映画評「クヒオ大佐」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・吉田大八
ネタバレあり
四半世紀前に逮捕された結婚詐欺師をモデルにしたコメディー。監督は若手、と言っても僕より何歳か若い程度の吉田大八。
胡散臭くもエリザベス女王の遠戚と称しアメリカ空軍クヒオ大佐と名乗る男(堺雅人)は、結婚をちらつかせて弁当屋の女社長・松雪泰子に色々と貢いで貰う一方、博物館学芸員の若い女性・満島ひかりに声をかけ、さらに銀座のホステス中村優子とも接触する。
詐欺師の物語と知らなくてもすぐにそれと解る物語なのに、映画が40分までひた隠しにするところがそこはかとないユーモアを醸成するが、それを突然突き破るのが女社長の不良の弟・新井浩文。彼は英語が達者なので相手が“偽物”であることをすぐに見破るのだ。
英語が碌にできないのにアメリカ軍人を名乗る間抜けで、冷静な立場であれば誰がどう見ても怪しい主人公を女社長が気が付かないのは彼女の願望がそれだけ切迫していたということなのだろう。
開巻直後キノコの“偽物”を説明する学芸員がこの見分けやすい毒キノコにひっかかるのは、騙されたというよりは主人公に変な興味を持ったというところか。
現実をしっかり見据えているホステスはさすがにすっかりお見通しで却って主人公を騙してしまうくらい。この三者三様の交際が交互に描かれ、結婚詐欺師の一代記としてなかなか楽しく見られる。
文学的に解釈すれば、騙す主人公と“騙される”二人の女性は、嘘に身を委ねて世知辛く面倒臭い現実を忘れようとしている。実は哀切極まりない人間喜劇の世界である。
同時に、どちらがどちらの寓意なのか判然としないものの、主人公と日本にお金を供出させて「相手が喜ぶことをしている」とうそぶくアメリカとをオーヴァーラップさせる仕組み。この両者が違うとしたら、米国はお金を貰っても大して喜ばないが、彼は喜んでいると想像されることである。(そんなことはないと思うが)アメリカが主人公の寓意ではなく、主人公がアメリカの寓意だったら実に意味深長な映画ということになる。
毒キノコならワライタケみたいな主人公。
2009年日本映画 監督・吉田大八
ネタバレあり
四半世紀前に逮捕された結婚詐欺師をモデルにしたコメディー。監督は若手、と言っても僕より何歳か若い程度の吉田大八。
胡散臭くもエリザベス女王の遠戚と称しアメリカ空軍クヒオ大佐と名乗る男(堺雅人)は、結婚をちらつかせて弁当屋の女社長・松雪泰子に色々と貢いで貰う一方、博物館学芸員の若い女性・満島ひかりに声をかけ、さらに銀座のホステス中村優子とも接触する。
詐欺師の物語と知らなくてもすぐにそれと解る物語なのに、映画が40分までひた隠しにするところがそこはかとないユーモアを醸成するが、それを突然突き破るのが女社長の不良の弟・新井浩文。彼は英語が達者なので相手が“偽物”であることをすぐに見破るのだ。
英語が碌にできないのにアメリカ軍人を名乗る間抜けで、冷静な立場であれば誰がどう見ても怪しい主人公を女社長が気が付かないのは彼女の願望がそれだけ切迫していたということなのだろう。
開巻直後キノコの“偽物”を説明する学芸員がこの見分けやすい毒キノコにひっかかるのは、騙されたというよりは主人公に変な興味を持ったというところか。
現実をしっかり見据えているホステスはさすがにすっかりお見通しで却って主人公を騙してしまうくらい。この三者三様の交際が交互に描かれ、結婚詐欺師の一代記としてなかなか楽しく見られる。
文学的に解釈すれば、騙す主人公と“騙される”二人の女性は、嘘に身を委ねて世知辛く面倒臭い現実を忘れようとしている。実は哀切極まりない人間喜劇の世界である。
同時に、どちらがどちらの寓意なのか判然としないものの、主人公と日本にお金を供出させて「相手が喜ぶことをしている」とうそぶくアメリカとをオーヴァーラップさせる仕組み。この両者が違うとしたら、米国はお金を貰っても大して喜ばないが、彼は喜んでいると想像されることである。(そんなことはないと思うが)アメリカが主人公の寓意ではなく、主人公がアメリカの寓意だったら実に意味深長な映画ということになる。
毒キノコならワライタケみたいな主人公。
この記事へのコメント
この監督は、ちょっと誇張した演出をするのが得意なんですね。冒頭とラストのアメリカ軍との交差のところ、なんだかずっこけてしまいましたね(笑)
仰るように、この間抜けな詐欺師のどこに惹かれたかよく解らないのですが、本文で書いたように僕は、世知辛い現実からの逃避があったと勝手に解釈しています。観客に多くを解釈させる映画は余り大した映画ではないと思うことにしていますが、それを導き出す要件を全く示していないわけでもないとは感じていますよ。^^
ところで、そちらのコメント欄が封鎖されていますが、どうなさいましたか?