映画評「シャーロック・ホームズ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督ガイ・リッチー
ネタバレあり
アーサー・コナン・ドイルが生んだシャーロック・ホームズの贋作(映画)では「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976年)が断然優秀だが、ガイ・リッチーが作ったこちらは如何だろうか。
1891年のロンドン、連続して妙齢美人が誘拐されて儀式のような形で殺される事件が発生。これをホームズ(ロバート・ダウニー・ジュニア)と相棒ジョン・ワトソン(ジュード・ロー)が解決、逮捕されたブラックウッド卿(マーク・ストロング)は間もなく死刑を宣告されて処刑される。数ヵ月後ホームズの許に既知の仲である美人泥棒アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムズ)がリオーダンなる男を探して欲しいと訪ねて来るが、どうも陰で糸を引いている人物がいるらしい。その後処刑して埋めた筈のブラックウッドが消えたという報告を受けて出かけた墓穴にリオーダンの死体を発見する。
リッチーは相変わらず細かいカット割りで展開しているものの、カットの進行は早くても序盤の逮捕の一幕など呼吸が今一つよろしくなく余りワクワクさせられない。これに続く布石ばらまきの部分で些か眠くなってきたのは僕の体調ばかりではないようである。ブラックウッドが消えるという一幕はクラシック気分満点で楽しいが、結局謎らしい謎はこれだけでなかなか調子が上がって来ない。
が、秘密結社の一員で黒魔術に精通しているブラックウッドがリオーダンに開発させた新兵器で世界制覇を企んでいることが判明し、それを解明していくホームズたちが次々とピンチに陥る後半は冒険シーンとサスペンスが俄然増して面白くなって来る。
本作のホームズは、従来のイメージを覆す肉体派で拳闘場面まである(原作でもボクシングはプロ級との言及あり)ものの、後半のアクション主体の展開に合致している為特に問題はなく、終盤に「素敵な挑戦」同様チャンバラが出てくるのは嬉しい。
原作を踏襲してホームズは観察眼が凄く、序盤ワトソンの婚約者について小手調べ的に次々と指摘するのはお楽しみだが、終盤ブラックウッドのトリックなど色々な謎があっという間に解明されてしまうのは良し悪し。謎解きにはもう少し一般的な観客の理解する時間への配慮があってしかるべきだっただろう。
本作ではホームズの仇敵たるモリアーティ教授が間接的にこの事件に関わっていたことが判明、このライバルを悪役にして続編が作られるのは言うまでもない。
僕は断然ルパン・ファン。「ルパン」シリーズの中で、ホームズは、エルロック・ショルメス(Herlock Sholmes)として半ば悪役のような形で登場する。
2009年アメリカ映画 監督ガイ・リッチー
ネタバレあり
アーサー・コナン・ドイルが生んだシャーロック・ホームズの贋作(映画)では「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976年)が断然優秀だが、ガイ・リッチーが作ったこちらは如何だろうか。
1891年のロンドン、連続して妙齢美人が誘拐されて儀式のような形で殺される事件が発生。これをホームズ(ロバート・ダウニー・ジュニア)と相棒ジョン・ワトソン(ジュード・ロー)が解決、逮捕されたブラックウッド卿(マーク・ストロング)は間もなく死刑を宣告されて処刑される。数ヵ月後ホームズの許に既知の仲である美人泥棒アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムズ)がリオーダンなる男を探して欲しいと訪ねて来るが、どうも陰で糸を引いている人物がいるらしい。その後処刑して埋めた筈のブラックウッドが消えたという報告を受けて出かけた墓穴にリオーダンの死体を発見する。
リッチーは相変わらず細かいカット割りで展開しているものの、カットの進行は早くても序盤の逮捕の一幕など呼吸が今一つよろしくなく余りワクワクさせられない。これに続く布石ばらまきの部分で些か眠くなってきたのは僕の体調ばかりではないようである。ブラックウッドが消えるという一幕はクラシック気分満点で楽しいが、結局謎らしい謎はこれだけでなかなか調子が上がって来ない。
が、秘密結社の一員で黒魔術に精通しているブラックウッドがリオーダンに開発させた新兵器で世界制覇を企んでいることが判明し、それを解明していくホームズたちが次々とピンチに陥る後半は冒険シーンとサスペンスが俄然増して面白くなって来る。
本作のホームズは、従来のイメージを覆す肉体派で拳闘場面まである(原作でもボクシングはプロ級との言及あり)ものの、後半のアクション主体の展開に合致している為特に問題はなく、終盤に「素敵な挑戦」同様チャンバラが出てくるのは嬉しい。
原作を踏襲してホームズは観察眼が凄く、序盤ワトソンの婚約者について小手調べ的に次々と指摘するのはお楽しみだが、終盤ブラックウッドのトリックなど色々な謎があっという間に解明されてしまうのは良し悪し。謎解きにはもう少し一般的な観客の理解する時間への配慮があってしかるべきだっただろう。
本作ではホームズの仇敵たるモリアーティ教授が間接的にこの事件に関わっていたことが判明、このライバルを悪役にして続編が作られるのは言うまでもない。
僕は断然ルパン・ファン。「ルパン」シリーズの中で、ホームズは、エルロック・ショルメス(Herlock Sholmes)として半ば悪役のような形で登場する。
この記事へのコメント
小さい頃の遊びでは、ルパン派とホームズ派に分かれましたね。僕は断然、ルパン派だったですね。
おおっ、kimionさんもルパン派ですか。それは嬉しいなあ。
ロマンティストですので、僕は推理より冒険とロマンスの多いルパンが大好きでした。ルパンは大体読みましたが、ホームズは代表的な作品だけですね。
今年もオカピーさんの採点を毎回、楽しみに拝読させて頂きます。
年末年始もずっと読ませて頂いていたのですが、コメントに出遅れまして、ご挨拶がこんなに遅くなってしまって恐縮ですが、今年もよろしくお願いします!
