映画評「早春」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1970年イギリス=西ドイツ映画 監督イエジー・スコリモフスキー
ネタバレあり
「早春」と言っても小津安二郎ではありません。「アンナと過ごした4日間」で久しぶりにメガフォンを取ったイエジー・スコリモフスキーの監督作品中恐らく日本において唯一一般的に話題になった異色青春映画である。話題になったのは当時一部で人気のあった少年俳優ジョン・モルダー=ブラウンが出ていたからだが、ポール・マッカートニーの婚約者であったジェーン・アッシャーがヒロインを演じたという理由もあったにちがいない。
ロンドン、学校を止める羽目になった15歳のモルダー=ブラウン少年は公衆浴場の接客係に雇われ、先輩の美少女(若い女性のことですぞ)ジェーンに夢中になり、婚約者がいる癖に体育教師と浮気している彼女をつけ回す。
喧嘩して雪の中に落としてしまった彼女の婚約指輪を水を払ったプールで雪を解かして発見しようとする長いシークエンスは冗長のように見えて異様な迫力があり、発見したお礼に筆卸しをしてもらうが逃げるように去って行く彼女の後頭部に抑えつけられた欲望を晴らすかのように照明器をぶつける。
結果的に彼女は死に、やがて満ち満ちたプールの水に彼が死体を抱きながら沈んでいく幕切れは<初恋>をテーマにした映画とも思えない凄味がある。彼女自身からよりライトに垂れる血を先に見せる辺りの感覚は誠に鮮やかで、少年の狂おしい初恋の夢が現実に突き破られた瞬間を表現して見事。
また、1950年代に一世を風靡したバンプ女優ダイアナ・ドースの見る影もなく崩れた肉体とそのおぞましい演技は一見の価値あり。
映画鑑賞歴40年以上の皆様、1970年代初め思春期映画が大量に作られましたよね。
1970年イギリス=西ドイツ映画 監督イエジー・スコリモフスキー
ネタバレあり
「早春」と言っても小津安二郎ではありません。「アンナと過ごした4日間」で久しぶりにメガフォンを取ったイエジー・スコリモフスキーの監督作品中恐らく日本において唯一一般的に話題になった異色青春映画である。話題になったのは当時一部で人気のあった少年俳優ジョン・モルダー=ブラウンが出ていたからだが、ポール・マッカートニーの婚約者であったジェーン・アッシャーがヒロインを演じたという理由もあったにちがいない。
ロンドン、学校を止める羽目になった15歳のモルダー=ブラウン少年は公衆浴場の接客係に雇われ、先輩の美少女(若い女性のことですぞ)ジェーンに夢中になり、婚約者がいる癖に体育教師と浮気している彼女をつけ回す。
喧嘩して雪の中に落としてしまった彼女の婚約指輪を水を払ったプールで雪を解かして発見しようとする長いシークエンスは冗長のように見えて異様な迫力があり、発見したお礼に筆卸しをしてもらうが逃げるように去って行く彼女の後頭部に抑えつけられた欲望を晴らすかのように照明器をぶつける。
結果的に彼女は死に、やがて満ち満ちたプールの水に彼が死体を抱きながら沈んでいく幕切れは<初恋>をテーマにした映画とも思えない凄味がある。彼女自身からよりライトに垂れる血を先に見せる辺りの感覚は誠に鮮やかで、少年の狂おしい初恋の夢が現実に突き破られた瞬間を表現して見事。
また、1950年代に一世を風靡したバンプ女優ダイアナ・ドースの見る影もなく崩れた肉体とそのおぞましい演技は一見の価値あり。
映画鑑賞歴40年以上の皆様、1970年代初め思春期映画が大量に作られましたよね。
この記事へのコメント
封切りで観に行ったのですが、多分ジェーン・アッシャー目当てだったのでしょう。
詳細はすっかり忘れておりますが、ジョン君がジェーンの等身大の写真パネルか何かをかき抱いているショットが目に浮かびます。そんなシーンありました?
>1970年代初め思春期映画が大量に作られましたよね。
「メロディ」とか、先日テーマ曲を我がブログで取り上げた「フレンズ」とかですよね。あと、「青い珊瑚礁」とか色々、モロモロ、あれやらこれやら・・・ですね。^^
>もう40年前
僕が今持っている一番古い「スクリーン」にモルダー=ブラウン少年の記事があるので、その頃本作が公開されたのだと思います。
>封切
ふーむ、群馬には来たのかな。
青春映画は比較的よくかかっていたような気もしますが。
この頃は裸がいっぱい出てきても中学生でも平気で観られましたね。18禁しかなくて中間がなかったので。
>パネル
おおっ、さすがによく記憶されていますね。
ヌード嬢の等身大の写真パネルで、それがジェーン本人なのかいなかと問い詰めたりします。^^
>思春期映画
「初恋」「恋」「好奇心」などというのもありました。2、3年遅れて「青い体験」とかちょっと品性に欠けるのも出てきましたね。
ドミニク・サンダがおそろしく綺麗で少しイジワルそうな感じが印象的でした。
どうでもいいことですが、ドミニク・サンダとサンドリーヌ・ボネールってちょっと顔立ちが似ていませんか?
で、なんで私の年でジョン・モルダー・ブラウン、知っているんだ?って点ですが・・・はい、ヴィスコンティ映画に出ていたからです! 笑
オカピーさんのレビュー拝読しましたら「早春」、ちょっと観てみたくなりました。
TVではもう放映してくれなさそうな気がしますので、ユーロスペースあたりでリバイバル上映されるのを期待します!
>「初恋」
僕の好きなツルゲーネフですね。映画のほうはよく憶えていないんですが(笑)。
>ドミニク・サンダ
クール・ビューティーですね。
この人もっと人気が出ると思いましたが、ちょっと冷たすぎる感じが災いしたのか、70年代後半にしぼんでしまいました。
>サンドリーヌ・ボネール
同じ系列に入りますね。
いずれにしても、僕の好きなタイプです(笑)。
>ヴィスコンティ映画
「ルードウィヒ/神々の黄昏」ですね。
これ「ルードウィヒ」が本タイトルだと思いますが、僕の同級生はやたら「神々の黄昏」と言っていました。
ヴィスコンティ・ブームの時に大分遅れて公開されたので、モルダー=ブラウンのファンは喜んだのではないかなあ。
>リバイバル上映
「アンナと過ごした4日間」が公開された今回はチャンスだったのですが。
やってくれると良いですね。
記憶で書かれたのですか、それともソフトをお持ちなのでしょうか。
>1時間半番組の映画劇場
こういう類は土曜日の午後によくやっていましたね。
それはさておき、ボーさんはWOWOWと契約されていませんでしたっけ?
今月の10日にWOWOWが放映したんですよ。
デジタルWOWOWに契約されているなら、1月26日にWOWOW2(192ch)で放映されるのでお忘れなく。多分今後はなかなか放映されないと思います。
僕は映画ファンになってずっと観たいと思いながら観られずにきたので、今回のチャンスは逃すまいとしっかり記憶して録画したのでした。確かになかなか鮮烈です。
ああ、こういう話だったかと全体像がわかって、すっきり。
若いときに見たときは、それは衝撃だったよなあと納得できます。
何と7年前にもお越し戴いていたんですね。
それから7年経って再鑑賞、しかも、映画館で。完全版での鑑賞は初めてということでしょう。
衝撃的なのは終盤ですが、子供にはトラウマになりますね。