映画評「栄光のル・マン」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1971年アメリカ映画 監督リー・H・カッツィン
ネタバレあり
子供の時代から車やバイクのレースは結構観てきたが、アイルトン・セナが事故死した頃から余り観なくなった。21世紀に入る頃から放送自体も激減し、ル・マンの中継も2003年以降ない。それでもカー・レース映画は依然好きで、再鑑賞というのに本作には観る前からわくわくしていた。
前年事故でレーサーを一人亡き者にしたスティーヴ・マックィーンがショックを乗り越えて今年もル・マン24時間耐久レースにポルシェ・チームの一員として参加する。未亡人ヘルガ・アンデルセンも関係者として訪れる。
遂にレースが始まり、マックィーンは二日目周回遅れの車を避けようと事故を起こして退く羽目になるが、ポルシェ・チームの別グループのピンチ・レーサーに起用され、自分は2位に留まり僚友を優勝させる。
レース映画の名にふさわしくレース模様が中心で、ドラマらしいドラマはマックィーンと夫亡き後寧ろ同病相憐れむような心境も働いて心の友のようになっているヘルガとの交流だけ。後は“レーサー(夫)のレース好きは理解しがたいものよ”という妻女の挿話に触れられるくらい。
点出されるレース場周辺の情景や準備風景は実際のル・マンを撮ったものである。それと撮影用に作られたドキュメンタリー・タッチの場面が見事に一体化して、これほど本物らしいレース映画は他に類を見ない。特に事故のショットは物凄い迫力。寡黙なマックィーンも断然格好良い。
F1モナコ・グランプリをテーマにした「グラン・プリ」もレース映画として総合的に相当優秀だが、映画的感覚という点では本作の後塵を拝する。
他に「ザルツブルグ・コネクション」が記憶に残る(が記憶するには値しない)程度のリー・H・カッツィンとしては名を残すチャンスのあった作品だが、アメリカでの評価は不当に低い。“ドラマがない”という阿呆らしい理由からなのだろう。
ドラマらしいドラマはないのに入れるべきジャンルは“ドラマ”しかない、という珍しい映画。
1971年アメリカ映画 監督リー・H・カッツィン
ネタバレあり
子供の時代から車やバイクのレースは結構観てきたが、アイルトン・セナが事故死した頃から余り観なくなった。21世紀に入る頃から放送自体も激減し、ル・マンの中継も2003年以降ない。それでもカー・レース映画は依然好きで、再鑑賞というのに本作には観る前からわくわくしていた。
前年事故でレーサーを一人亡き者にしたスティーヴ・マックィーンがショックを乗り越えて今年もル・マン24時間耐久レースにポルシェ・チームの一員として参加する。未亡人ヘルガ・アンデルセンも関係者として訪れる。
遂にレースが始まり、マックィーンは二日目周回遅れの車を避けようと事故を起こして退く羽目になるが、ポルシェ・チームの別グループのピンチ・レーサーに起用され、自分は2位に留まり僚友を優勝させる。
レース映画の名にふさわしくレース模様が中心で、ドラマらしいドラマはマックィーンと夫亡き後寧ろ同病相憐れむような心境も働いて心の友のようになっているヘルガとの交流だけ。後は“レーサー(夫)のレース好きは理解しがたいものよ”という妻女の挿話に触れられるくらい。
点出されるレース場周辺の情景や準備風景は実際のル・マンを撮ったものである。それと撮影用に作られたドキュメンタリー・タッチの場面が見事に一体化して、これほど本物らしいレース映画は他に類を見ない。特に事故のショットは物凄い迫力。寡黙なマックィーンも断然格好良い。
F1モナコ・グランプリをテーマにした「グラン・プリ」もレース映画として総合的に相当優秀だが、映画的感覚という点では本作の後塵を拝する。
他に「ザルツブルグ・コネクション」が記憶に残る(が記憶するには値しない)程度のリー・H・カッツィンとしては名を残すチャンスのあった作品だが、アメリカでの評価は不当に低い。“ドラマがない”という阿呆らしい理由からなのだろう。
ドラマらしいドラマはないのに入れるべきジャンルは“ドラマ”しかない、という珍しい映画。
この記事へのコメント
私は“アクション・スポーツ”というジャンルに入れましたが、フランス映画のような静かなたたずまいは“ドラマ”の方がお似合いかも知れんですな。
かなり好きな映画。
どれくらい好きかは、TB致しましたMY記事に自然と表れておるでしょう。
素晴らしい
>ジャンル
僕のところは“スポーツ”はないのでねえ。^^
カー・アクションはあってもアクション映画とは言えないし、手に汗を握ると言ってもサスペンスでもない。恋愛もどきはあっても勿論恋愛映画ではない。するってえと、ドラマしか残りまへんねえ。
>かなり好きな映画
ご贔屓の作品なので嬉しいです。^^)v
画面が瑞々しくて、レース・シーンもマックィーンも格好良いですもん。
パンフレットは、いまも持っております。
すばらしい映画でありました。
こういう映画は、とかく本題であるレースから離れて、恋愛や家族がナンタラコウタラのほうに行くのですが、ただひたすらレース模様を描いたのが良かったですね。
>ただひたすらレース模様を描いたのが良かった
僕の言う、「純度の高い」映画ですね。
こういう映画的感覚に富んだ作品を誉められない批評家は狭量なのでヨロシクないのではないか、と。
お気遣いなく…ですよ!
>ドラマらしいドラマはないのに入れるべきジャンルは“ドラマ”しかない、という珍しい映画。
一応のストーリーはあるんだけど、それは調味料みたいで、言われる通りですね。やっぱりこの頃の映画っていいですねぇ。
若い時って街角にポスター貼った立て看板ってありましたよね。若気の至りでお恥ずかしいですが、夜中に電信柱に針金で括りつけてある栄光のル・マンの看板をひったくって部屋に飾ってたことあります。酔った勢いで…昔も今も若いもんのすることは…ですね(苦笑)
>看板をひったくって
トリュフォーみたいですね。^^)v