映画評「96時間」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年フランス映画 監督ピエール・モレル
ネタバレあり

製作者・脚本家としてのリュック・ベッソンはアメリカ映画に近付け(映画の多様性という観点において)フランス映画をつまらなくした張本人だが、製作と共同脚本を担当した本作くらい楽しませてくれれば誉めたくなる。

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元CIA秘密工作員リーアム・ニースンが別れた妻ファムケ・ヤンセンに引き取られた17歳の娘マギー・グレースが旅先のパリで友人と一緒に誘拐された為行動開始、電話に残されたメッセージからアルバニア系の人身売買グループの犯行であると割り出すと、妻の再婚相手である富豪の自家用ジェットを駆って直行、ポン引きに絡まれるふりをして特殊マイクを取りつけ突き止めたアジトに殴り込みをかけ、犯人の一人をリンチして聞き出した人身売買の現場であるフェリーに乗り込む。

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嬉しいまでに直線的で見通しが良く、主人公の無敵な強さは誠に景気が良く思わず笑いが洩れるくらい。

不満なのは言語で、フランスの刑事に成り済ました主人公がフランスでアルバニア出身の犯人たちと堂々と英語で話すのはおかしい。“なんちゃってフランス語”という解釈が成り立たないこともないものの、本物の刑事はきちんとフランス語と英語を使い分けているのだから、どちらにしても疑問である。ドイツ語オンリーの展開だから英語であっても敢えて問題にする必要のない「ワルキューレ」には文句を言う人が少なくなかったのに、複数の言語が交錯する本作は誰も批判しない。お話が現実的かどうかで区別する問題でないにも拘らず、残念ながら実際にはそういう基準で批判する人が多いようだ。

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それを別にすると、犯人グループやアジト、取引現場を突き止める過程などあっさりしているがミステリー的にも楽しめる要素が多くて上出来、かつて観たスティーヴン・シーガルの類似作品に比べて格段に面白いのは場面の処理や編集がぐっとスマートで鮮やかだからである。

エスター」に続いて、伴侶(元伴侶)を信用しなさい、という教訓話。

この記事へのコメント

2010年12月25日 18:41
男子は不肖の息子とか言いますが
女の子の場合は何て言うのかしらね。
ま、わがままで言うこと聞かない子ほど
親はめんこいとか言いますけど、
この主人公お父さんの強くて強くて
はきはきしててまんず観てて気持ちがいいこと!
話も直球、お父さんも直球!(笑)
娘のためなら何でもごり押し
言葉のその辺も変でもごり押し?(^ ^);
ところで今思いだしたのは
直接言語の話ではありませんが
むか~しの米TV映画放映の折
どうしたものか音声と俳優のお口が
微妙にズレててそれもなかなか直らなくて
ずっとイライラしながら見ていたと
いう記憶がありますが
プロフェッサーにはそういう経験ありません?
TV観ないのでわかりませんが
おそらく現在はそんなことはないでしょうが。(笑)
オカピー
2010年12月26日 01:33
vivajijiさん、こんばんは。

>不肖の息子
女の子に対しては最初からそういう意識がないので、
恐らくそういう言葉もないのでしょう。
数千年来男性社会でしたからねえ。^^;

中途半端に社会性などを見せずにバンバンやっつけてくれるから、
殺人を観ても、勧善懲悪的な展開も全然気になりませんでしたね。

>米TV映画放映の折
あったかもしれないです。
恐らく昔は別のテープでビデオ映像にアナログ的に連動させていたんだと思います。
昔は供給先から音楽が送られて来ない為にTV局が勝手に音楽を選んで使ったなんてこともありましたね。^^;
今は一つのパッケージになっている筈ですので、アテレコ(アフレコ)が合わないのを別にすれば、ないでしょう。^^

10月頃NHK-BSで「アンドロメダ…」を観ていた時に
雷雨による電波障害の後最後まで音と映像が
1秒くらい合わなくなるという謎の現象が発生。
受像機(レコーダー)の問題かもしれませんが、
相当イライラさせられましたよ。

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