さて、この映画ですが・・・劇場で公開当時に観て、結構フツーに面白かったと思った記憶はあるものの、今となっては忘却の彼方です 苦笑
つまり、それくらい良くも悪くも「無難」な出来だった気もします。
気が利いた面白いシーンもあったものの、ガイ・リッチーにしてはハリウッドにいささか魂を売ってしまい、B級度合が薄まった感もあり・・・
比較対象として挙げるのもなんですが、お正月休みにTVで「知りすぎていた男」を子供の時以来、久しぶりに観て非常に刺さってしまいました。
「謎解き×サスペンス×活劇」はこうこなくっちゃ!と思いました。
私はホームズ等の原作はほとんど読んでいないので、勝手なイメージですが、もっと画的にはおとなしい、本格推理を描くのだと思っていたのですが、アクション満載でした。
個人的な好きな画で、中弛みも感じませんでしたが、爆破シーンのハイスピードがくどい気がしました。
謎を解くテンポに、鑑賞者が理解する時間がついてゆかないという点では「ナショナル・トレジャー」を思い出しますが、本作は、私はさほどでもなかったように感じます。途中の画の謎が全て判明しますから、よかったかなと。
ただ、こちらは途中の展開ではなく終盤ですからね、全体的なテンポを考慮する必要もない時期ですから、もうすこしじっくり描いてもいいかなとは思います。
そして、モリアーティ教授。
もちろん、つくりますよね、続編。
今年も宜しくお付き合い下さい。
僕は格別ホームズのファンというわけでもなく、大アクションのホームズも悪くはないと思いますが、クラシックの素材を新感覚で作るより、クラシックであるが故にクラシックに作って貰いたいという思いが強いですね。
がちゃがちゃ画面のアクション映画は世に溢れているわけですから。
>「知りすぎていた男」
緩急自在で、全てがきちんと計算されたヒッチコックはやはり神様だなあ。映画には文法があるということをこれほど感じさせる監督は他にいないですね。
>もっと画的にはおとなしい、本格推理
ホームズはルパンよりは本格推理ですが、ポワロなどに比べればずっと冒険ものなので、原作と比べてもそれほど違うと言う訳でもないと思います。
などと知ったかぶりをしていますが、ホームズに関しては代表的なところを読んだことがあるだけなんです、実は(笑)。
>爆破シーンのハイスピードがくどい気がしました。
カットの多さに「またか」という感がありましたので、それを指摘することを忘れていました^^;
開巻直後割合長い導入のショットを別に、第2ショットから数えますと、1分間に35くらいショットがありましたよ。昔のアクション映画は大体8くらいですからいかにも多いですね。年寄りには良くないなあ、こういうのは。バリアフリーにしてくれなくちゃ(笑)。
>謎を解くテンポ
推理より冒険をという作者の狙いは解りますが、やはりホームズはミステリーという思いがあるので、ちょっと指摘してみました。
逆に「ナショナル・トレジャー」は最初から“冒険”を観ていましたから、僕は気にならなかったんですよ^^
>続編
それどころか、シリーズになるかもですよ。
ショットの数が半分くらいになるから歓迎しますが(笑)。
謎を解くテンポですが、そうですね。
「ナショナル・トレジャー」は冒険活劇ですからね、私自身も気にはならなかったんですよ、ただそような意見をかかれている方がけっこういらしたので。
そして、本作も、私がさほど気にならなかったのは、裏切られた結果でしたが、私の中で、途中からアクションとしての見方を強めていたからかもしれません。
では、また。
カットを割るのが好きな私ですが、最近は目がいたくなるような洋画の画が多いですよね。さすがに私も、こたえます(笑)。
>ただそのような意見をかかれている方がけっこういらしたので
作品の種類や狙いを考えもしないで、そういうことを言う人が結構多いです^^;
狙い自体に疑問があればその旨を指摘した上で評価すれば良いですが、「ナショナル・トレジャー」を冒険活劇にした作者の狙いに異議を唱える人はいないと思いますです^^;
>最近は目がいたくなるような洋画
1分に平均20カット以上の映画は禁止すべきですね(笑)。
賢明なる読者の方は既にお気付きのことと存じます(笑)が、
2011年1月16日4時59分における筆者の文章に
(いつものように)大間違いを発見したので
ここに訂正させて戴きます。
(誤)
>続編
それどころか、シリーズになるかもですよ。
ショットの数が半分くらいになるから歓迎しますが(笑)。
(正)
>続編
それどころか、シリーズになるかもですよ。
ショットの数が半分くらいになるなら歓迎しますが(笑)。
---訂正終わり---
「か」と「な」の違いでは意味が大違いでありました。
「この二人のコンビを続編でも観たいような、でもシリーズ物の評価としては本作だけでやめておく方がいいような…。」って書いているから、こんなもんでしょう(笑)
原作のホームズを忠実に映像化すると案外こんな感じなんでしょうが、ロバート・ダウニー・ジュニアには英国ムードが希薄でしたかなあ。
ジュード・ローはさすがに本場の雰囲気あり。
つまらなくはなかったですが、もう少しクラシック・ムードが濃厚なほうが僕には嬉しいです。