した為、監督作は全く初めてである。
病院の火葬場で働くレオン(アルトゥル・ステランコ)はちょっと離れた向かいに暮す看護婦アンナ(キンガ・プレイス)を日夜双眼鏡で覗いている。ただ一人の肉親である祖母が亡くなると、大胆にも昼間彼女の部屋に侵入して飲み物に睡眠薬を入れた上で夜間ベッドに眠る彼女の横に立ち、最初の日にはボタンのほつれを直し、次の日にはペディキュアを施し、三日目に花束と指輪を届け、四日目に修理した鳩時計を返しに入ったところを御用になってしまう。
というお話の間に彼がアンナが暴行される現場に遭遇して連絡した後彼自身が犯人にされるという過去の物語が随時挿入される形で綴られ、そのことから彼女を見守るような気持ちで純愛を注いでいることが判明する仕組みになっている。
付き合う人もいない中年男性の孤独に胸が締めつけられるような息苦しい内容を綴る描写は鬼気迫るが、並行して語られる別々の時間軸のお話が外見的に大して変わらないので、その認識のないまま観続けると何が何だか解らなくなるのが必定。特に序盤フィルムが繋がっていないような展開に些か閉口させられる。
映画は序盤が大事でここで集中を欠くと段々面白くなって来るものもそう感じられなくなる可能性が高い。実際本作の場合後半に至って仕組みが見えて来て興味が湧き出すし、二回か三回観ればこちらの思う以上にきちんとした骨組みも見えてくるだろうが、残念ながら序盤の気持ちを引きずった為に断然感心するというわけには行かなかった。
つまり、一度見ただけで評価する立場において本作にはフィルムの繋ぎに(意図的とは言え)難があると思われ、構成やショット/シーンの繋ぎを重視して評価することが多い僕には不満の残る作品という判断になる。集中が続く自信のある人にはお薦めできる。
昨年の退院後僕の集中力はボロボロです。
2008年ポーランド=フランス映画 監督イエジー・スコリモフスキー
ネタバレあり
1970年代初めにジョン・モルダー=ブラウンという人気少年俳優が主演した「早春」という映画がちょっと話題になった記憶がある。本作はその映画を作ったイエジー・スコリモフスキーが17年ぶりに発表した新作・・・と言われても殆どの作品が日本でまともに公開されていないので余りピンと来ない人が多いだろう。僕にしても「水の中のナイフ」「夜の終りに」という脚本作は観たことがあっても、40年弱前今回WOWOWに登場する「早春」を見逃した為、監督作は全く初めてである。
病院の火葬場で働くレオン(アルトゥル・ステランコ)はちょっと離れた向かいに暮す看護婦アンナ(キンガ・プレイス)を日夜双眼鏡で覗いている。ただ一人の肉親である祖母が亡くなると、大胆にも昼間彼女の部屋に侵入して飲み物に睡眠薬を入れた上で夜間ベッドに眠る彼女の横に立ち、最初の日にはボタンのほつれを直し、次の日にはペディキュアを施し、三日目に花束と指輪を届け、四日目に修理した鳩時計を返しに入ったところを御用になってしまう。
というお話の間に彼がアンナが暴行される現場に遭遇して連絡した後彼自身が犯人にされるという過去の物語が随時挿入される形で綴られ、そのことから彼女を見守るような気持ちで純愛を注いでいることが判明する仕組みになっている。
付き合う人もいない中年男性の孤独に胸が締めつけられるような息苦しい内容を綴る描写は鬼気迫るが、並行して語られる別々の時間軸のお話が外見的に大して変わらないので、その認識のないまま観続けると何が何だか解らなくなるのが必定。特に序盤フィルムが繋がっていないような展開に些か閉口させられる。
映画は序盤が大事でここで集中を欠くと段々面白くなって来るものもそう感じられなくなる可能性が高い。実際本作の場合後半に至って仕組みが見えて来て興味が湧き出すし、二回か三回観ればこちらの思う以上にきちんとした骨組みも見えてくるだろうが、残念ながら序盤の気持ちを引きずった為に断然感心するというわけには行かなかった。
つまり、一度見ただけで評価する立場において本作にはフィルムの繋ぎに(意図的とは言え)難があると思われ、構成やショット/シーンの繋ぎを重視して評価することが多い僕には不満の残る作品という判断になる。集中が続く自信のある人にはお薦めできる。
昨年の退院後僕の集中力はボロボロです。
この記事へのコメント
難があると思われ・・・
そんなにヒドかったですか~?
私はそれほどとも感じませんでしたが。
このたび監督さんの初期作
「身分証明書」他4作鑑賞。
全て中途撃沈につき全面撤退。(笑)
ややしばらくわからん作風の方ですが本作は
比較的わかりやすかったと私は思いますが
じゃもう一度是非、と言われましても
何をさておいても観たいという映画という
わけではございませんですが・・・(^ ^);
いや、ひどくはないんですよ。
過去をモノクロにするといった工夫がないから、何の情報もなく見るとうっかり同じ時間軸かと勘違いして、元々ない前後の脈絡を付けようとして付かなくてがっくりする危険性があるということでう。
後半になるとこちらも学習して解って来るんですけど、そこに至るまで注意力はどんどん散漫になっていきまして、彼が睡眠薬(らしきもの)の入った瓶を以って部屋に入った時に瓶を持っていることに気付いていませんでしたよ。お恥ずかしい。^^;
個人的に、病気後の注意力のなさは相変わらずですし、最近疲れ気味ですぐに目がふさがってくる。幸いにも本作は眠くはならなかったから、お話の面白さはあったのだろうと思います。
>初期作
録画はしましたが、観るかどうか不明です。
短いから最後まで観られると思いますが。^^;
「早春」は観ました。すぐにUP予定。
僕はてんで集中力はないんですが(笑)、この映画は本当にびっくりして胸がしめつけられたんですよ。
主人公の不幸の前に、変な感じなんだけど、母性的なホルモンが出てきて、抱きしめてあげたい・・・というような。
あの忍び込みの偏執愛は、ある意味無条件に美しく儚い愛のように思えたんです。
この手の前後の脈絡が曖昧で暗い画面が多い作品は映画館で観た方が集中できそうです。kimionさんはDVDでの鑑賞でしょうが、散漫にならずにご覧になられたのだから大した集中力ですよ。^^
初恋の人を未だ夢に見る僕は、彼に同情的です。変態と思われると嫌なので、シンパシーは感じるとは言いませんが(笑)。