映画評「クロッシング」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年韓国映画 監督キム・テギュン
ネタバレあり
2年ほど前に「約束」という脱北をテーマにした韓国映画を観たが、あちらはロマンスが目的であった為深刻度は本作と比較にならない。
中国国境に近い北朝鮮北部の炭坑町、結核で倒れた妻を救う薬を求め元サッカー選手のヨンス(チャ・インピョ)は11歳の息子ジュニ(シン・ミョンチョル)をも置いて密出国、中国で不法労働で身銭を稼いだ後事情もよく解らないまま韓国を目指すことになる。
その頃母親を失ったジュニはやがて再会した幼馴染の少女ミソン(チュ・ダヨン)と脱北を試みるが失敗、収容所で日々を送るうちミソンは衰弱死、その後父親からの連絡を受けて動き出した支援者の活躍でモンゴルに入る。
キム・テギュン監督としてはちゃらんぽらんな「火山高」「オオカミの誘惑」と対極となる大真面目な社会派で、社会派ぶりを前面に出さずに家族間の思いをベースにして叙情的な作品に仕上げたのは殊勲。
同時に、脱北者の情報に基づいて再現されたらしい北朝鮮の模様は過酷を極め、一握りの人間の為に多数が犠牲を強いられる姿に義憤を禁じられない。ジュニとミソンが収容所で地獄のような日々を過ごしやがて少女が死んでしまう模様には、辛すぎて二度と観ることができないアニメ映画「火垂るの墓」を思い起さずにはいられない。その直前の自転車に乗る場面が詩情溢れるだけに余計胸が締め付けられる。
終盤ジュニが北朝鮮を出た後すぐに中国のモンゴル国境近くにいるのは中国横断を端折りすぎて残念だが、北朝鮮の現状が伺えるという点で相当価値があるし、商業映画としてもなかなかしっかりした出来映えと言うべし。
半年後に全く同じ邦題のアメリカ映画が公開された。後から付ける配給会社には一考を求めたい。
2008年韓国映画 監督キム・テギュン
ネタバレあり
2年ほど前に「約束」という脱北をテーマにした韓国映画を観たが、あちらはロマンスが目的であった為深刻度は本作と比較にならない。
中国国境に近い北朝鮮北部の炭坑町、結核で倒れた妻を救う薬を求め元サッカー選手のヨンス(チャ・インピョ)は11歳の息子ジュニ(シン・ミョンチョル)をも置いて密出国、中国で不法労働で身銭を稼いだ後事情もよく解らないまま韓国を目指すことになる。
その頃母親を失ったジュニはやがて再会した幼馴染の少女ミソン(チュ・ダヨン)と脱北を試みるが失敗、収容所で日々を送るうちミソンは衰弱死、その後父親からの連絡を受けて動き出した支援者の活躍でモンゴルに入る。
キム・テギュン監督としてはちゃらんぽらんな「火山高」「オオカミの誘惑」と対極となる大真面目な社会派で、社会派ぶりを前面に出さずに家族間の思いをベースにして叙情的な作品に仕上げたのは殊勲。
同時に、脱北者の情報に基づいて再現されたらしい北朝鮮の模様は過酷を極め、一握りの人間の為に多数が犠牲を強いられる姿に義憤を禁じられない。ジュニとミソンが収容所で地獄のような日々を過ごしやがて少女が死んでしまう模様には、辛すぎて二度と観ることができないアニメ映画「火垂るの墓」を思い起さずにはいられない。その直前の自転車に乗る場面が詩情溢れるだけに余計胸が締め付けられる。
終盤ジュニが北朝鮮を出た後すぐに中国のモンゴル国境近くにいるのは中国横断を端折りすぎて残念だが、北朝鮮の現状が伺えるという点で相当価値があるし、商業映画としてもなかなかしっかりした出来映えと言うべし。
半年後に全く同じ邦題のアメリカ映画が公開された。後から付ける配給会社には一考を求めたい。
この記事へのコメント
脱北者の多くは、なにがしかの係累を本土に残してくるんですよね。自らの生命も賭けていますが、残してきたものの事を考えると、より複雑で重いものがありますね。
半年ほど前韓国で亡くなったファン・ジョンヨプ氏などは、家族が処刑されることを承知で亡命した筈ですから亡命を実行する前の心境は察するに余りありますね。
無名の脱北者も大同小異でしょう。